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臨床日記

【 漢方・整体施術 治療症例 】
53. ウンコだけで出来た漢方薬

五霊脂

五霊脂五霊脂(ごれいし)という生薬は、ムササビのウンコそのものだ。乾燥しているので、臭いはまったくない。ムササビは木の実などを食べる草食動物だから臭くないのだろう。

元々、草食動物のウンコは臭くないらしい。チベット高原では草食動物のヤクのウンコを乾燥させて薪に使っているが、やはり臭わないと言う。
だがウンコを口に入れるとなると事情は少し違ってくる。

じつは五霊脂にはコウモリのウンコも使われる。コウモリは昆虫なども食べるので、コウモリだけのウンコで作られた五霊脂は多少匂うのかも知れない。

効能

効能は瘀血を取る作用だ。
瘀血とは体の中に非生理的血液が溜まっている状態を示す漢方的用語で、具体的には打撲による内出血、癌の新生血管による血の滞りなどを指す。

瘀血を取る生薬は、植物由来の桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、蘇木(そぼく)などがあり、それらに比べてどれだけ効果が強いか、私には分からない。

失笑散(しっしょうさん)

失笑散(しっしょうさん)

五霊脂は単独で使われることはなく、ガマの蒲と一緒に使われる。これを失笑散という。失笑というネーミングが面白いが、どんな理由があるのか知らない。

失笑散の丸薬をわざわざ作って持っているのは、多分、私だけだろう。10年以上前に作った丸薬だ。あまり使わなかったのには理由がある。

患者さんにどんな生薬が入っていますかと聞かれる度にムササビのウンコとは言いづらい。特別に効く理由があれば説得できるのだろうが、それを調べるにはまずは出してみないと分からない。

童便

こちらは便ではなく、オシッコのこと。
10歳以下の男の子の尿を言う。直接飲むこともあれば生薬の修治(しゅうち。加工)にも使われる。
何やら一時流行った尿療法を思い出す。私はこれを使ったことがない。

中国人の生薬を求める執念には驚かされる。人間の胎盤を火であぶって乾かし、それを元気を出す薬として服用し (紫河車シカシャ)、ヒルを乾燥させて血液を溶かす薬として使う(水蛭スイテツ)。

私も自家製の水蛭丸、ミミズ、鶏内金(鶏の胃袋の粘膜を剥ぎ取った物)の丸薬などを持っている。無論、趣味で作ったものではなく、難病に出会う毎に何とか治そうとして作ったものだ。

一般の人は漢方の古典をよく読み、漢方の理論を理解すれば難病を治せると勘違いしているが、漢方の理論は空理空論だし、生薬の説明も現代の医学用語で説明がされているわけではないので、どんな病気に使ったらいいのかわからない。難病を治すためには、よく使われている保険のエキス漢方や保険で認められた生薬だけでは対処できない。実際に特殊な生薬を使って効果を確かめていかねばならない。

【当院では漢方治療に保険が使えます】は恥ずかしい

今まで特殊な生薬を探し求め、様々な新しい生薬の組み合わせを試してきた。
ネットを見ると、【当院での漢方治療は保険が効きます】と書いてあるのを見かける。いまどき、保険のエキス漢方薬があること知らない人はいないし、40年以上使われてきた保険薬を工夫して使えば、難病が治るなんて誰も思わないだろう。

ネットにこういった言葉を宣伝として載せることは自分を辱める行為だと思う。

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