第304回「200床の病院を500万円で買ってくれないか」
親戚の医者は勤めている病院の理事長から急に声をかけられた。「この病院を500万で買ってくれないか」親戚の医者は昔から勤めていて、手術の腕がいいから病院の売り上げに貢献してきた。
だが立場は院長ではなく、タダの診療部長だ。「騙されやすいと思って声をかけたのだろうか?」と思った。無論、買うはずもない。200床の総合病院がそんな値段のわけがないからだ。
慢性疾患指導管理料
血圧の患者さんを診察すると、慢性疾患指導管理料という項目があり、結構な費用を稼げる(おおよそ1カ月に2,300円)ことができた。こういう項目が作られたのには理由がある。薬を出すばかりではなく、運動指導、減塩指導、体重管理をするように患者さんを毎月、指導しなさいということだった。
これが廃止される。そうなると大変な痛手だ。そこで理事長から頻回に心電図検査、血液検査をして売り上げを伸ばせと圧力がかかっていた。
血圧は130/80以下は正常か?
この130/80の定義だと、高血圧になるのは45歳で3分の2の国民が高血圧になってしまう。130/80の基準が発表された時、多くの医者は製薬会社の罠だと感じた。高齢者では150/100でも普通だ。
高血圧は症状のない病気だから基準を下げるだけで薬を出す対象者がものすごく増える。血圧を下げ過ぎると血管が詰まって脳梗塞になる危険が高まることも多いからケースバイケースで判断する必要がある。
最近になって分かったことがある。製薬会社から血圧に関する多額の研究費が出ていた。こういった研究費は本来禁止されるべきものだった。【現在、高齢者の基準は150/100に変更された】
知人の看護師は30歳後半で病院から消化器内科のクリニックに転職した。夜勤が辛くなってきたからだ。
ある日、突然、院長から「循環器科の先生にクリニックを売った。ブローカーを通じての売買なので、相手のことは知らない」と聞かされた。そうなると、循環器の先生は看護師を連れてくる。小さなクリニックに消化器専門の看護師は要らないからから、その看護師は解雇されるに違いない。
医療業界の2025年問題
クリニック、病院、歯科医院の倒産が増えてきた。2025年になると団塊の世代がすべて後期高齢者になる。そうなると治療ではなく、介護が中心になる。つまり、医療対象者が大幅に減ってくる中で、医者や看護師が余ってくる。
医師会も10年後から医者や看護師が余り出してくると予想している。こういった事態は他の産業と同じで、後継者がいないということだ。
安い費用で十分な治療が受けられるという日本の保険制度は崩壊してしまった。これからは健康保険料が非常に高い値段になっていくに違いない。
- 第304回「200床の病院を500万円で買ってくれないか」
- 2024年06月25日
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