【 漢方・整体施術 治療症例 】
68.肋骨骨折をおこした大学教授を漢方薬と関節操作法で治療
旧知の医学部の名誉教授から連絡がきた。
2日前に転倒して肋骨骨折をおこした。また右のAcromion(肩峰)が痛くて手が上がらないという。肋骨が痛くて呼吸がしにくい。咳をすると激痛が走る。横になって寝ることができないので、起坐呼吸の時のように机にもたれて寝てみたが、痛さのためにほとんど寝ることが出来なかった。2日後に大学で講演があるので治して欲しいという。
レントゲンは撮っていない。医者だから分かるのだが、確かにレントゲンを撮っても治療は肋骨が呼吸でずれないようにトラコバンドという腹帯のようなもので肋骨を固定する治療しかないし、肋軟骨だとレントゲンでは映らない。
この教授が私を信用してくれているのは、この先生が紹介した難しい患者を治してきたからだ。だが2日で痛みを取ってくれとは、さすがに無茶な要求だ。
診察すると腕は水平までしか上がらない。触診では右の肋骨の5番あたりにヒビが入っているのは間違いないが、折れているかどうかはレントゲンを撮っていないので分からない。肩峰は腫れと圧痛があり、筋肉にも痛みがある。
打撲には通導散加減
馬車にひかれたり、馬に蹴られて死にかけた人を治す通導散は打撲によく効くことは今までにも書いてきた。
通導散の中の大黄は必要だという人もいるが、大黄と芒硝は急に便意を催すので処方の中から省いても構わない。通導散の駆瘀血作用を強めるために桃仁と牡丹皮を足してやれば打撲によく効く(山本流加減)。治打撲一方に含まれる 樸樕(ぼくそく)は値段の割には効果がはっきりしない。
まずは通導散加減を飲んでもらって15分テストすると、手が水平よりさらに30度ほど上がるようになった。
転倒の時は骨格が歪んで痛みが増強しているので、第5肋骨が背骨についている肋椎関節を緩めると肋骨の偏移が矯正されて痛みが軽減するのではないかと思って緩めたら、相当痛みが軽減した。肋間神経痛や帯状疱疹後神経痛にもこの治療がよく効く。
肋骨に物が直接当たって骨折するのではない場合には、細い肋骨が捻じられて骨折するから肋椎関節をゆるめると捻じれがましになり、痛みにくくなるのかもしれない。さらに関節操作法で他の背骨の歪みを治した。
翌日に来てもらったら、横向きで寝ることが出来て、ずいぶん楽になったという。手もほとんど垂直にまで上がるようになった。
2日後、講演を済ませて来院した。不思議なほど肋骨の痛みはないという。その後、骨折を治す独活寄生丸を大量に出した。
ただ、肩の痛みがまだ取れないというので、肩甲骨周りや頸椎をかなり緩めるとまっすぐ手が上がるようになった。
10日ほどして肩関節の腱板などの傷害がないか大学の知り合いに診てもらった。受傷後2週間後のレントゲンを見て驚いた。肋骨骨折はあるもののほぼ融合している。肩の痛みは鎖骨の骨折だった。
もし先にレントゲンを撮っていたら肩回りをあれほど触らなかっただろう。鎖骨はずれも少なく、化骨も始まっているので、このままで経過を見ましょうとのことになった。
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以前、腰痛の患者さんを治して痛みが良くなったが、念のためにレントゲンを取ったら腰椎の圧迫骨折だったことがあった。
施術が骨の徒手整復の役割を果たし、漢方が化骨を推進したのだろうが、レントゲンを先に撮っていれば、さすがに怖くてここまで触れなかっただろう。
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68.肋骨骨折をおこした大学教授を漢方薬と関節操作法で治療 - 2022年04月01日
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