第60話「どんな知識を持っていると金持ちになれるのか?」
サラリーマンの夢は1000万円プレイヤーになることだが、サラリーマンの5%しかいない。そんなことを考えていると老人が夢の中に現れて語り始めた。
サラリーマンで金持ちになるのは難しい
老人:「1000万円稼ぐと、720万の手取りになるから、ずいぶん豊かに暮らせる。しかし、大企業で1000万円を超えるのは役員になる50歳代だ。その頃になると役職定年になり、給与は2割ほど減る。それで65歳の定年を迎えることになるからサラリーマンで金持ちになるのは難しい」
私:「確かに豊かな老後は望めませんね」
一流大学卒だけでは学歴が足りない
私:「一流大学を出て就職していても転職できません。辞めると正式職員として雇ってくれるところはないので、派遣社員になります。そうなりたくないから自分に合わない仕事だと思っても我慢しなければなりません」
老人:「大学教育の専門性が低く、習う知識はほとんどスマホで調べられることばかりだ。大学1~2年の間は、(人生の夏休み)と考えている学生が多いし、3年からは就活で忙しい。結局、大学で専門的な知識を学ぶ時間はない。修士課程や博士課程に進まないと専門家とは言えない」
私:「でもそんなお金は無いと思います。大学の奨学金の返済で苦労している人も多いですから」
卒後教育の費用
老人:「日本では4月に新卒を一括採用する。採用者のうち3割が3年以内に辞める。どうせ辞めるからと新人教育にお金をかけない。企業が社員にかける教育費はたった5000億円。先進国の中ではもっとも少ない。アメリカは30兆円だ」
私:「60倍も違うじゃないですか。あまりに違いすぎます」
老人:「アメリカでは採用した従業員を徹底的に鍛える。野心があれば様々なチャンスをもらえる。サバティカルといって1年間の休暇をもらえることもある。無給のことも有給のこともあるが、1年後に会社に戻ってくることが約束されている。給与は会社との個人交渉だからサラリーマンでも高額を得るチャンスがある。仕事は定時で終わるから、夜間の学校にも行ける」
私:「上司の顔色を伺いながら残業している日本では自分の能力を伸ばす時間さえないですから寂しいかぎりです」
給与の限界
老人:「1000万円の給与だと720万の手取だが、2000 万円もらっても手取りは1200万ほどだかから額面給与は2倍になっても手取りは半分しか増えない。給与の高い役員は会社に対して【個室をくれとか、秘書をつけてくれ、もしくは専用の車をくれ】と要求する。さらに相談役や顧問として長く勤めようとする。アメリカでは給与の限界はないし、ストックオプションとして株をくれるから税金もかからない」
私:「でもアメリカでは誰でもがそんな状況になれるわけではないですよね」
老人:「無論、博士号を持っていて、とても頭のいい人だけだ。
昔、ソロバンができて難しい計算を暗算できるのは才能だった。誤字、脱字なしで綺麗な読みやすい字を書くのも才能だった。一般の人がもっとも劣等感を感じることは記憶力だった。これらがITの出現で誰でもが持つ能力になってしまった」
私:「なるほど。トラクターで体力のない女性でも畑を耕せるようになったのと同じで、知識を持つ人の商品価値も落ちてしまったわけですね」
ホワイトカラーでいるのは至難の業
老人:「知識で飯を食っていくのは至難の業だ。貴重な情報もネットであっという間に全世界に広がる」
弁護士や医者になればいい?
私:「結局、難関な資格を取る以外にないのですね」
老人:「難関な試験を受けるのには、すごくお金がかかる。また、勉強しても試験に通るかどうか分からない。資格を取ったところで飯が食っていけるかどうかも怪しい。まずは医者の話からしよう」
私:「医者は収入のいい憧れの職業です。若い時から1000万円以上の収入がえられます」
老人:「入試の困難さから考えると、日本で一番頭の良いのは東大医学部の合格者だ。年間100人しか合格しないから大変なエリートだ。フランスのグラン・ゼコール以上の頭の良さだろう。彼らなら世界中のエリートと戦っていける。しかし、彼らは大学卒業後、3割は医者の仕事をせず、彼らの通っていた鉄緑会という塾の講師になる。医学部は医者を作る職業訓練校なので、彼の想像していた知性で金を儲ける仕事にはつけないことに失望するのだ。
東大法学部を主席で卒業して弁護士になり、ハーバードでニューヨーク州の弁護士資格をとった女性やハーバードとジュリアート音楽院を主席で卒業した女性はテレビのコメンテーターをしている。海外の大学に留学するのも大変な努力ととんでもない費用がかかるが、彼らの頭脳をまったく生かしきれていない」
私:「何故なのですか。それだけの頭の良さを持ちながら生かしきれていないのは」
老人:「昔なら頭の良さに人々は感激してくれるから、高い地位について金儲けができたかもしれないが、俺のような頭の悪い人間もスマホを駆使すればいろんなことができる。つまり、そういう頭のいい人を自分の延長線上で、理解できるようになったのだ」
私:「なるほど。昔なら60キロもある力石を持ち上げる人に恐れを抱いたが、フォークリフトのある世界に住んでいると、それがどうしたという感じなのですね」
老人:「難しい試験を通るには大変な努力と金がかかる。しかも試験に通るとは限らない。あまりにもリスキーな投資と考えた方がいい。そもそも日本では資格者が増えているが、人口の急速な減少から医者でも飯が食え無くなると言われている。だから知識だけで金を儲けるのは極めて難しい。
資格で金を稼ぐことは不可能だ。資格が水増しされているからだ。
ノウハウという知識
私:「では、どうすればいいのですか」
老人:「入試は、既存の知識を問う試験だ。そういった知識ではなく、経験による知識、つまりノウハウを学ぶことが重要だ。ノウハウは試験には出ない。経験則だからだ。だから金をかけて学ぶ必要もない」
私:「経験則を教える学校はないわけですね。どうしたら教えてもらえるのですか」
老人:「フレンチの三國シェフを知っているだろう。北海道の極貧の農家にうまれた。幼い頃、米問屋に住み込みで働いている時、ハンバーグを出してもらった。その味に感動した三國は札幌グランドホテルのハンバーグは比較にならないほど美味しいと聞き、就職したいと頼みに出かける。対応した職員は三國の獲物を狙うような目の輝きに恐怖さえ感じたという。アルバイトとして使ってみると、ともかく人の嫌がる鍋洗いを他の人の分まで徹底的にする。体力のある限り働く真面目さに感激して帝国ホテルを紹介する。そしてフランスの三つ星レストランでも鍋洗いをしながら貪欲に働く姿を見てフランスの有名なシェフたちも彼にフレンチのノウハウを伝授していく」
私:「なるほど。溢れる情熱と生真面目さがあれば、自分のノウハウを教えたいと思う人がいるのですね」
老人:「俺もそういう経験をしたことがある。幸せは人が運んでくるものだということを忘れてはいけない」
必ず自営業者になること
私:「私も人に対して誠実であるように努めます」
老人:「知識だけでも金持ちになるのは、日本では不可能だ。また税制の問題から考えてサラリーマンで金持ちになるのも不可能だ。ノウハウというのは、どんな仕事であれ手順というプロセスを含んでいるから手作業の部分がある。この知識だけでないところがこの仕事の強みだ。自分で会社を作り、奥さんを専務にし、息子を副社長にするなどして給料をもらい、会社で仕事に使うスマホや車代を経費で落とせばいい。そうすると、定年もないので財産をつくれるのだろう」
- 第60話「どんな知識を持っていると金持ちになれるのか?」
- 2023年11月10日
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