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香杏舎ノート

第211回「運動しすぎて筋肉が痩せた」

71歳の男性が1年ぶりに訪ねてきた。久しぶりに会うと日に焼けて少し痩せた感じがした。

「少し痩せられましたか?」と言うと、嬉しそうに「2.5キロ痩せました。」と言う。
少しやつれた感じがしたので「どうしたのですか?」と聞いた。すると「山登りの好きな先輩から富士山に一緒に登ろうと言われ一生懸命鍛えてきた。週に3回ジムとプールで鍛えると共にゴルフやテニスをしている。ただ最近、腰が痛くて困っている。」と言う。

寝腰(ねごし)

トレーニングどんな腰痛かというと、朝起きた時に腰が痛くて、イテテと言いながら、動かしていくと痛みが取れてしまう。

ソファーに長く座っていても立つときに痛いが、動かしているうちに取れてしまう。私は「それは、寝腰というのですよ。漢方がよく効きますが、ちょっと見せてください。」そう言って体を触ると随分筋肉が痩せてしまっている。

本人は脂肪が痩せ、筋肉が発達して締まりが良くなったので2.5キロ痩せたと思い込んでいたのだが、そうではなく筋肉も痩せて硬くなっていた。

「最近、ご飯が食べれないのでは?」と聞くと、
「食欲が落ちています。歳のせいかもしれない。」と言う。

若い人でも背中が凝って食欲が落ちてしまうことはある。
昔、プロ野球のスカウトが言っていた言葉を思い出した。
「才能があっても体が細い奴はスカウトしない。太ってる奴は運動で締めていくことができるが、細いやつは筋肉をつけるのが難しく、鍛えすぎると体が凝って飯が食べれなくなって、また痩せてしまう。」

もともとこの人はしっかりした体をしていた。だからこれだけのハードなトレーニングを続けられた。だが、歳をとって食欲が落ちる時期に、あまりにハードなトレーニングを行ったために食欲が落ち込んでしまった。
食べずに運動すれば脂肪も筋肉も痩せてしまう。年老いてから筋肉が痩せるとそれを補うのがなかなか難しい。

こういうタイプの人は真面目だ。この人も自己克己していくタイプだから銀行マンとして出世もした。

どうしてジムに行くの?

運動には燃焼系の運動と筋力系の運動がある。
山を登るためには重いリュックを背負って歩くという筋力系のトレーニングも必要だが、中心は燃焼の運動だ。もし高い山に登るためのトレーニングをするのだったらジムにはいかず、まずは練習として低い山を登ればいい。
山に登っていい汗をかき、美しい風景でも見れば、山が好きになるだろう。

私は「山登りで体を鍛える方が実践的です。山登りは歩幅を小さくして歩きます。実際に山に登るとそういったこともわかりますし、歩き方のペース配分もわかります。ジムでの筋肉トレーニングは非常に特殊な運動方法でお勧めできません。」そう説明した。

私も経験があるのだがジムで筋肉を鍛えると、確かにモリモリ筋肉がついてくる。しかし止めると、すぐに膨らんだ風船がしぼむように筋肉がなくなってしまう。

ゴルフやテニス、登山といったスポーツは楽しみながら体を鍛えることができる。こういったスポーツを長く楽しむためにジムを利用するのはいいが、ジムを経験のないスポーツの準備として用いてはいけないと私は思う。

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