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民間治療見聞録

第1話「民間治療にのめり込むきっかけになった話」

民間治療の定義について

まず、ここでお話しする民間治療の定義について少し述べておきたい。
鍼灸は東洋医学の伝統的医療だと思うが、法律的には鍼で病気が治ると言ってはいけない。つまり治療効果をうたってはいけないことになっている。(灸や按摩も同じだ。) だからカイロなどと共に民間治療に入れて論じたいと思う。また断食などの民間治療もあるが、今回は体の外からの刺激で病気を治療する手技全体を民間療法として論じていく。

このシリーズでは私が様々な民間治療から医療に使える技術を取り出し、洗練して医療にしていった過程をご理解いただきたいと思っている。だから私の経験した民間治療を説明させていただく過程の中で、「漢方医」の中で書いた鍼や灸、気功についての記述と一部重複する部分が出てくるが、書き残してきた様々な民間治療も入れてご紹介したいと考えている。

肝炎を民間治療で克服

私は漢方を教えてくれた豊島先生と一緒に食事に行った。先生はビールを飲みながら、何故、自分が漢方の道に入ったかを説明してくれた。

20年ほど前、先生は産婦人科医として活躍していた時、手術中に自分の指を誤って傷つけ、肝炎ウイルスに感染して自分が勤務している病院に入院した。入院は半年にもおよび、看護師たちは先生が生きて病院を出ることはないだろうと噂していた。

ある時、退職前の看護師長が先生を見舞った。そして「整体と灸で難病を治療する人を知っている、治療費はすでに払ってあるから治療を受けるように。」と勧めた。看護師長が退職の前日まで先生に治療を勧めずに黙っていたのは、看護師長という立場のある者が[お灸で病気が治る]といったたぐいの話をして病院の中での自分の信用を落としたくなかったからだと告白した。
先生は半信半疑で外出許可を貰い、治療院を訪ねた。治療師はお婆さんで、背骨の両側にお灸をすえ、首をボキボキ鳴らして治療は終わった。たった1回の治療で肝臓の異常値は半分にまで下がった。これをきっかけに先生は鍼灸、漢方などにも興味を持ち、それらの治療を統合して受けることで、肝炎は完璧に治った。

私は民間治療でもこれほどまでに効く治療があるのかと驚き、是非、その治療師を訪ねたいと思ったがすでに亡くなっているとのことだった。
では他の民間治療でも効く治療があるのではないか?そう思った私は民間治療の研究に乗り出すことになった。いまから30年以上も前のことである。

ウイルス性肝炎がお灸で治るか?

常識的に考えてウイルスによる肝炎が灸や整体で治ることはありえない。では豊島先生の肝炎はどうして治ったのだろうか?

肝炎にかかっても発病せず体内にウイルスをもったまま正常の生活をする人もいれば、劇症肝炎になって、すぐに命を落とす人もいる。また急性肝炎、亜急性肝炎といった具合に体の免疫状態に応じて炎症が異なることが知られている。
豊島先生の場合、どんなウイルスが肝炎を起こしていたかは分かっていないが、免疫が弱っていたので慢性肝炎になり、肝臓の数字が高い炎症状態が続いていたのではないかと想像される。

お灸と整体によって体の免疫が上がり、ウイルスは体から排除されない状態ではあるが、保菌者として退院できたのではないか。つまり整体によって肝臓や体全体の免疫が上がったのではないかと想像される。

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