漢方治療
漢方の体質分類
漢方における体質分類は病気を治療する上でとても大切です。
ですがその分類は明確でなく、または中国(中医学)の体質分類と日本の体質分類が異なったりもします。そこで漢方の体質を、日笠院長が一般の人にも分かりやすく解説します。
なお、この新陳代謝からみた体質分類は日笠院長が考えたものであり、体質を現代の科学に基づいて説明しようというものであります。
ホームページに掲載することで、この体質分類が独り歩きしないように日笠院長の説明であることを強調しておきます。
新陳代謝からみた
体質分類
人が食べた物は体を動かすエネルギーとして使われるだけでなく、体を作る筋肉や脂肪にもなります。つまり2種類の使われ方をします。
もしこの使われ方に偏りがあればどうでしょう?
たくさん食べるけれど太らない人もいれば、少し食べただけで太ってしまう人もいます。
私たちは自分たちの周りにそんな人が沢山いるのを経験的に知っています。
【分類1】痩せの大食い体質
(解毒証体質、陰虚体質)

- 暑がり
- 痩せ型、筋肉のしまりがよい
- せっかち、癇癪持ち
- 感染症にかかりやすい
- 基本的体質
食べた物が身につくよりエネルギーに変わるため、体が熱を帯びやすく、暑がりで手足が熱を持ちます。
この状態を五心煩熱(ごしんはんねつ)と漢方ではいいます。痩せてはいるが元気で筋肉のしまりがよいのが特徴です。- 性 格
-
体にエネルギーが溜まるために落ち着きがありません。いつもエネルギーを使おうとするためにセッカチ(関西でいうイラチ)な性格をしています。退屈してエネルギーを使う場所がないと癇癪を爆発させます。怒ることでエネルギーを消費しようとするからです。
癇癪持ちは体質から来ています。この人の怒り方に一定の方程式はありません。ある事で怒ると思えば怒らず、変なことでカンカンに怒ったりします。それは体の中に溜まっているエネルギーを怒ることで発散させたいだけだからです。この体質の人を扱うには退屈にさせないことが大切です。
- 病 気
感染症にかかりやすく、子供の頃は中耳炎、蓄膿、ニキビなど多くの病気をしますが、発育するにしたがって病気にならなくなります。風邪を引いても傷寒(ゾクゾクする寒い風邪)にならずに温病(体が熱をもつ風邪)になりやすい傾向があります。
漢方では陰虚体質とか解毒証体質とか言っています。
体質改善の漢方薬は滋陰降火湯(じいんこうかとう)などで新陳代謝を押さえます。生地黄(しょうじおう)、麦門冬(ばくもんどう)天門冬(てんもんどう)などが効きます。一貫堂医学では年齢によって幼年期は柴胡清肝湯(さいこせいんかんとう)、青年期は荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)成人後は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)で体質改善します。アトピー、鼻アレルギー、喘息などはこのタイプの人の病気です。
【分類2】小食のデブ体質
(気虚体質、気虚水滞体質、陽虚)

- 寒がり
- 水太り
- 無精、面倒臭がり
- 膝の関節を痛めやすい
- 基本的体質
食べる物がすべて身についていくタイプの人です。水を飲んでも太り、水分の代謝も悪いので、水太りになります。後で述べる固太り体質ではなくブヨブヨしていて、その場でジャンプすると体がプチャプチャ揺れます。熱産生が低いので寒がりになります。
- 性 格
体が重いのに体を動かすエネルギーが足らないので、無精な性格になります。細かいことにこだわっていては疲れてしまうからです。掃除をしてもまた汚れてしまうからと掃除をしなかったりして片付けが苦手です。運動も苦手です。
- 病 気
運動嫌いの水太りの体質なので膝の関節が悪くなることが多いのです。
風邪を引くと節々の関節が痛む風邪を引きます。高血圧や糖尿病にもなりやすい傾向があります。黄耆湯(ぼういおうぎとう)などで体質改善をします。防已(ぼうい)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)、黄耆(おうぎ)などが体質改善に役に立ちます。体質改善で一番重要なのは運動ですがなかなか実行できません。
【分類3】大食漢のデブ体質
(臓毒証体質、実証)

- 暑がり
- 元気でよく動く
- 豪快、ワンマン
- 高血圧、心筋梗塞、糖尿病などになりやすい
- 基本的体質
胃腸が元気でよく食べる。吸収もよいタイプです。代謝に偏りは無いのですがエネルギー産生も高く、筋肉の発達もいいということになります。夜明けから夜中まで働いてもまったく疲れを感じません。
古来の英雄はこのタイプの人です。よく動くしエネルギー生産も高いので、暑がりになります。真冬でも裸足にシャツ1枚というタイプです。- 性 格
豪快な性格をしています。あまり元気すぎて弱い体質の人の気持ちが理解出来ず、また何でも自分で出来てしまうので、ワンマンな性格になります。体力が余っているので異性への関心も高い性格になります。女性でもこの体質の人がいます。
- 病 気
食べるのが好きなので、高血圧、糖尿病、痛風になりやすく、心筋梗塞、脳梗塞を患う可能性が高い体質です。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)大柴胡湯(だいさいことう)で体質改善します。大黄、枳実(きじつ)などで体に溜まった毒素を体外に排出して体質を改善します。
【分類4】痩せの小食体質
(虚証体質)

- 寒がり
- 骨格が歪みやすい
- 神経質
- 消化器系疾患にかかりやすい
- 基本的体質
代謝にかたよりはないのですが、生まれつき消化機能が弱いので、エネルギー産生が低く寒がりになります。また筋肉の発達が悪いため骨格が歪みやすく、肩こりや腰痛を訴えやすい体質です。
- 性 格
ほんのわずかなことで体調を壊すのでとても神経質になります。マフラーをしてなかったから風邪を引いたとか、ある店のてんぷらを食べると胃を悪くするといった具合です。神経質で物事にこだわりのある性格が作られていきます。
- 病 気
胃炎、慢性下痢症、過敏性大腸など消化器系疾患を中心に病気が起こってきます。筋肉の発達が悪いので、重い物を持つと頭痛がしたり、肩が凝ったりします。治療は胃腸を丈夫にすることです。六君子湯(りっくんしとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などで体質改善します。基本薬は人参、茯苓(ぶくりょう)などです。
中医学における
体質分類
中医学では陰と陽がバランスを取って存在していることが大切だと考えてきました。陰は物質で陽は機能だといいます。
陰、つまり物質が減るのを陰虚、機能が落ちるのを陽虚(もしくは気虚)、両方減るのを気陰両虚と言います。
中医学の本にはこういう概念的なことしか書いていませんが、これを体の新陳代謝に当てはめて説明したのが上の説明です。この体質分類は日笠院長が考えたものであり、体質を現代の科学に基づいて説明しようというものであります。
ホームページに掲載することで、この体質分類が独り歩きしないように日笠院長の説明であることを強調しておきます。
【分類1】痩せの大食い体質
陰虚(陰が減った状態)
陰(肉体)が少なくて、陽(エネルギー)が高まった体質。
【分類2】小食のデブ体質
陽虚(陽が減った状態)
陰(肉体)が増えて陽(エネルギー)が落ちている体質。
【分類3】大食漢のデブ体質
正常
これは陰と陽のバランスが取れているために中医学では体質としての定義はありません。
【分類4】痩せの大食い体質
気陰両虚(気も陰も減った状態)
陰虚(肉体)も陽虚(エネルギー)も少ない体質。
日本漢方ではこういった理論的説明がされておりませんが、気虚とか陰虚という言葉を使います。陰虚は、陰証でありなおかつ虚証であるという意味に使われており、中医学とは違う体質を指すようです。
こういう議論をいくらしても人の体質を正確に規定することはできませんが、体質によって起こる病気が違うことは私の説明で理解できると思います。
(漢方における体質についての関連ページ)
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