第235回「鍼灸やマッサージ学校に入ったら何をすべきか?」
施術師を目指す人は誰でも他の施術師が治せない病気を治す腕を持ちたい、そして独立して自分の施術所を持ちたいと思っているはずだ。その夢を果たすためには戦略的な努力が欠かせない。その方法について説明する前に、まずは学生が落ち入りやすい失敗から見ていこう。
落ち入りやすい失敗
1.中国への留学
鍼灸学校によっては中国の中医学院への2年間の留学制度を設けているところがある。留学すると中医師の免状がもらえる。
以前、留学したことのある鍼灸師を雇ったことがあるが、まったく技術をもっていなかった。
なぜなら中国語がすぐには話せないので教えてもらうことが難しいこと、さらに中医学院では一般的な鍼灸の知識は教えてくれるが、専門的な知識が欲しい人は教授に個人レッスンを受ける必要がある。この制度があることを知らない人が多い。おそらく正式な制度ではないから知らない人が多いのだろう。
さらに本当に凄い技術は国家機密になり、たとえ個人が見つけた施術法でも外国人には教えることはできない。その例が鍼麻酔だ。40年前までオープンにしていたが、今は一切出てこなくなった。
2.講習会に参加する
私のクリニックでアルバイトをしていた鍼灸マッサージ師は、オステオパシーの勉強会に参加するために必死で金を貯め、夜行バスで会場に向かい、宿泊代を浮かす為に温泉施設に泊まってまで勉強会に出席していた。
この会を主催する施術師は、講演はしても自分の施術は見せない。実際の患者の治療を見ないで講演用の施術を見ても何の意味もない。
そもそも講習会は知識を学ぶには適しているが、実技を学ぶには向いていない。そんなことも分からない人が多いのは、知識だけを教える学習塾に子供の時から行っているからだろう。
3.登録販売者の資格を取る
ドラッグストアに一定期間勤めて簡単な試験に合格すると、ドラッグストアに置いてある漢方薬はほとんどすべて売ることができる。鍼灸学校によっては鍼灸師の資格に加えて漢方薬でも治すことできると登録販売者の資格を積極的に学生に勧めている。
確かに一般用の漢方薬は医者の使う保険漢方薬以外の種類の漢方薬が多くあり、また医者で鍼のできる人は少ないから、頭の中だけで考えると有利な資格のように思える。
しかし、結局は単に漢方薬を売る資格でしかないので、漢方の知識を学ぶことはできない。
4.患者さんが多い整骨院に見学に行く
整骨院は基本的に保険で施術している。保険診療では施術部位に制限がある。首と腰の2箇所などと決まっていて施術単価も安いから多くの患者さんを施術しなければ儲からない。保険の施術では技術を深めることはできない。
自費なら1500円の治療が7割引きの450円、高齢者なら1割負担の150円で受けられるから流行っているように見えるに過ぎない。
この中で特に中国留学と登録販売者の資格取得は、鍼灸学校が自分たちの学校を特色つけるために積極的に宣伝していることもあるので要注意だ。
実際の治療を見学するのが基本
いい腕を持つためには、難しい病気を治している施術師の治療を見学して教えてもらうしかない。だが、腕の立つ施術師が技を教えてくれることはまずない。またすぐに見学を許してくれることもない。どうしたらいいか。
1.まずは施術を受けにいってみよう
腕の立つ施術師のところにまずは施術を受けにいってみよう。施術を受けるとすぐにその施術師が上手いか下手かが分かるはずだ。
2.毎週、施術を受けに行こう
腕がいいと分かったら毎週、施術を受けに行こう。何度も施術を繰り返して受けているうちに何となく分かってくる。そして1年間、50回も受けると先生の考え方が分かるようになる。
1回の施術料金が五千円とすると、25万円かかるが、これは学費と考えよう。
施術の学校は午前もしくは午後だけだから空いた時間でバイトをしながら施術費用を捻出してせっせと通うのがいい。別の治療院にも並行していってみるのもいい。
3.見学を頼んでみよう
何回行っても、とても素晴らしい治療だと信じられたら、見学を頼んでみよう。
ある時、私のクリニックに看護師と保健師の両方の資格を持つ女性が施術を受けに来た。彼女は私の施術に興味を持って、見学させて欲しいと言う。許可したら毎週、熱心にかよって来るようになった。あまりにも熱心なので、僅かだがバイト料を出して施術を覚えてもらった。
その時、私は看護師ほど施術に向いている職業はないと思った。注射はできるし、重症な患者さんも沢山みているからだ。彼女が施術師になったらずいぶん稼げると思った。
元々鍼灸学校やマッサージ学校は午前もしくは午後の半日になっている。理由は学校のない半日は施術所で修行をするため、トータル3年間になっている。
そうでなければ半日にしている意味がない。卒業して資格を取ってしまって整骨院などに勤めると自由に見学に行けなくなってしまう。
学生の立場で見学を希望すると、施術師は自分の施術方法で将来腕を上げたいのだろうと見学を許してくれる可能性が高い。
- 第235回「鍼灸やマッサージ学校に入ったら何をすべきか?」
- 2021年07月25日
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