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香杏舎ノート

第339回「山本巌漢方を検証する」

私は全国にいる山本巌先生の弟子の一人だ。
30年近く前の話だが、私は山本医院を訪ねた。

陰陽虚実が嫌いで、そんなものを理解しなければならないなら、漢方をやめようと心の中で決心していた。山本先生にこの話をすると、「自分の経験した事だけを信じなさい」と教えてくれて、その理由を詳しく説明しだした。
すると診察は止まり、診察を待つ患者さんのカルテが積みあがっていった。受付の日向野さんが何度も診察をするように催促にきた。

当時、私の母は変形性膝関節症で山本医院を受診していた。しかし、病状はよくならず、両足の足関節は炎症のため90度で固定され、両膝関節はともに人工関節になっていた。

山本先生は防己黄耆湯加減を処方していた。しかし、あまりに炎症がひどいので、抗炎症作用の強い漢防已を単独で処方した。どんな煎じ薬でも飲んでいた母だったが、漢防已だけの煎じ薬は吐き気が止まらず飲むことが出来なかった。後で分かったことだが、変形性関節症の診断は誤診で悪性リウマチだった。(山本先生の誤診ではない。西洋医の大学教授の誤診だった。)

もし当時、私が漢防已を出すなら丸薬にしていただろう。丸薬の表面をセラックでコーティングすれば味も臭いもなくなる。漢防已の丸薬ならすぐに効果判定ができたはずだが、当時の私は試験的に少量の丸薬を作っていたに過ぎなかった。

山本先生のお弟子さんは全国にいた

山本巌先生のお弟子さんは薬剤師や鍼灸師などが全国にいて、お医者さんも100人以上いた。坂東先生は徳島から飛行機で毎週1回、福富先生は九州の柳川から往復9時間をかけて毎週見学に来ていた。松原圭沙彦先生はまだ山本内科では働いていなかった。弟子の中で自費診療をしていたのは私一人だけだった。

山本先生は漢方のエキスが発売されるまで煎じ薬で治療していた。しかし、エキスが発売された後は軽症の患者さんにはエキスを出し、重症の患者さんには息子さんの薬剤師の経営する薬局を通して自費の煎じ薬を出していた。息子さんの一人は歯科医で同じビルの別のフロアで開業し、先生は鍼灸院も経営していた。

山本先生は情報処理をすることができなかった

山本先生に関する本は数多く出版されている。これらの本は例外なく山本先生の書いた東医雑録を元にしており、様々な生薬の解説が書かれている。しかし、その生薬をすべて山本先生が検証したとは思えない。

先生は生薬の薬能に関して天才的な感覚を持っていて、生薬の薬能を見抜く力があったと、武庫川女子大学の薬学部教授だった桑野先生は言っていたが、無論、実際に検証出来ていたわけではない。過去の書物からこんな作用があるだろうと信じていた薬効も多かったに違いない。

※桑野重昭先生は1997年に山本先生と共著書【漢方処方の基礎と臨床:廣川書店】を出版している。

西洋医は患者さんの体質を考えて薬を投与することはない

漢方の診断には陰虚体質、気虚体質という分類が必要で、陰陽虚実が分からなければ漢方の古典を読むことができない。しかし、坂東先生や福富先生の本を読むと、実際に治療した症例が書いていないので、生薬が本当に効いたか分からない。つまり、自分が本当に治した病気なのかが判定できないのだ。

Windows95は1995年に発売された

1995年当時、保険診療するためのレセコン(レセプト用コンピューター)は発売されていたが、保険漢方薬の計算をするもので、保険薬の副作用や効果しか調べられなかった。山本巌先生は2001年に亡くなられたので、パソコンで情報を処理できなかったのは仕方がない。何故ならWindows95は1995年に発売されたからだ。

私のクリニックではエクセルをつかった情報処理をしている

私のところで働くスタッフは電子カルテとは別にエクセルでカルテを作っていて、それを用いればどんな薬をどのくらい投与したかが分かる。
は独活寄生湯の略称。他の処方名は独自のもの)

COは山本先生が使っていた通導散加減を表すもので、通導散加桃仁、牡丹皮去大黄、芒硝。処方名はもともと無いのだから自分で新しい名前をつけるしかない。血分は分消湯血鼓加減の略。

  • COは通導散加桃仁、牡丹皮去大黄、芒硝
  • 独は独活寄生丸
  • 天狗は八味地黄丸
  • 紫根は紫根丸
  • SUNは山査子丸
  • 利膈は利膈湯丸

データの解析

過去1か月に来院した32人の患者さんを分析した。
男女比は16人ずつで、病気により投与量も違う。平均投与量は1日14gで、関節の激痛がない限り独活寄生丸はおおよそ15から17gが平均投与量だと分かった。病気によって薬の量は大幅に変わる。骨折の治癒を促進するには大量の独活寄生丸がいる。軽い腰椎ヘルニアは少量ですむ。

標準治療量を知ることはとても大切だ。私は様々な丸薬の必要量を決めていた。

生薬の力価は信じられるか?

いろいろな処方を見ていると、同じ生薬が何度も登場することに気がつくはずだ。生姜、大棗、甘草、桂枝、白朮、芍薬などだ。少し古いデータだが、2009年の日漢協のデータを見ると、日本で1年間に使われた生薬数は249種類。使用された上位71種類で95%の使用量を占める。残りの178種類の生薬は極めて稀にしか使われない。つまり、ほとんどの処方はよく使われる生薬で出来ている。稀にしか使われない生薬の薬効は強くないから、この71種類の生薬の薬効を知れば漢方処方を使いこなせるようになるはずだ。71種類のどの生薬が良く使われるかを解析してみよう。

日本には輸入されない日本古来の生薬もある。和当帰などだ。また異種同名、同名異種、一種多名称の生薬もある。しかしあまり詳しくなりすぎると植物学になってしまうので、ここは単純に日常使われている71種の植物がすべて輸入されていると考えよう。71種の中で頻回に使われるのは60種類ほどだ。甘草は醤油の味付けやタバコにも使われることがあるから食品に分類し、生姜、ナツメ(大棗)などは食品と考えてもいい。

生薬の薬理活性は正確に測られている

これらの生薬の活性は極めて正確に測られている。例えば麻黄はエフェドリンと薬理活性はないが、プソイド・エフェドリンの2種が測定されている。60種類ほどの生薬はすべて2つの基準物資が測れているので、力価がしっかりしていて安心して使える。

私は基準物質が測られた生薬を2つか3つ組み合わせて、それを連立方程式のように組み合わせて、分析しながら今まで知られていない薬効を見つけ出してきた。こういった努力の結果、おおよそ40種類の丸薬でほとんどの病気に対応でしている。

物事に取り組む時、思想はその時代を過ごした人たち全員に影響がでる。
山本巌先生の初期の治療は陰陽虚実の入った処方だった。以前の本にも書いたが、漢方医学のような整理されていない膨大な知識、不確実な情報が混然と交じり合い、未開の原生林が果てしなく続いていているような状況では記憶と理解を頼りに原生林を歩くことはできない。そういう場合は整理・分類から理解を進めていく必要がある。我々がやらねばならないのは西洋医学の常識に則った生薬の分類と整理であり、それを繰り返すことでしか理解は進まない。つまり、薬理活性のはっきりした60種類の生薬を使うことだ。

参考:
葛根湯の投与量 湯本求真先生の書かれた皇漢医学には葛根湯の1日投与量は41.5gと書いてある。しかし、日本薬局方では17gになっている。基準物質が正確に測れば決まった量に落ちくつくことになる。

患者さんは治験に協力してくれるボランティアではない

蘇木丸山本先生は蘇木が癌の痛みを抑えると以前から言っていた。蘇木単独では癌の痛みが消えるとは思えない。蘇木の不思議な効果についてはいろいろ調べているが、分からないことが多い。ただ、通導散にもともと入っている蘇木をかなり大量に使うと痛みが消えやすい。

以前、抗がん剤の副作用で衣服がすれるだけで痛みを感じる人がいたが、蘇木を加えることで痛みが消失した。蘇木は癌などを抑える駆瘀血としてはマイナーなものだ。蘇木その物を丸薬にして患者さんに単独で投与しても鎮痛効果はほとんどなかった。通導散の中では蘇木の痛みを止める作用が分かったから、他の患者さんにも協力を依頼する。そしてそれも本当だと分かったら、さらに別の患者さんにも協力を依頼して蘇木の効果を確かめていく。

私の症例には患者識別用にカルテ番号が必ずついているが、それが実際に投与した証拠だ。この蘇木の効果を調べるための患者さんの症例を集めるのに30年かかった。その理由は私のクリニックは癌だけの患者を診ているのではなく、痔、肝硬変など多種多様の患者さんが訪れるからだ。

山本先生の15分テスト

山本先生は初診の患者さんに薬を投与して効くかどうかテストしていた。効く場合は早くて15分、遅くても45分ほどで効果が現れる。残念ながら保険のエキス漢方では薄すぎて効果が出ない。

いずれにせよ実際にテストを経験した人にしか信じてもらえない。写真では時間経過は証明できないが、15分テストの写真をお見せしよう。

76歳の女性

麻黄石膏を中心とする丸薬を投与する前と15分後の写真

2年前から坐骨神経痛がおこり、病院で検査すると腰部脊柱管狭窄症、すべり症、そして足関節炎があった。腰から右尻とふくらはぎにかけてしびれと痛みがある。足を見るとかなりの外反母趾があり、浮腫がひどい。

そこで浮腫を取る麻黄石膏丸(麻黄と石膏で出来た丸薬。粉末でも利用できる)を6ℊ投与して15分テストをすると、服用後15分でかなり浮腫が良くなっているのが分かる。

15分テスト

荷物を両手に持ったままコンクリートの地面に顔をぶつけた。この患者さんは、打撲の薬【艾葉(がいよう)、地黄、阿膠(あきょう)、蒲黄(ほおう)など】を入れて作った丸薬を飲んでから1時間後の写真だ。

額の腫れ、目の下の出血斑が薄くなっていることがわかる。

山本先生は15分テストで腕を上げた

一般の漢方医が2週間薬を出し、2週間後に効果を判定しているのを15分で答えを出していたのだから、一般の漢方医より14倍速く上達することができた。

15分テストは金創医(きんそうい)の治療をヒントに?

山本先生はどうして15分テストを思いついたのだろう。15分テストといっても30分、最大45分まで伸ばして薬が効くかどうかテストする。
西洋薬の場合を考えてみよう。薬を飲んで胃で消化され、血液に入るまで最低でも1時間はかかるだろう。それから徐々に血液濃度が上がる。

戦国時代、刀傷(カタナキズ)を治す医者を金創医といった。刀傷を受けると縫合しても、している間に出血死してしまう。そこで芎帰膠艾湯といった止血薬を紅茶のティーパックのようにして飲ましながら傷の縫合をしていた。

そういったことから15分テストを山本先生は思いついたのではないか。止血には止血効果のある浦黄を加える。浦黄は因幡(イナバ)の白兎がサメにかまれて血まみれになったときに浦黄を使ったという伝説が鳥取県出雲にはあり、因幡の白兎と大黒天の石像がある。

15分テストは関係ないが、歯槽膿漏といった慢性疾患でも漢方薬がよく効く

歯槽膿漏症例

甘露飲で炎症を抑えてから歯のぐらつきを威霊仙や独活で治す。

慢性疾患では15分テストが使えないのは言うまでもないが、歯槽膿漏といった治療では経過を診ながら薬が効くことを証明できる。歯槽膿漏は西洋医学では治らないが、歯のぐらつきまで治すことができる。

治療は2つに分かれる。まずは歯槽膿漏を起こす菌を殺すことだ。歯槽膿漏の炎症は不思議な炎症で、出血や膿が出るのに痛みを伴わない。これには地黄、枇杷葉、麦門冬などの入った甘露飲(かんろいん)が良く効く。つまり第1段階では甘露飲で歯槽膿漏の炎症を抑える。第2段階では化骨を進める独活寄生丸や威霊仙を投与する。

漢方治療はデータ整理と病気の捉え方が大切なのが十分に理解できたと思う。私の処方はホームページにも載っていて検索できる。詳しく書いていない場合もあるが、丸薬でなくとも煎じ薬で真似ができるはずだ。

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