第20話「内臓疾患から体が歪むことがあるか?」
体が歪むと内臓が悪くなり、体の歪みを取れば内臓疾患が治ることをお話ししてきたが、逆に内臓が悪くなれば体が歪んだり、背中が痛んだりすることがあるのだろうか?
そして、内臓を治せば痛みや歪みが治ることもあるのだろうか?
狭心症の場合
内臓に異常が起きると、内臓に分布する神経と同じ背骨の分節から出る神経の支配部位に異常があると脳が錯覚してそこの部分の痛みや筋肉の緊張を起こしてくる。この現象は放散痛という名前で呼ばれている。
狭心症の場合によく知られていて、狭心症になると心臓の部位に鈍痛を感じるが、それとは別に心臓の痛みを伝える神経と同じ部分にある、皮膚や筋肉の神経の場所が悪いと脳が勘違いして痛みを感じる。
多くの場合、左脇の下から腕にかけての痛みを感じる。
ただし、誰にでも起こることではなく、必ず起こるものでもない。こういった症状は狭心症の治療で治すことができる。
胃の場合でも放散痛が起こる
胃の場合も左図のように、そういった現象が起こり、左肩甲骨と背骨の間に痛みが走り、筋肉の緊張がみられることがある。
内臓疾患で起こりやすい病気とは
内臓の不調で日常よく経験するのは胃炎、胃潰瘍、便秘といったものだ。
便秘になったり、食べ過ぎからお腹が張ってしまうと、後ろ首が詰まったように凝ってくる。
胃が悪くなると決まって肩甲骨と左の背骨の間が痛くなることが多い。筋肉痛だけでなく、筋肉も痛みから縮むので骨格まで歪んでくる。
重症の場合は整体が効かない
胃が悪くなって重症の場合は整体だけでは背中の痛みは取れない。知覚が鈍麻したようになり、強く押されてもまったく効かなくなる。こんな時に治そうと夢中で押すと骨折などの危険が出てくる。こういう場合は薬を使った方がいい。漢方には解労散(かいろうさん)という薬があり、これは左の肩引から心窩部に痛みが差し込んでくる状態に使う薬であり、胃潰瘍や膵炎を治す。
内臓から骨格が歪み、骨格の歪みから内臓が悪くなる
「左半身のしびれと放散痛」に書いたように、胃炎があたかも脳に異常のあるような症状を起こしてくることもある。つまり、内臓と体の歪みは深い関係がある。
だが、この関係がともすれば忘れられがちになるのは、内臓が悪くなれば必ず骨格が歪んで背中が痛くなるわけでもなく、骨格の歪みが直ちに内臓の病気を起こしてくるわけでもないからだ。
では何故そういった症状が起こらない場合があるのかは謎だが、人によって微妙な骨格の歪み方が違うのかもしれないし、神経の圧迫に対する強さもちがうのかも知れない。
いずれにしても、こういった関係をよく理解して、整体的アプローチだけでは病気を治すことが出来ないということを知っておかねばならない。
- 第20話「内臓疾患から体が歪むことがあるか?」
- 2016年09月01日
「民間治療見聞録」目次
- 第1話 民間治療にのめり込むきっかけになった話(2015.11.01)
- 第2話 体を触ることで内臓疾患が治るか?(2015.12.01)
- 第3話 民間療法は現在の医療より進んでいたのか?(2015.12.15)
- 第4話 民間治療の分類(2016.01.04)
- 第5話 鍼治療(2016.01.15)
- 第6話 灸による治療(2016.02.01)
- 第7話 耳鍼、水晶鍼(2016.02.15)
- 第8話 井穴鍼(せいけつしん)(2016.03.01)
- 第9話 体から血を吸いだし(刺絡 瀉血)、内出血させて治療する(吸角)(2016.03.15)
- 第10話 武道家のマッサージ師(2016.04.01)
- 第11話 レントゲン技師だったマッサージ師の治療(2016.04.15)
- 第12話 ストレッチとリンパマッサージ(2016.05.01)
- 第13話 お寺で発達した整体術(2016.05.15)
- 第14話 カイロプラクティックと環椎(2016.06.01)
- 第15話 オステオパシー(2016.06.15)
- 第16話 柔道整復術(2016.07.01)
- 第17話 気功(2016.07.15)
- 第18話 気功と佛眼(2016.08.01)
- 第19話 催眠療法、野口整体、Oリングテストなど(2016.08.15)
- 第20話 内蔵疾患から背中が歪むことがあるか?(2016.09.01)
- 第21話 骨格は歪んだり治ったりしている(2016.09.15)
- 第22話 医療にするための方法論(2016.10.01)
- 第23話 整体で病気を予防できる(2016.10.15)
- 最終話 最後に(2016.11.01

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