第191回「エアコンとパジャマ」
清暑益気湯
扇風機もエアコンもない時代、体力のない人にとって夏は過酷な季節だったに違いない。
漢方には清暑益気湯(せいしょえっきとう)という薬があり、読んで字のごとく夏を涼しくし、体力を増すという薬だ。主成分の人参、黄耆(オウギ)で体力を補い、麦門冬(バクモントウ)で体からの水分を防ぐ。確かに一定の効果はある。
納涼床
庭に打ち水をしたり、襖を簾戸(スド、竹ひごを組んで風通りを良くした戸)に変えたりと昔の人は様々な工夫をして暑さをしのいできた。そういった努力の頂点に立つのは京都の納涼床(のうりょうゆか)だろう。
京都の夏は暑い。盆地なので風が通らず、湿気が多い。この暑さをしのぐため鴨川や貴船などに床がある。もし機会があれば、ぜひ盛夏に鴨川ではなく、貴船の川床料理を食べに行って欲しい。その涼しさにとても感動するだろう。
エアコンとのつきあい方
最近の夏は過酷だ。天気予報の最高気温が体感温度より低く感じるのは、広い芝生の上で温度を測っているためかもしれない。
暑い夏を過ごすため、私は半パンツ、といってもキュロットのようなブカブカの半パンツをはいている。また外出する時はゴルフ用の大きな日傘をさして歩いている。格好は良くないがこれでだいぶ暑さをしのぐことができる。
暑さ以上に問題なのが冷房との温度差だ。暑くなったり冷えたりを繰り返すことで体力が失われてしまう。冷房の中では冷えない工夫が必要だ。
長時間冷房の中にいる場合はナイロンでできた薄いウィンドブレーカーが役に立つ。かさばらず軽いので持ち運びに便利だ。高いものを買う必要はない。ユニクロで売っているような軽くて薄いウィンドブレーカーが重宝する。
また車を長時間運転する時は長袖を着るのがいい。近くにエアコンの吹き出し口があるので腕が冷やされて肩が凝ってしまうからだ。
パジャマ
都会ではエアコンをつけずに寝ることは不可能になってしまった。
温度調節より肝心なのはエアコンの風を直接肌に当てないことだ。盛夏でも長袖、長ズボンのパジャマが良い。写真はブランド物のパジャマだ。生地に光沢があり、肌触りもいいが夏のパジャマとしては不適格だ。何故かというと寝ているうちに袖や裾がまくれあがって体が冷える可能性があるからだ。

ブランド物のパジャマ
関西のスーパーマーケットのイズミヤで買い求めた夏のパジャマは生地が薄い綿ちぢみでできており、べとつかず肌触りが良い。上着もズボンも端が細くなっており、寝ている間に袖や裾がまくれ上げることがない。
ここまで考えられているパジャマが売られていることが楽しい。メーカーはどこかと調べても播州ちぢみとしか書いていない。

播州ちぢみのパジャマ
エアコンの普及
私が生まれたときは、エアコンがなかった。学生時代になってもほとんど一般家庭には普及していなかった。無論、私の家にもなかった。
理由は高価で電力消費が大きかったことだ。多分、今の価格に換算すると40万くらいしたのではないだろうか。
私は学生の時、アルバイトで貯めた金で自分の部屋にエアコンをつけることを決めた。勉強しているときに汗が首筋や肩を伝って流れてくるのが嫌でエアコンを買おうと思ったのだ。
私が親だったら、子供が勝手にエアコンを自分の部屋だけにつけたりすることに腹を立ててしまうだろう。しかし口うるさい親父は、不思議なことに何も言わなかった。何故、私は貯めたお金をデートや旅行に使わなかったのか?多分、私はエピキュリアンなのだろう。
いずれにせよ暑い夏を乗り切るためには様々な工夫が必要なことは言うまでもない。
- 第191回「エアコンとパジャマ」
- 2018年08月01日
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