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香杏舎ノート

第112回「半身のしびれと放散痛」

体の右半身とか左半身にしびれや違和感があれば、誰でも脳の病気を疑う。もし左半身に症状があれば、右脳に異常があり、右なら左脳に異常がある。脳の神経は交叉しているから反対側に症状が出る。しびれや違和感の症状に加え、ロレツが回らない、手や足が動かしにくいなどの症状が加われば、まず脳梗塞の軽い症状と考えて間違いない。さらに脳腫瘍や脳出血などの初期症状かもしれない。だがCTスキャンで脳の状態を調べても何の異常もみられず症状だけが続くということもある。

5年ばかり前、ひとりの患者さんが診察を受けにやってきた。その人は中年の女性で居酒屋を経営している。左半身のしびれ、特に左腕のしびれと痛みがひどく、夜中に目が覚めるほどだという。脳外科や整形外科で詳しく検査したが原因は分からない。症状が軽い日もあれば、悪い日もある。脳梗塞ならば症状が良くなったり悪くなったりを短い周期で繰り返すことは考えにくい。おかしなことに痛みなどの感覚を伝える神経の異常はあるが、運動神経の異常、つまり握力の低下といった症状は見られない。どうやら別の病気が脳梗塞を思わせるような症状を出しているようだと思った。

訳の分からない症状

私の医院にはこんな訳の分からない症状を訴える患者さんがよく訪れる。そんなときはまず患者さんの話をよく聞くことにしている。この患者さんは居酒屋を経営しているから夜が遅い。深夜に仕事が終わってから食事をする。酒が好きだから食べて飲んで、すぐに寝てしまう。すると夜中に痛んだり、しびれたりする。不思議なことに休日にはそういう症状は起こらない。休日の夕食は夜8時頃だが、食事をして何時間か経ってから寝る。どうも食事との関連がありそうだと思った。そこで胃の不快感はあるのかと訊ねたが、「ない」という。

診察すると、左半身の筋肉が硬くなっている。特に左肩や首の凝りがひどい。さらに詳しく診ると、みぞおちの所に痛みがある。さらに左の背中にも圧痛点(押さえると痛い場所)がある。診察から判断して胃からの放散痛でこんな症状が出ているのではないかと思った。

放散痛

放散痛という言葉を聞いたことがあるだろうか。内臓の一部に異常があると、それと隣接する神経の支配する領域に痛みが起こる。たとえば狭心症という心臓の病気が起こったとき、胸の痛みとは別に左脇から左腕の痛みがおこることがある。これは痛みを伝える神経が誤って心臓の痛みのみならず隣接の神経が支配する領域、つまり左腕にも病変があるとの情報を伝えてしまうことで起こる。簡単に言えば、痛みという情報が伝えられるときに情報が錯綜して悪い場所だけでなく、正常な部位にも痛みを感じてしまう現象だ。
放散痛は必ず起こるわけではない。狭心症の場合でも大半の人は胸の(つまり心臓の部位)痛みだけを感じる。何割かの人だけが左肩から左腕の痛みを感じる。そしてまれだが喉の痛みとして放散痛がおこることもある。放散痛は起こったり起こらなかったりするし、起こる場所も必ずしも一定ではないので臨床では重要視されていない。

胃の放散痛

胃でも放散痛が起こるのだろうか。実は胃が悪くなったとき、背中に圧痛点が出現する。漢方の本にも放散痛の記載があって、胃が悪いときに左の肩甲骨の内側が痛むことが知られている。
この患者さんの場合、西洋医学でいう放散痛でも漢方でいう放散痛の場所とも異なるが、多分、痛みやしびれは胃の放散痛で起こっているのだろうと思った。そこで消化を助け、消化管の運動を良くする漢方薬を調合するとともに凝りを整体や鍼灸で治療したところ、症状はすっかりよくなった。
胃からの放散痛が原因で半身の違和感と痛みを訴える患者さんは意外に多い。脳梗塞や脳腫瘍でないと診断されたら胃の放散痛が原因ではないかと考える必要がある。患者さんの特徴をまとめておこう。

  1. 左半身に痛みやしびれがあるが(まれに右半身のこともある)、運動麻痺や握力低下はない。
  2. 胃が原因だが、胃が悪いという自覚症状はあまりない。
  3. 胃が弱い人よりも良く食べる人に多い。
  4. 症状が良かったり悪かったりする。

私の感想

放散痛が長く続くと、放散痛を感じる場所にも異変がおこる。痛みのための防御反応として筋肉の緊張が続き、筋肉が硬くなる。放散痛は内臓の病気で出現し、様々な体の部位の筋肉に変化が出る。私は鍼灸をするから患者さんの筋肉の状態をよく観察する。だから西洋医学の先生より放散痛の問題点を強く感じるのだろうと思う。 ある時、とても興味深い症例に出くわした。太極拳の師範をしている人を治療していた時のことだ。その人は突然背中が丸くなって、伸びなくなってしまった。患者さんは元々体は柔らかくて、一日も柔軟体操を欠かしたことのない人だけに、なぜ真っ直ぐ伸びていた背中が急に丸くなったのか不思議だった。多分、放散痛による筋肉の緊張が原因ではないかと想像している。

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