第241回「マッサージ師の驚きの預金額」
田舎の漁村に腕のいいマッサージ師がいた。
古い民家の座敷に布団を引き、自分も寝そべるようにしながら施術をしていた。年齢は70歳を越えていて、治療用のベッドは昔から使っていなかったようだ。
かなり流行っていたが、弟子を取ることはなかった。おそらく目にかなう人物がいなかったからだろう。
そのマッサージ師は高齢になってから弟子にしたいと思う女の子に出会った。その子は患者として来ていたのだが、聡明なその子に技術を譲ろうと考えた。しかし、女の子は中学生だからまだ義務教育さえ終えていない。それでも治療を見学させて一生懸命に教えようとしていたという。
驚きの預金額
ある日、女の子を呼んで自分の通帳を見せた。1億円入っていたという。
金額を自慢したかったわけではない。大学に行ってつまらないサラリーマンなんかにならずに自分の跡を継いで欲しかったからだ。
彼の施術は独特で、手先と足先の関節を治してから背骨を治すというものだが、詳しいことは分からない。残念ながら彼女は治療の見学はできても、そのマッサージ師から患者さんをみながらの実際の技術の伝授は叶わなかった。
高校を出るとその子は大学には行かず、鍼灸マッサージ師と柔道整復師の資格をダブルスクールをして3年間でとった。さすがに老いたマッサージ師が惚れ込んだだけの頭の良さを持っていた。
その後、鍼灸の大学などで腕を磨いた後、将来を嘱望される若い医者と結婚した。
それでもサラリーマンになりますか?
一流大学を出て一流企業に勤めても1億円の貯金を作ることは難しいだろう。
その施術師は80歳過ぎても働いていた。サラリーマンは定年という名のもとに65歳で強制的に引退させられ、老後の貯金の心配をしなければならない。
多くのサラリーマンの願いは自営業ではないのだろうか。もし凄腕の施術師から技術を学べば楽に自営業になることができる。意地悪な上司もいないし、自分のペースで暮らしていける。
衝撃的出会いがうらやましい
女の子のように人生を変える衝撃的な出会いを羨ましいと思う人も多いだろう。
だが、彼女はもう少し早く生まれていれば、もっとその先生から技術を学ぶことができたはずだ。幸運の女神に出会うことは難しい。
幸運は時代の変化、ふとした運命の偶然で出会うことができるものだ。
だが忘れてはならないことがある。
幸運は人によってもたらされるから、人に対して誠実であることが幸運をつかむ秘訣だということだ。
- 第241回「マッサージ師の驚きの預金額」
- 2021年12月20日
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