第280回「電動キックボードの評価」
免許返納に原付免許を含むべきではない
2023年8月から電動キックボードが16歳以上なら免許なしで乗ることができるようになった。歩道を通る時は時速6キロ(速足の速度)、車道は時速20キロ(マラソンのスピード)で走行できる。
種類 | ![]() |
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---|---|---|
免許 | 不要(16歳以上) | 法令試験のみ。実技なし |
走行場所 | 車道と歩道 | 車道 |
スピード | 6キロから20キロ | 30キロ |
ヘルメット | 努力義務 | 必ず着用 |
不法行為 | 処罰をするのが難しい | 免許取り消しもできる |
経済的メリット | 小さい | 大きい |
電動キックボードはアメリカのいくつかの州、さらにドイツやイギリスで使われているが、世界的に広く使われているわけではない。50cc原付は車道を走る時、違法駐車の車があっても流れに乗って回避できるが、電動キックボードは20キロしか出ないから危険だ。
日本は自転車が猛スピードで歩道を走るから、自転車による事故が多い。
50cc免許は返納不要に含まれないようすべきだ
日本の事情からすると、50cc原付は車道を走ることが義務付けられていて、車道に違法駐車がある場合も、追い越し車線に出て流れに乗って車をやり過ごすことができて安全だ。原付は法令試験が義務付けられているので運転者は交通法規にも詳しい。違反すれば免許を取り上げることもできる。
一方の電動アシストキックボードの運転者は、法律を学ぶ機会がない。
電動キックボードはちょっとした買い物に使うにはとても便利だし、駐車スペースにも困らないから玄関の中にしまっておくこともできる。移動手段は多岐に渡るほうがいい。
買い物難民・病院への通院難民の出現
人口の3分の1が65歳以上で急速な老齢化が進む中で、地方では買い物難民や病院に通院できない通院難民が出現している。
歩道を走れる時速6キロのセニアカー(シニアカー、電動カート)や、時速20キロの電動キックボードでは遠くまで行くことができない。そういう時に時速30キロまで出せる原付ほどありがたいものはない。
市町村では巡回バスを出してこれらの難民対策をしているところもあるが、財政がいつまでももたないことは明らかだ。こういった事情から、免許返納のときには原付免許は返納しないようにすればいいのではないかと思う。実際に原付免許では実技は省略されているのだから。
老人になると反射神経も悪くなり、視野も狭くなって運転が危なくなる。しかし、歳をとると車などの移動手段も大切になる。車より50ccの原付のほうが他人を傷つける可能性が低く、また駐車場や車検の費用もかからずに維持できる。日本の原付免許は良くできた免許制度なので、これを生かさない手はない。
池袋の暴走事件から上級国民という言葉が生まれた
87歳の飯塚被告が9人を巻き巻き込む死亡事故を起こしながら、車に欠陥があると主張した事件だ。
これを機に警察庁は免許返納を勧めるべく、各地方自治体は金品をくばったりして免許返納を強力に推し進めている。
しかし、そういったことを指導している警察庁の役人も退職すれば65歳以上の老人になり、明日は我が身ということを肝に銘じて欲しい。
車に比べ50ccバイクは危険度の低い乗り物で暴走する危険も少ない。日本が貧しくなる中で、自分の身は自分で守るという意味からも50cc以下の原付、マイクロカーを含めて免許返納をしない法律を作って欲しい。50cc原付には3輪車もあり、マイクロカーは雨の日にも乗れる。
どんな乗り物も危険をはらんでいるのは確かだが、リスクとメリットをどう考えるかが大切だと思う。
- (要点)
- 日本は自転車が歩道を走るのが常識になっている。道路は自転車が走れるように整備されていない。
- 歩行者と自転車を分けるには50ccの原付に車道を走らせるのが安全だ。
- 車と違い、50ccの原付は人を傷つける大きな事故を起こしにくい。
- 原付の免許保持者は法規を学んでいるが、電動キックボードの運転者は学んでいない。
- 日本の経済状況を考えると、50cc以下の乗り物を免許返納に含むべきではない。
- 第280回「電動キックボードの評価」
- 2023年09月25日
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