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漢方医として腕を上げる方法

4. 漢方医学の迷信的治療

医者は病気に対して合理的な判断を下し、適切な治療をしていく。そこに迷信的要素が入ってはいけない。
ところが漢方を専門にしている医者は時としてブードゥー教の信者のように迷信的になってしまう。

原因は昔からの言い伝えや方証相対といった考え方を安易に受け入れてしまうからだ。さらに製薬会社のキャンペーンを信じているようにも思える。

そんな中で[私の腕を上げるための2つの原則]がどれだけ重要かを、1.漢方メーカーの宣伝による洗脳、2.日本漢方の方証相対、3.中医学理論を例にとって説明してみたい。

4.1. 漢方メーカーの宣伝にのせられるな

抑肝散(よくかんさん)をなぜ認知症に使うのか?

こどもの引きつけにネット上で抑肝散の使い方を説明している大学の准教授のインタビュー記事をみつけた。これを例に取りながらメーカーの宣伝に捕らわれてはいけないという話をしてみたい。

抑肝散はもともと子供の引きつけに使われてきた薬で、胃の中に水が溜まった子供には抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)が使われてきた。しかし、最近それが何故か認知症に効くといわれて広く使われている。いろいろ調べると簡単な臨床試験を漢方メーカーが行い、抑肝散を売るキャンペーンを張っているようだ。

ネット上のインタビュー記事の要約

准教授の説明

[抑肝散は認知症の中核症状である認知機能障害については効かないが、心理症状つまり不安、焦燥性興奮、幻覚、妄想、暴力、徘徊などには効く。抑肝散のみならず抑肝加陳皮半夏も効く。使い分けだが 抑肝散は、ある程度の体力のある人から体力の落ちる人に(中間症から虚証)に用い、抑肝散加陳皮半夏は虚証に使う。] そう書いてある。

漢方でいう虚証と実証

漢方でいう虚証と実証

中間証、やや虚証、虚証などは図で説明すると概ねこういう体質ということになるが、何故こういう体質に対して使い分けするのか?なぜ抑肝散が選ばれたかは説明されていない。

私が疑問に思う点を羅列してみる

  1. 虚証とか中間証という定義は准教授の頭の中にある基準でしかないため再現性に乏しい。また陳皮や半夏は基本的に消化器症状に使う薬で、虚証と呼ばれる体質とは関係ない。
    これが概念的思想というものだ。
  2. 何故、抑肝散や抑肝散加陳皮半夏が選ばれたかという論理的根拠が示されていない。
    これは方証相対という日本漢方の思想の影響だ。抑肝散を一つの薬と考え、理屈抜きで効くから説明が不要と思っている。

抑肝散の解析

抑肝散で特徴的な生薬は釣藤鈎抑肝散や抑肝散加陳皮半夏が認知症の周辺症状に効くのなら、構成生薬のどれが効いているかを分析しなければならない。
つまり英語の文章(処方)を構成する単語、つまり生薬の解析に入ることになる。この2つの処方の中で特徴的な生薬は釣藤鈎(ちょうとうこう)ということになる。

10年以上前から私は釣藤鈎だけの丸薬を作り、解析してきたので、釣藤鈎が強力な鎮痙、催眠、鎮静作用を持っていることを知っている。つまり釣藤鈎が認知症の周辺症状に効いているのだ。

保険にある釣藤鈎を含む4つの処方を解析してみても釣藤鈎の薬能をある程度推測することができる。

抑肝散

小児の引きつけに使われる。

釣藤鈎鎮痙鎮静作用
柴胡・甘草釣藤鈎と共に肝気の緊張を緩和し神経の興奮を鎮める。
当帰肝血を潤すといわれ、肝の血行をよくする。
川芎肝血を良く疎通させる。
茯苓・白朮子どもの引きつけで胃に水が溜まった者に使う。

抑肝散加陳皮半夏

小児の引きつけに使われるが、胃内停水のひどい者。

釣藤鈎鎮痙鎮静作用
柴胡・甘草釣藤鈎と共に肝気の緊張を緩和し神経の興奮を鎮める。
当帰肝血を潤すといわれ、肝の血行をよくする。
川芎肝血を良く疎通させる。
茯苓・白朮胃内に停滞した水飲を去る。
陳皮・半夏さらに胃内の停水を去らせ、肝の熱を冷ます。

釣藤散

中年以降の神経症でやや虚症を呈し、頭痛、眩暈、肩こり、肩背拘急などを主訴とするものに用いる。

釣藤鈎鎮静作用
人参・茯苓元気の虚を補う。
防風・菊花上部の滞気をめぐらし、熱を冷ます。
石膏精神を安じ鬱熱を冷ます。
橘皮・半夏・麦門麦門、菊花などと共に上逆を下す。

七物降下湯

高血圧による眼底出血に使用する。

大塚敬節氏創薬

釣藤鈎血圧を下げる。
黄耆血管を広げる。
黄柏胃をよくする。
四物湯止血する。

釣藤鈎釣藤鈎はカギカズラというツル植物の棘の部分。

東京生薬協会の新常用和漢薬集から引用

何十年か前、私は釣藤散が人間の脳底動脈を拡張させることを発見して論文にした。このことから考えると釣藤散中の釣藤鈎は平滑筋を弛緩させる働きがあり、血圧を下げるのではないかと想像される。また痙攣を鎮め、鎮静作用もある。肩こりや肩背拘急を治すから横紋筋も緩める。私が一番知りたいのは釣藤鈎という単語の意味を正確に知ることだった。

釣藤鈎
  • 催眠作用がある
  • 横紋筋を緩める作用がある
  • 鎮痙作用がある
  • 平滑筋、特に細気管支を緩める作用があるので、喘息に効く
  • 血圧を少しばかり下げる
  • 脳血管を拡張する作用がある

いままでのことをまとめると、釣藤鈎には鎮静、鎮痙作用があるので、認知症の周辺症状に効いているのだ。表に挙げた4つの処方も中心的生薬は釣藤鈎であり、処方がつくられた目的の症状をよくするために他の生薬が組み込まれている。

処方という文章を理解するためには正確な単語という生薬の理解が必要だということが分かってもらえるだろう。時間と手間はかかっても単語の分析から始めなければ迷い道に入り込んでしまう。生薬の薬能は昔から言い伝えらえているものでも間違ったものもあり、知られていない薬能もある。

もし認知症に使うのであれば、抑肝散を使うより新しく処方を組んだ方がよさそうだ。鎮静作用のある柴胡、催眠作用のある酸棗仁、そういった薬を組み合わせていけばいい。
そういう努力をすることで現代の病気に合った処方を作ることが出来る。

山本先生は私に次のように教えてくれた。「戦後間もないころ、使いたい生薬が輸入されず処方が組めなかった時代があった。そのとき代わりの生薬を使ったりして困ったこともあったが、それで一つ一つの薬能を詳しく知ることができた。」
生薬の薬能を詳しく知ることで迷い道がなくなり、腕を上げることができる。

鉄則 生薬の薬能を知り、処方の組まれた意味を知らなければならない。

抑肝散や抑肝散加陳皮半夏を認知症に使うのは、パンティを頭にかぶるぐらい突拍子もない抑肝散や抑肝散加陳皮半夏は、もともと子供の引きつけに使えるように処方が組まれているのだから、それを認知症に応用するのはいかにもオカシイ。

どのくらいオカシイかといえば、パンティは身に着ける下着だが、寒さをしのぐために頭にかぶるものではない。それぐらい突拍子もなく、おかしいことだと思う。

「漢方医として腕を上げる方法」目次

1. 日本の漢方の悲惨な現状
  1. 1.1. 漢方の故郷 中国(2016.12.01)
  2. 1.2. エキス漢方の投与量はどうして1日7.5gなのか?(2016.12.15)
  3. 1.3. 保険漢方医は7.5gを超えて投与した経験がない(2017.01.01)
  4. 1.4. 漢方の理論を勉強しても腕は上がらない(2017.01.15)
  5. 1.5. 大学で保険の漢方外来をすることほど恥ずかしいことはない(2017.02.01)
2. 腕をあげるための2つの原則と1つの道具
  1. 2.1. 漢方理論を臨床に持ち込まないこと 1つめの原則(2017.02.15)
  2. 2.2. 生薬の薬能は処方の中で変化する 2つめの原則(2017.03.01)
  3. 2.3. 丸薬(丸剤)を生薬解析の道具として使う 一つの道具(2017.03.15 )
3. 漢方医はどういう方法で腕を上げてきたのだろう?
  1. 3.1. 漢方で特許を取ることは出来ない(2017.04.01 )
  2. 3.2. 華陀(かだ)はどうして名医になったのか?(2017.05.01)
  3. 3.3. 秘伝への誤解(2017.06.01)
4. 漢方医学の迷信的治療
  1. 4.1. 漢方メーカーの宣伝にのせられるな(2017.07.01 )
  2. 4.2. 日本漢方より西洋医学の病理学が大切(2017.08.01 )
  3. 4.3. 中医学は空想的(2017.09.01 )
5. 創薬の具体的な方法(独自の丸薬作り)
  1. 5.1. 未知の学問は整理と分類が大切~葛根湯の解析を例に(2017.10.01)
  2. 5.2. 漢方薬に西洋薬の分類を当てはめて利水薬を作る(2017.11.01)
  3. 5.3. 瘀血の考え方と分類(2017.12.01)
最後に
  1. 創薬の楽しさ(2018.01.01)
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