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山本巌先生の漢方理念

第7回 保険治療は恐ろしい

1984年頃、私は山本先生の古くからの弟子のところに見学に行っていた。大変良い先生で、漢方を詳しく教えてくれただけでなく、山本先生を紹介してくれたのもその先生だ。

クリニックには百味箪笥もあるのに、出すのは決まってエキス漢方だった。理由を聞いてみたら、煎じ薬は自費でしか出せないし、保険のエキス漢方を出した同じ日には処方できない決まりだという。
当時、混合診療を避けるために、そういった指導がなされていたようだ。クリニックはずいぶん流行っていて、近畿一円から患者が来ており、先生は昼までしか働いていなかった。

今から思えば、その先生は1日だけ自費の煎じ薬を出す日を決め、エキス漢方では治らない難治の患者さんの治療をすべきだった。しかし、山本流のエキス漢方の切れ味がよく、流行っていたので、そんな必要も感じなかったのだろう。なにせ世間では方証相対という迷信が叫ばれていた時代だからだ。

診察を見学していると、しょっちゅう患者さんから電話がかかってくる。「私に出していただいている薬はどういう名前ですか?」当時、ヒートパックされた漢方薬には番号が打ってあるが、名前は書いていなかった。今のようにお薬手帳もない時代だからそういった問い合わせが多くてもおかしくない。その電話に先生は一つ一つ丁寧に答えていた。

そんなある日、整形外科の友人の診療所を訪ねた。薬局に20種類ほどの漢方エキスが置いてある。友人曰く、「漢方は全く知らないのだが、漢方薬を出して欲しいと患者が言ってくるので置いてある。」と言う。

なるほど!
患者はエキス漢方を遠くの漢方医までもらいに行くのは面倒だから、近くの先生に頼んで薬をもらうために処方名を聞いているのだ。もし薬が合わなくなれば、また漢方医のところに行って薬を合わせてもらえば良い。漢方のわからない西洋医学の先生でも患者さんから頼まれればお金も儲かるし、漢方なら副作用の心配もない。

そういったわけで、何もわからなくてもお薬を出すのだろう。
こういった現象を見て、この親切な先生の患者さんは、時間をかけて減っていくのだろうと思った。

現実は想像を超えるものだった

だが、現実は想像よりもはるかに恐ろしかった。しばらくすると数ヶ月で患者が半減したのだ。
エキス漢方薬が急速に普及したのと、おそらく処方の名前が簡単にわかるようになったことが原因だと思うが、詳しいことはわからない。

保険治療とはそういうものだ。日本中どこに行っても安い費用で同じ診療が受けられる。我々が築き上げてきた世界に誇れる医療制度だ。
通常、開業医の商圏(商売ができる範囲)はせいぜい3キロ位で、あるクリニックにかかるためにわざわざ電車に乗って出かける人はいない。漢方は使い方が難しいので、その先生のところが異常に流行っていたに過ぎない。

この先生は山本先生にエキス漢方の特別よく効く使い方を教えてもらったのだから、多くの患者さんが来ている間に1日だけ自費診療の日を設け、エキス漢方では治らない患者さんを煎じ薬で治療していくべきだった。

だが、現実には自費で診療するのはとても難しい。薬が少しでも効かないとすぐに患者さんはやめてしまうし、医者にとっては赤字部門を始めるようなものだから負担が大きい。
この先生は山本先生の煎じ薬の治療をたくさん見ていたはずだが、生薬の薬効については一切学べなかったようだ。

それから30年以上経った今、山本先生の弟子で新しい薬を作っている人がいないと断言できる理由は、自費診療をしている先生がいないからだ。保険で時々煎じ薬を出している人はいると思うが、煎じ薬は出すだけで赤字なのだから、煎じ薬は出したくない。さらに研究開発のために赤字が大きくなる自費で煎じ薬を出している人がいないのは当然と言える。

日本のすべての大学病院の漢方外来、公立病院の漢方外来は混合診療を恐れて保険診療しかしていない。煎じ薬をおいてはいるが、形式的に出しているに過ぎない。無論、難病に効く薬の開発をしているはずもない。

大学の附属研究所で、自費で煎じ薬を出しているところもあるじゃないかと言う人もいるだろう。
何十年か前、そこの外来を見学に行ったことがある。葛根湯といった処方のゴム印が置いてあったのに驚いた。そこは日本漢方の思想が強い研究所で、薬を加減して使わない。
だから加減しない煎じ薬を出している。そこから流れてくる患者さんは、今でも加減しない処方をもらっている。

つまり、日本では新しい処方の開発をしているところはほとんどないだろう。新しい処方を開発するためには多くの難病の患者さんが訪れ、それに対してすべて自費対応しているところしかできないからだ。

混合診療とは?

混合診療について少しばかり説明しておこう。
自費と保険の薬を同時に出すことをいう。混合診療を禁止した法律はないが、厚生労働省が厳しく取り締まるのには理由があると思っている。

これは想像だが、もし医者が保険の薬を「これは自費のよく効く薬です。」と言って出した場合のことを、心配しているのだと思う。だから少しでも保険診療と自費診療の線引きがあいまいになるのを恐れている。

1999年バイアグラという自費薬が認可されると、厚生労働省は自費診療と保険診療のカルテを別にして同一疾患、同一症状の患者さんに薬を出さなければ保険医療機関で自費薬を出してもいいと方針を明確にした。

煎じ薬での新処方開発ができなかった理由をまとめてみよう。

  1. 混合診療になることを恐れた
  2. 煎じ薬を使いこなす機会を作れなかったし、山本先生からも学べなかった
  3. 患者さんが薬を煎じて飲むのを嫌がった

保険診療は恐ろしい

漢方薬の効能書きは幅が広くていろんなものに使えるから、それを利用して漢方医は様々な病気に応用してきたが、やはり無理がある。保険の中で仕事をしだすと手軽に薬を出すことができるから抜け出すのが難しい。
これは漢方医のみならず、マッサージ師や鍼灸師にもいえることだ。そういう意味で保険診療は恐ろしい。

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