第236回「ノンアルコールワインを楽しむ」
「フランス料理を知りたければワインを知ることだ。フランス料理は時代によって変化してきたがワインは変わらない」ソムリエからそう教えてもらった。
確かにワインが分かってくると、ワインに合う料理を想像できるようになる。ワインは不思議な飲み物だ。ビールや日本酒は料理を選ばないのに、ワインには合う料理と合わない料理がある。
飲めない人はどうする?
それほどまでにワインとフランス料理は切っても切れない関係にあるのだが、お酒が飲めない人はどうしたらいいのだろう。
最近、お酒を飲まない人が増えている。まったく飲まない人やほとんど飲まない人を含めると、53% の人がアルコールを口にしない。そうなると、ワインを飲まない人はフランス料理を本当に楽しむことが難しいということになる。
宗教上の理由でお酒を飲めない人もいる。そんな人のための答えがノンアルコールワインだ。
1. ALAIN MILLIAT アラン・ミリア コックス種 アップルジュース
(フランス)
馴染みのホテルに行くと、友人のソムリエがノンアルコールワインのアラン・ミリアを出してくれた。
正確には葡萄から作られているのではなく、コックス種のリンゴジュースだ。現在、フランスの4つ星もしくは5つ星のホテルの半分近くで出されている。
スッキリした上品な甘さがある。ただし、ワインのようなマリアージュは楽しめない。
2. So Jennie ソー・ジェニー(フランス)
ソー・ジェニーは伝統的な醸造法で作られたノンアルコールのスパークリングワイン。
富裕層向けのエベント会社を運営していたジェニーはカタールやドバイの皇室の結婚式を手がけた際に、宗教上の理由でアルコールが禁止されている人々のためのスパークリングワインを思いついた。
驚くのは泡の細かさだ。シャンパンと同じような細かい泡立ちの作りかたは企業秘密というだけのことはある。ロゼのシャンパンの趣がある。
3. F.X. Pichler ピフィラー(オーストリア)
ゲルバー・ムスカテーラー トラウベンサフト
有名なピフィラーが孫のために作ったワインジュース。
パイナップルやマンゴーの果実味にオレンジピールの苦みが混じり合い、深みのある味を出している。特にオレンジピールの苦味が面白い。
以前、オレンジピールが入っている白ワインを飲んだが、ジュースだけでなく、本当のワインにも大きな味のアクセントになる。
- 柑橘類の苦味の美味しさ
最近、レモンサワーが人気だ。レモンサワーを美味しくするにはレモンの皮、つまりピールの苦味を加えることが美味しさを増す秘訣だ。
この原稿を書きながら、私は京都の老舗、老松の夏柑糖(なつかんとう)を食べた。
夏柑糖は一般的なオレンジやデコポンをくり抜いて果汁を固めたものではない。昔ながらの夏みかんをくり抜いて果汁を寒天で固めたものだ。少しばかり苦味のある夏みかんは今や絶滅危惧種で、老松は契約農家と協力して味を守っている。
販売しているのは4~6月の3ヶ月ほどしかない。ほんのりとした甘さと苦味がとても魅力的だ。これを食べると、柑橘類の苦味の美味しさを再認識できる。昔食べた夏みかんの味を懐かしく思い出すことができる
4. 葡萄果皮 カタシモワイナリー(日本)
葡萄の果皮を発酵させた後にアルコールを抜いたノンアルコールワイン。フルボディの赤ワインのような色をしている。酸味が主体で、ほんのりと甘みを感じる。
このワインが面白い。料理によって、甘味を感じたり、酸味を感じたりする。つまり、アルコールがダメな人でもワインのマリアージュを想像できる。
ただし、この微妙な味の変化は繊細に調理をされたフレンチを食べながらでないと感じられない。様々な味付けのオードブルを食べる時にこそ味の変化を実感できるはずだ。
私はアルコールに強いほうではないので、フランス料理を食べるのにワインがなくてもあまり苦痛を感じない。またワインを飲みすぎると味覚が鈍化してワインも料理もおいしくなくなること知っている。
フレンチを食べる時に料理を邪魔しないこんなノンアルコールワインがあれば料理を十分に楽しめるのだろう。
- 第236回「ノンアルコールワインを楽しむ」
- 2021年08月20日
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