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香杏舎ノート

第113回「アレルギー性咽頭炎とエヘン虫」

最近、喉にエヘン虫が住みついている人が増えている。「喉がハシ痒い」とか「咳払いが多い」とか、「痰が切れない」とか言って診察を受けにくる。その昔、咳払いをするのは親父と相場が決まっていた。雷親父は咳払いをして子供たちを威嚇していた。威嚇に咳払いを使えるほど咳払いが多かった。何故、咳払いが多いのか。それは世の親父たちが日本酒をよく飲んでいたからだ。アルコールで喉の奥が浮腫み、それが気持ちわるいものだから咳払いをしていたのだ。

女の人でも咳払いをする人が急に増えてきた。観察していると多くの人が咳払いをするのが面白い。酒を飲まない人でも咳払いをする。何故なのだろう。耳鼻科で喉の奥をみてもらっても軽い炎症があるだけで、さほどの異常はない。

鼻アレルギーと咳払い

ずいぶん以前のことだが、興味深い症状の患者さんがやって来た。鼻アレルギーの患者さんなのだが、咳払いも多くて困っているという。私は耳鼻科ではないので、喉の奥の奥までは見ることができない。だが口を開けて真っ直ぐに見える範囲に異常はない。その患者さんは鼻が詰まって口で息をしている。その姿を眺めていて面白いことに気がついた。口で息をするから花粉やハウスダストが喉の奥について炎症を起こしているのではないか、エヘン虫はそのせいではないかと思ったのだ。喉の奥に花粉がついてアレルギー性の炎症が起こる。すると、そこの部分が腫れ上がって気持ちが悪い。まるで痰が喉の奥に引っついているように感じる。だから咳払いをして一生懸命痰を出す動作をする。だが無論、痰は出ない。もともと痰はなく、喉が脹れているだけだからだ。

この患者さんに鼻アレルギーの漢方薬を出すと咳払いも治ってしまった。私の鼻アレルギーの薬は、自分で言うのもなんだが、よく効く。エヘン虫に鼻アレルギーの薬が効くのだから、アレルギーに違いないと思った。咳払いだけの人にもこの薬を処方すると、やはり良くなる。口呼吸をする人、鼻詰まりの人は喉アレルギーが起こりやすい。

風邪の後の咳とエヘン虫

風邪を引いた後、咳が止まらないと訴える患者さんも多い。これもアレルギーだ。耳鼻科でアレルギーと診断されることは少ない(アレルギー性咽頭炎という考え方も最近は言われるようになってきたようだ。)が、やはりアレルギー用の漢方薬が良く効く。だからアレルギーだと私は思っている。風邪を引いて喉や気管支の粘膜が荒れる。その傷んだ粘膜の上に花粉が付くとアレルギーを起こす。粘膜が傷んでいるだけに抵抗力が無く、アレルギーになりやすい。こういう症状の人も近年増えている。

花粉はホコリのように空中を漂っているものだから表面が濡れているところにつきやすい。鼻の粘膜は濡れていて、そこを通る空気の量が多いから花粉症になる。喉の奥も濡れていて空気の量が多い。眼も涙で濡れているから花粉症になる。目の花粉症になって眼を擦っていると眼の周りが涙で濡れて花粉が付きやすくなる。すると目の周りだけアトピーになる。眼の周りが赤くなるから赤パンダと私は呼んでいる。

アレルギーの増加

街を歩くと、多くの人がマスクをしている。花粉症で苦しんでいる人が多い。日本人はどんどんアレルギー体質に傾いている。海外青年協力隊で身体検査をすると、38%がアレルギー疾患が主な原因で不合格になる。アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性咽頭炎、アレルギー性気管支炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、これらはアレルギー用の漢方薬で大抵治る。

アレルギー体質の一番の予防は甘い物を食べないことだ。甘い物を食べていると、どんどんアレルギー体質に傾いていく。症状がひどい時、甘い物を食べていないか反省してみて欲しい。すぐに甘い物が悪いと分かるはずだ。甘い物とは炭酸飲料やお菓子だけではない。ビール(糖質80%カットのビールがあるほどだからビールは甘い)や果物ももちろん悪い。

私の経験

西宮市の甲山の近くにカフェ、ザ、テラスという喫茶店がある。屋外に広い板張りのテラスがあり、遠くに市街が望める。伊丹空港から旋回して飛び立つ飛行機が小さく見える。街中のオープンカフェと違って自然に囲まれているせいか空気が美味しい。席に着くと板張りの床の感触がいい。初夏と初秋は昼間、夏は夜が快適だ。普段、甘い物を一切食べない私だが、このシーズンになると時折立ち寄りってお茶をする。その時は意志が弱くなってケーキを食べてしまう。するとエヘン虫が出現する。

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