【 漢方・整体施術 治療症例 】
26. 丸薬の色が違うのですが?
よく、患者さんから「丸薬の色が違うのですが」という電話をいただく。
「前はもっと黒い色だった」とか、「もっと明るい茶色だった。薬が間違っているのではないですか?」と心配になるようだ。
だが、写真を見て欲しい。同じ紫根という生薬だが、色がまったく違う。
コルク成分の違いでここまで色が違うのだ。マグロでも赤身とトロでは別物のように色が違うのと同じだ。
市販の丸薬は炭の粉などで色の調整をしていると聞くが、そうでもしないと、色のばらつきが出る。
生薬末は、色は変わらなくてもロットによって粘り気が強かったり、弱かったりするから丸薬を作るのは大変だ。どんなに工夫しても丸剤にならないこともある。その一方で八味地黄丸や桂枝茯苓丸といった決まった処方を作るのは楽だ。
理由は2つある。一つはいくつかの生薬を混ぜて粉にすると性質が安定して丸薬を作りやすくなることだ。また同じレシピで丸薬を作り続けるので、生薬末を固める米粉やもち米の粉、水分や蜂蜜の量を決めやすい。
私のように単味の生薬の丸薬や多種類の丸薬を作っていくとなると、毎回、粉の性質に振り回されることになる。
リンゴやトマトとは違う?
スーパーに売っているリンゴやトマトはみな同じ大きさで同じ色をしている。しかし、トマトやリンゴはそういう風に育つわけではない。形や色のいびつなものを生産者が除いているからだ。同じ大きさでないと値付けや流通に支障がでる。
同じ形の色や大きさの果物になれている人からすれば、疑問に思うのは無理もないことだ。
私のところでも炭などで色をつけたり、賦形剤の米粉を多量に入れれば、きれいな色のそろった丸薬を作ることができる。そうするには今の3倍くらいの値段にする必要がある。
問屋から刻んだ生薬を買ってきて、ただ混ぜて煎じ薬として出している薬局や、自費の診療所の生薬の値段と私の丸薬の値段はほとんど変わらない。
私のところでは生薬を末にして丸薬を作り、それにコーティングをして分包して患者さんに渡している。とんでもなく手間をかけて作っているが、高くならないように努力している。
こんなに多種類の丸薬を作っているのは私だけだから、漢方医でもこの苦労は分かってもらえない。
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26. 丸薬の色が違うのですが? - 2019年11月15日
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