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香杏舎ノート

第352回「夜の散歩という絵」

上森画伯の夜の散歩という絵。

上森画伯の夜の散歩という絵。

私はフランスのロアール地方に住む上森画伯に夜の絵を描いて欲しいと頼んだ。

私が「暮れなずむ時、まだ色彩を残しながら風景が闇に包まれていく。そんな情景を描いて欲しい」と言うと、彼は「日笠さんはロマンチストですね」と言って笑った。

じつは上森画伯が夜の絵を描かなかったのには理由があった。同じロアールに住む日本人画家が夜の絵ばかりを描いていたので、遠慮して描かなかったのだ。
しかし、この絵は私が依頼したもので、個展で出すことがなく、日本に持って行って帰るので描いてくれたのだ。

この絵はクリニックに飾ってあるが、それをオステオパシーの施術をする整体師の名刺にしようと考えた。
オステオパシーという治療法を是非とも知って欲しいからだ。

私は上森画伯の印象派的タッチにあこがれを持っていて5点も彼の絵を持っている。

銀座に飾っている絵は額を入れると横90センチ縦80センチもある。こういう絵は少なくとも2~3メートル離れてみないと全体を見ることが出来ない。

杏林伝説

神戸に飾ってある絵

神戸に飾ってある絵は50年ほど前の神戸の北野を描いた姉の絵だ。展覧会に出して賞をもらったと聞いている。

縁は仮縁と質素なものだが、私はとても気に入っている。大きな絵で、縦118センチ横90センチもある。これだけ大きいと3~4メートル離れてみる必要があるが、十分な距離が保たれている。

絵との出会い

私が上森画伯と出会った時、一番欲しかった絵は、案内状に描かれていた絵だった。【プラムの木】という題名がついていた。絵には画家の絵に込めた思いの名前がついている。例えばゴッフォの【夜のカフェテラス】といった名前だ。この絵からは早春の冷たい空気と暖かい春の日差しを感じることができた。三越の個展で初めて会った上森画伯にこの絵の魅力について話すことは出来ず、2回目に行ったときは、【杏林伝説】の絵を描いて欲しいと頼むのが精いっぱいだった。

上森画伯は帰国時にロアールの赤ワインをくれたことがあった。酒がほとんど飲めない私だが、とても美味しくて1本飲み切ってしまった。それから、ロアール地方の食事に興味を持った。ロアールにはロアゾーという有名なシェフがいてミシュランの3つ星を取っていた。ところが3つ星を維持するストレスに耐えられずロアゾーは自殺してしまう。彼の料理は水の料理と呼ばれ、神戸北野ホテルの山口シェフが料理を学んで帰国していた。その料理はカロリーを気にすることなく食べることが出来るあっさりとした料理だった。
ロアゾーが自殺した後、彼の妻が味を覚えていてロアゾーの亡き後も3つ星を維持し続けたというのは有名な話だ。

名刺従業員が私のために夜の散歩という名刺を作ってくれた。
じつは私は裏面に英語表記の名刺が必要なため、写真を載せることができない。

40年ほど前、内モンゴルを旅した時の経験からだ。
内モンゴルのパオに泊まっていると、ドイツからの観光客のグループと知り合った。リーダーの男が高齢の女性に(メバチコ)麦粒腫があるので見て欲しいという。私は持っていたポケットナイフを火で焙り、切開しようと考えたが、暗いパオの中では危険と思い、朝まで待とうと考えた。すると夜中に麦粒腫が自壊して膿が出たおかげで、切開せずにすんだ。リーダーが名刺をくれといったので渡したが、私は迂闊にも裏面に英語表記のHIGASA M.D.,Ph.D.を入れてなかった。つまり私はこういった絵の入った名刺を持つことはできない。

せめて従業員には持ってもらって、オステオパシーの施術師、そして鍼灸師の資格を広めてもらいたいと思っている。

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