第47回「ガス腹」
食べ過ぎてもいないのに、スカートやズボンのお腹まわりが窮屈に感じる。 太ったのかなと体重計に乗ってみても体重は変わらない。よく見るとお腹がはっている。 苦しいからベルトをを弛めたり、スカートのホックをはずしたりする。そんな経験をしたこたがあるかもしれない。
こんなときは胃や腸にガスがたまっている。便秘のときや食べ過ぎのときもお腹は張るが、それとは異なる。便秘のときは詰まったような感じがするが、お腹は張れない。食べ過ぎのときは食後1~2時間は張った感じがするが、しばらくすると無くなる。
ガスのときはお腹全体がポーンと飛び出した感じで簡単には治らない。こういう状態を漢方では気滞とよぶ。たまったガスはしばらくするとゲップやオナラとして排泄される。そんな時、急にゲップやオナラが多くなる。ガスが出てしまうとお腹はすっきりしてへこんでしまう。
お腹にガスがたまるのは?
どうして急にお腹にガスがたまるのだろう。またガスはどこからくるのだろう。一番多いのは空気を飲みこむためだ。特に食事の時、空気が食べ物と一緒に飲みこまれる。 早食いの人やよく噛まない人は、空気の取りこまれる量が多い。 わざと空気を飲みこんでゲップを出す癖のある人がいる。これ呑気症という。ともかく口から入る空気が消 化管に溜まるガスの中で一番多い。 ガスは腸でも作られる。おならの成分のメタンガスなどは腸の細菌によって作られたものだ。よく芋や豆を食ペ過ぎるとオナラが多くなるというが、それはお腹の中で異常発酵がおこるからだ。暴飲暴食でも異常発酵がおこりガスの発生が高まる。
また炭酸飲料であるビール、コーラなどを飲めば、これは炭酸ガスを含んでいるので、当然ガスがたまる。こういったことがガスの発生の原因となっている。
オナラは肺からも出る
お腹にたまったガスはゲップやオナラとしてだけ出されるわけではない。肺からも出される。腸はたまったガスを吸収して血液で肺まで運びそこから排泄する。だから腸の中のメタンガス、炭酸ガスなどが呼気にまじって口からでる。 急にお腹が張る原因は、勝の動きが悪くなってガスが吸収されなくなった時だ。どんな場合かというとお腹が冷えたとき。冷えて腸の動きが悪くなるとガスの吸収も悪くなって腹が張る。疲れから背中が凝ってきたときもガスがたまる。前かがみの姿勢になって 腸への血流が悪くなるからだ。
何を笑うか隠居の屁
年寄りは若い人にくらべてオナラが多い。「おじいちゃん、そんなにオナラしておかしいよ」と笑れても隠居のおじいさんにとってにとってオナラは当たり前。若い人に比べ腸の働きもガスの吸収も悪いからオナラという形でガスを放出する。夜、布団に入って体が温もり腸の働きがよくなるとブーとオナラがでる。布団のオナラが多いのは老化の始まりと考えたらよい。
脾湾曲症候群
お腹にガスがたまるとどんな害があるのだろうか。オナラやゲップをすることは悪いことなのだろうか。大腸にガスがたまるとガスは大腸の脾湾曲部と呼ばれる場所に集まる。ここは人が起立した時に大腸の最上部になるところで、気体のガスは大腸の一番高いこの場所に集まる。ちょうど左の脇腹付近になるのだが、そこにガスがたまると横隔膜を押し上げて胸の痛みをおこしてくる。
脾湾曲部だけでなくお腹全体にガスがたまるとどんなことになるのだろうか。それについては未だわからないことが多い。だがガスがたまると、内臓は常にガスでふくらんだ消化管によって圧迫された状態が続く。心臓、腎臓、すい臓などは圧迫による血流不足から癌の発生、臓器不全などをおこしてくる可能性がある。
話は少し脱線するが、動物にも気滞がある。牛の胃にガスがたまると外から見てもわかるほどお腹が異常にふくれあがり、急いでガスを抜いてやらないと死んでしまう。牛にとってガスはそれほど危険なものだ。 人間の場合、ガスはゲップやオナラとして常に出されるから危険は少ないが、それでも慢性的にガスがたまる状態はとても危険だと考えたほうがよい。漢方では理気剤といってガスを排泄する薬がある。こういった薬を飲んだり、運動や養生をしてガス がたまりにくい体質を作っていく必要がある。 オナラやゲップといった、つまらないように思えることでも1つ1つ治していくことで体調もよくなるし大きな病気の予防になる。ガスが多いのはやはり体に問題があるからだ。
- 第47回「ガス腹」
- 1999年10月23日
こちらの記事もあわせてどうぞ
香杏舎ノート の記事一覧へ
患者さまお一人お一人にゆっくり向き合えるように、「完全予約制」で診察を行っております。
診察をご希望の方はお電話でご予約ください。
- 読み物 -
- ●2025.01.10
- 115.強力な下剤
- ●2025.01.01
- 第323回「丸薬作りの20年」
- ●2024.12.25
- 第322回「世界大恐慌への足音」
- ●2024.12.20
- 第321回「コーヒーの文化」
- ●2024.12.10
- 第320回「性交痛で悩む患者さんへ」
※ページを更新する度に表示記事が変わります。