第204回「医療ツーリズム」
アメリカ国籍の中国人が日本で医療を受けようと親戚を連れてやってきた。
ある大学病院に電話して、外国人が自費診療で治療を受ける場合、いくらぐらいかかるのか聞いてみた。
日本人なら10万円の医療を受けた場合、3割負担なら3万円ですむが、この大学病院の場合、自費なら300%の負担がかかると言う。つまり 30万円かかる。別の大学病院は200%、つまり 20万円だった。他の病院は病気によって違いますなどと言う。寿司屋の時価のようなこと言われても患者は困ってしまう。
ようやく100%で治療してくれる病院を見つけて紹介状を書いて予約を取った。
ところが30分ほどして電話がかかってきて、外国人は診ることができないと断られた。
日本は医療ツーリズムを積極的に推し進めようとしているというが、これほどのバラツキがある事は知られていない。自費の負担率は病院のホームページでも明らかにはされていない。外国語担当の職員がいて予約を受け付けているわけでもない。外国人が医療費を踏み倒したとか、海外の親戚を養子縁組して日本に連れてきて、扶養家族として保険で治療を受けさせることもあるという。
こういう輩を相手にするのは厄介だ。
ある国ではクレジットカードの限界額まで治療をしてくれるが、それを超えたらどんなに重症でも病院を追い出される。
私は医療ツーリズムを積極的に推進すべきだとは思っていない。
もし外国人を受け入れたくなければ、負担率を1000%にしても良いだろうし、もし医療ツーリズムで儲けたければ、サービスを充実させ、安い比率で患者さんを集めても良いだろう。
いずれにせよ料金を明らかにして明確な立場をとって欲しい。
ついでながら医者の応召義務について問題提起しておきたい。
医者は患者を診なければならないという規定だ。
面白いのは、患者が料金を踏み倒しても、次に患者が来た時も診察せねばならないという判例が出ていることだ。70年も前に出た法律が今でも生きているのが面白い。
医者は緊急の患者を診察しなければならないのは当然としても、それ以外は応召義務から外すべきだ。海外の患者が応召義務を盾にねじ込んできても困ると思う。
- 第204回「医療ツーリズム」
- 2019年06月20日
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