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香杏舎ノート

第240回「遠隔診療のD to D」

10年前から遠隔診療

私は10年前から遠隔診療をしてきた。
海外ではニューヨークやオーストラリアのメルボルン、フランスのニースなどの患者さんを遠隔診療してきた。その間の経験を通して遠隔診療で出来ること、出来ないことを経験した。

法律的な問題もそうだが、遠隔診療をするには無論、医療的問題も解決しなければならない。
最近、遠隔診療が解禁されたことから様々な取り組みがなされているが、経験者から見れば間違った取り組みが多いといえる。

11年前に遠隔診療を思いついた

私が遠隔診療を思いついたのは11年前にiPod touchにカメラがついた時だ。iPod touchは2万円で買え、Wi-Fiのある環境ではFaceTime(Appleが提供しているビデオ通話)でテレビ電話ができるようになった。

たった2万円でテレビ電話ができるようになったことは本当に画期的なことだった。当時はLINEもなく、Skypeは海外勤務のある極めてわずかな人しか使っていなかった。

皮膚科の診断に使える

使用してきた機器

遠隔診療のためにiPhone、iPod touch iPadなどを試したが、今はiPad が一番いいと思う。

私はiPod touchを虫眼鏡のように患者さんの皮膚に近づけて撮影しながら、皮膚科の先生に診断を仰ぐことが出来ると考えた。
実験をするためにiPod touchを2台買い、ポケットWi-Fiも2台買って、皮膚科の先生を訪ねた。

驚いたことに友人の皮膚科医はポケットWi-Fiというものを知らなかった。大学病院の皮膚科の医者も訪ねたが、その医者も知らなかった。最後に羽田妙子先生を訪ねた。

当時、先生は60歳代で、ネットは出来ないと想像していたが、先生は私の趣旨をよく理解してくれて、器具を自腹で揃えてネットを繋いでくれたので、私は診察中の患者さんの皮膚病の診断を先生に仰ぐことができた。

当時のレントゲン写真また骨のレントゲンにiPod touchを近づけてみると、細い線状骨折も分かるではないか。これは様々な利用方法があるのではないかと思い、整形外科の友人を訪ねたが、まったく興味が無いようだった。

さらに博多での講演会に招かれていたので、講演会後、遠隔診療を披露してみたが、誰も反応を示さなかった。

マーケティングの理論によると

新しい技術が導入されると、初めに1〜2割の人がそれに飛びつく。しかし一般の人に広がるのにはタイムラグがある。そのタイムラグを利用して一気に宣伝すると大きな儲けに繋がるので、その時、どう宣伝するかにかかっている。
マーケティング理論ではそう教えている。

インターネットの技術は軍の機密であったが、民間に少しずつ解放されていくようになる。

ビルゲイツは裕福な弁護士の家庭に生まれ、金持ちの集まる私立学校に通っていた。そこの父兄会は子供たちに何らかの特別な経験をさせたいと考えて、当時、時間単位のレンタル料金が非常に高価だったインターネットを学校に引いた。そのインターネットを使いまくったのがビルゲイツだった。

アップルのスティーブ・ジョブズもビルゲイツと同じ1955年生まれだ。何故、同い年かというと、時代を変える技術が出たときにbillionaire(億万長者)が出現するからだ。1955年生まれの彼らはそういう時代の申し子だったのだ。(Outliers :Malcom Gladwell より)

医者はインテリではないのか

自宅にWi-Fiがあれば2万円の器具を買うだけで今のLINEのような使い方ができるのに、医者は興味がまったく無いのに驚いた。そもそもマーケティングの最初の1〜2割の人は新しい技術を試してみたい知識人のはずだ。

医者の中にイニシエーターがいなければ技術が広まるはずもない。遠隔診療が広がりをみせはじめる今日まで10年の歳月が流れた。

遠隔診療には2種類ある

遠隔診療にはP to D (患者さんの依頼で医者が診察する)とD to D(患者さんを診察している医者が、他の医者とその場で診察を相談する)場合がある。
まずはもっともポピュラーなP to D からみていこう。

P to D (患者さんからの求めに応じて診察)

再診の場合

遠隔診療イメージ患者:「先生、また膀胱炎になったみたいです。抗生物質を出してくれますか?今は忙しくて。先生のクリニックは7時までなので間に合わないので、よろしくお願いします」

医者:「分かりました。処方箋をFAXで送るので調剤薬局で薬をもらって下さい」

ほとんどのクリニックは7時に終わるので、こんな場合は大変便利だ。気心の知れた患者さんならかかりつけ医も安心して薬を出せる。持病の薬を定期的にもらっている患者さんにも便利だ。

初診の場合

1. 風邪

患者:「風邪を引いたみたいです。熱が38度で、咳と鼻水が出ます。忙しくて受診する時間がありません」

医者:「咳と鼻水、それに熱に対する薬は処方できますが、インフルエンザの薬は検査をしないと出せません。高熱が続いて、咳をすると胸が痛いなら肺炎の可能性があるので、早急に受診して下さい」

風邪の場合、誤診の可能性を否定できないが、風邪は誰でも引いたことがあり、患者さん本人が自分の病気を誤診する確率が低いので薬を出すことは不可能ではない。

2. 腹痛

患者:「お腹が痛いので遠隔診療で診てもらえませんか」

こんな患者さんの遠隔診療を受ける医者はいない。
腹痛は胃痙攣だけでなく、虫垂炎、胆石、腎臓結石、腸閉塞など様々な疾患が考えられるから検査をしないと遠隔診療では薬を出すことはできない。このような患者さんを診察するには血液検査、エコーなどの検査が患者さんの自宅でできるかどうかにかかっているが、今のところ不可能だ。

本当の遠隔診療はD to D

DtoDイメージ本来、遠隔診療で重要なのがD to Dだ。医者が患者を診ているので、遠隔医も安心して相談に応じることが出来る。

1. 皮膚科の相談

内科医: 「今、イボと思われる患者さんが来ているので診てもらえますか」

皮膚科医:「確かに尋常性疣贅のようですね。液体窒素で治療しましょう」

内科医は電子カルテ上の患者さんの住所、氏名の写真をiPadで撮り、健康保険証の写真も撮ってメールで送っておく。
患者さんは予約日に行くとすでにカルテが出来上がっているので、待ち時間なしで治療を受けることが出来る。

iPadは一番安い機種では4万円くらいで、Androidほどウイルス対策が要らないこと、さらにカメラのように持ち運べるので便利だ。無論iPod touchより画面が大きいので医者と患者を画面に入れた状態で話すことが出来る。

2. 腰痛の場合

病院の整形外科医と開業医の相談
開業医:「レントゲンを撮りました。脊椎管狭窄症のようです」

病院の整形外科医:「まずはMRIの検査日を決め、検査後に診察するように日程を組みましょう。午前中にMRIの予約を入れ、その後、診察します。カルテはいただいたメールから作っておきますので患者さんには病院に来たらすぐに検査室に行くように行ってください」

患者さんは以前のように[〇〇先生御侍史]などと書いた紹介状を持って病院を訪ねて、検査の予約だけをして帰る必要がなくなり、大変便利になる。病院も効率化を図ることができる。

私の遠隔診療

私の治療は遠隔診療に適している。
薬は自作の漢方丸薬だけで副作用はまずない。自作の丸薬は少しでも危険な生薬は除いている。保険のエキス漢方の7割に含まれる甘草は極めて稀に浮腫を起こすことがある。そんな甘草さえ私の丸薬には入っていない。だから初診のP to D でも何の問題もない。

また150種以上の丸薬を作っているのは私のクリニック以外にはないのだから遠隔をしてもらう価値もあると私は信じている。

ただ、P to Dをやってみると分かるのだが、ものすごく効率が悪いし、患者さんの体質などは直接会って診察するのに比べて確実に劣る。だからD to D に勝るものはない。

P to D のプラットフォームを作ろうとする若い医者達

起業家を目指す医者達はP to Dを念頭において政府と交渉して医療プラットフォームを作ろうとしている。しかし、説明してきたようにP to Dはリスクが多すぎて成功しないだろう。もっと根源的な問題は保険診療なので、値段を自分たちで決められないことだ。まずはD to Dの仕組みを作ることが必要だ。

ずいぶん前にThe Economist を読んでいると、ネット取引はビジネス間のB(Business)to B では成功するがB to C 、つまり会社と消費者(Consumer)の間では成功しないだろうと書いてあった。新しい技術の利用方法についての予想は往々にして外れるものだ。それに加えてプラットフォームを作る先駆者は多額の費用を注ぎ込まなければならない。

遠隔診療のプラットフォームを作るのに100億円かかったとしよう。ビルゲイツが言うように絶え間ない改革と投資が必要だ。それだけの投資をしても2番手になればすべてを失ってしまう。一番の企業だけが生き残る。そうなると投資した資金はまったく残らない。

普通の会社が工場に100億円投資して競争に敗れても工場を他の会社に売ることができるからすべてゼロになることはない。医療のプラットフォームを作って何十億も持っていると思っていても、よほどのアイデアを出し続けないかぎり、すべてを失ってしまう。

私の丸薬を病院で使いたい

最近、数百キロ離れた病院に勤める漢方医が私のクリニックに見学に来た。丸薬の効果に驚き、病院の漢方外来で丸薬を使ってみたいと言い出した。病院に薬を置くことは出来ないが、D to D を利用すれば何の問題もないと説明した。

病院の医者が患者さんを私に紹介して共同診察する。私は自作の丸薬を患者さんに直接送る。病院の先生は検査などで患者さんをフォローしながら私の丸薬の効き方や成分を習ってもらう。

丸薬を病院で使う

病院から患者さんを他の医療機関に紹介することは普通のことだし、他の医療機関で治療を受けている患者さんのフォローをすることも一般的なことだ。唯一違うのはD to D の遠隔診療、つまり病院の外来で他院の医者がテレビ電話で現れて、その場で共同診察するだけだ。だがその病院の管理者たちは、この当たり前のことが理解できなかった。

遠隔診療については2回ほど香杏舎ノートに書いてきた。
医者は遠隔診療が解禁された時代にも遠隔診療を理解できないでいる。またビジネスを目指す若き医者たちは実現不可能なP to Dを目指そうとする。医者は知的な職業だと思っていたが、どうもそうでもないらしい。

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