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香杏舎ノート

第317回「モンゴル医学で発見した丸薬の価値」

内モンゴル

蒙古馬に乗る日笠医師

1990年、内モンゴルを旅行した。モンゴルはステップのような草原が続いていて生薬が取れないし、水もないので、生薬はすべて粉末にするか丸薬にして患者さんに投与していた。

いっぽう中国南部の揚子江や黄河流域は水が豊富で生薬もよく育つから煎じ薬が発達した。


薬棚を見ると丸薬を入れたビンが並んでいるのが分かる。

エキス粉末作成にはお金がかかる

私はエキス粉末を作りたかった。しかしエキス粉末は煎じた液をエバポレーターで濃縮してその液をデンプンの粉末のところに吹き付けるという作業をするか、凍結乾燥という方法を取らなければならず、初期費用が何億円もかかることが分かった。

森下仁丹の工場長だった園井伸介氏に丸薬の製造に幾らかかるか聞いたところ、1500万くらいでできると教えてもらった。このくらいの費用なら個人の医者でもできると思ってクリニックに丸薬工場を併設することにした。工場の衛生管理については園井氏の指導を受けた。

メモ:
医者が院内で薬を作ることも自費診療することも許されている。

保険診療をする時は保険と自費のカルテは完全に別にしなければならないし、保険薬と自費薬を同時に出すことはできない。

丸薬を選んで大変良かったことが幾つもある

生薬単独の薬効を知ることが出来る

中国南部では煎じ薬を煎じた後もその残りカスをもう一度煎じる。そして1番煎じと2番煎じを合わせて、できるだけ煎じ薬の濃度を濃くしているが、日本では1度しか煎じない。

もし生薬を粉末にするとすべての成分を吸収できるメリットがある。煎じ薬は飲みにくいから生姜、大棗、甘草という味をよくする生薬が入っているが、丸薬にすればセラックでコーティングできるので味がしないから、こういった生薬も省くことが出来る。

錠剤では沢山飲めない

錠剤で一番飲みやすい大きさは直径7ミリで重さが200ミリグラムだ。1日10g飲むためには50錠も飲まなければならないから、とても飲めたものではない。

写真は春ウコンの錠剤。春ウコンは酔い止めの薬として使われる。春ウコンは少量で効くので、酒を飲む前に10錠ばかり飲むと効く。

丸薬はたくさん飲める

生薬の薬効はかなり弱い。それを最大限に引き出すためには粉末にして飲めばいい。すると煎じた後に残る残渣もすべて飲むことができる。

粉末を固めて丸薬にすれば、さらに飲みやすくなる。直径1ミリの丸薬が一番飲みやすく、最大30gまで飲めることが分かった。

モンゴル医学の本

87種類の生薬があったモンゴル医学の本

モンゴル医学の本を求めてフフホトの本屋に行った。すると中国語とモンゴル語で書いた本が一冊だけ残っていた。

この本を読むと漢方でも使われる87種類の生薬を発見することができた。これを元に丸薬の製造が始まった。

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