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香杏舎ノート

第337回「鍼灸のツボを知る方法」

20年ほど前、宮崎の医師会から講演を依頼された。講演後、私の講演を聞きに来ていた病院の院長が指先のツボ(井穴セイケツ)だけで腰痛や肩こりだけでなく、リウマチや五十肩なども治す鍼灸師が自分の病院にいるので、明日でも見学に来ませんかと誘ってくれた。

病院に行くと、60歳過ぎの神田明先生が白衣を着て座っている。その前に1人の患者さんが丸椅子に座って治療を受けている。治療中の患者さんの後ろに10人ばかりの患者さんが縦一列に丸椅子に座って順番を待っている。一番前の患者さんの治療が終わると、全員が立ち上がって一席ずつ前へ進む。椅子に座った患者さんの列の後に、さらに10人ばかりの患者さんが立って順番を待っていた。

1人の治療時間はわずか1分足らずで、どんどん行列が進んでいく。患者さんは手の指とか足の指(井穴)に鍼をしてもらう。鍼はバネで鍼が飛び出す特殊な物【フランケ鍼】で、鍼を打つたびにパチンパチンと爪を切るような音がする。1日に350人から400人もの人を治療する。

フランケ鍼フランケ鍼:
鍼の後ろを引っぱる。真ん中の引き金を引くとバネの力で鍼が飛び出す。

上から3番目は鍼を分解したところ。オートクレーブで何度も滅菌すると、バネのロウ付けが外れてしまうので修理に出さなければならなくなる。

私は井穴以外のツボにも効果があるのかと思って、その鍼灸師に「背中のツボに打っても効果があるのですか?」と聞いた。すると院長が横から割って入って「ダメ、ダメ、先生ダメです」とさえぎった。なぜ院長がさえぎったのかは分からなかった。

私がその場を離れようとすると、鍼灸師は誰にも気づかれないように小さな紙切れを差し出した。私は黙ってその紙切れを受け取り、帰りの飛行機の中で紙を見た。苗字と電話番号が書かれていた。家に帰ると早速電話した。聞いてみると、「他のツボにうっても、もちろん効果がある」という。そこで「神戸まできてください」とお願いしたところ快諾を得た。 数ヵ月後、神田先生のためにホテルを予約し、料亭で接待した。

先生は「背中にうつのも大変効果がある。だが院長は井穴のことしか興味がなく、この井穴鍼を自分の手柄のように自慢するのだ」と胸の内を語った。話題は背中のどこに鍼を打つかに移った。この質問をするために数ヶ月も待たされていた私は早く知りたくてしかたなかった。先生はツボの話を始めたが、口で説明されてもわかりづらい。面倒になった私は上半身裸になって背中のツボを押してもらいながら説明を聞いた。聞きながら仲居さんが座敷に入ってこないことを祈った。

マジックで下着に経絡を描く

マジックで下着に経絡を描く翌日、患者さんを前にした実技はすばらしいものだった。
のべ数十万人にも鍼をしてきたので、理論が精緻にできており、即効性があった。

たとえば左の小指の井穴に鍼をすれば、体のどの部位の痛みが取れるかが、きっちり決まっている。その場所は小指の井穴から線を引いたようにつらなっており、足関節で親指側に回り込み、膝関節で小指側にもどるというふうに体の各部位で方向を変えながら走っている。各指の井穴ごとにそれらの線(経絡)が交差して走っているから、説明を聞いても容易に覚えられない。

そこで長袖の下着と股引きを買ってきた。そしてそれを着て、経絡の走行を先生にマジックで書いてもらった。これを教科書として鍼をうつ場所を覚えていった。

経路とツボを表した人形

これ以後、半年から一年に一度の頻度で来てもらい、足掛け七年にわたって教えてもらえた。
おかげで井穴や背中のツボには大変詳しくなった。

この治療体系のなかで興味深かったことは、経絡の走行が従来いわれている経絡と全く違ったことだ。経絡といえば、ツボと経絡が描かれた人形とは全く違う場所に経絡が走っていたのだ。

井穴は左足に12個、右足にも12個ある。

経絡は足首で45度方向を変え、さらに膝で元の経絡に戻る。つまり膝の真ん中が痛ければそれに対応する井穴に鍼を打てばいい。
これには規則性があり、それさえ学べば誰でも効果を出すことができる。

先生にこの鍼をどこで学んだのかと聞いてみた。神田明先生は戦後に中国大陸を放浪している時、女性の治療師が小さな石弓のような道具を使って治療しているのに出会った。引き金を引くと矢の部分にあたる鍼が飛び出して皮膚に刺激を与える仕組みになっている。興味を持った先生はそこに居候しながら鍼を覚えた。

数ヶ月後、治療を教えてくれたことに感謝して立ち去ろうとすると、女主人が別れの宴を開いてくれた。メイン料理は猿の生き造りだった。猿は座った格好で台に固定され、額に金属のリングが被せられている。リングから出た釘が頭を固定している。固定されている額から上の頭蓋骨は取り除かれ脳膜を通して脳が見える。猿は麻酔でもかけられているのだろう、うつろな目をして身動きしない。この猿の脳ミソをスプーンですくって食べるのだ。猿は自分の身を哀れんで涙を流すという。先生は吐き気をもよおしてその場から立ち去った。

1984年の映画、インディジョーンズでサルの脳みそを食べるシーンが出てくる。これを嘘だと思っている人もいるが本当の話だ。

これには鍼麻酔の技術が応用されている。鍼麻酔をすると、脳手術を受けている患者が医者と話をしながら手術をうけることができる。ニュースとして見たことがあるはずだ。この鍼の技術を公開しないことを中国共産党が決めた。だから鍼麻酔の話題は消えた。鍼麻酔による手術を見学させていた中国共産党は1980年代に突然その見学を中止し、それ以降、鍼麻酔に関する情報は地上から消えてしまった。

井穴鍼を使わない理由

井穴鍼は基本的には刺絡(瀉血)治療であり、普通に使う鍼では効果が出にくい。

つまり皮膚を切開して出血させる必要がある。爪角に近いので炎症を起こしたことはないが起こす危険性がある。採血の時に貼るガーゼ付きの絆創膏を刺絡場所に貼らなければならないことだ。

何故、病院長は背中に鍼を打つことを禁止したのか?

理由は2つある。1つ目は神田鍼の治療は足の膝までと手の肘までに関しては完成したものだったが、背中など体幹に関しては完成したものではなかったこと。

さらに体幹に関して法律的問題があったのではないか。
前立腺の患者さんには蟻の戸渡り(会陰のこと)にフランケ鍼を打つ方法を神田先生に教えてもらったが、服を脱がして鍼を打つのは、明らかに過激すぎる行為だった。
神田先生は鍼灸師の免状をもっていなかったので井穴鍼を止めて井穴にケシの実のような小さな粒を絆創膏で張ってそれを刺激する治療に変えて開業した。

補足:井穴鍼に関しては、井穴に18ゲージの注射針を刺してポタポタ血が落ちるのが止まるまで刺絡をすれば効果があるという話を聞いたが、確認はできていない。
なおこのブログは以前に書いたものを詳しく編集しなおしたものです。

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