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香杏舎ノート

第118回「宮古島とハワイ」

私が初めて沖縄に出かけたのはウコンの調査のためだった。2月初旬の寒い日、ダウンジャケットを着こんで伊丹空港から飛行機に乗り込んだ。空路2時間、那覇までは東京に新幹線で行くより時間がかからない。空港に降り立つと、ガラス窓を通して差し込む沖縄の太陽がまぶしい。上着を脱ぎ、セーターも脱いでシャツ一枚になった。調査の足としてレンタカーを借りると、クーラーが作動している。同じ日本国内なのにずいぶんと温度が違う。

那覇に一泊して調査を終えると海に行った。五月晴れのような気候の中、コバルトブルーの海を眺めていると、体の緊張感が抜けていくのが感じられた。それからというもの毎年、正月休みには沖縄に出かけるようになった。石垣島、宮古島などに出かけ、最終的に宮古島に行くようになった。宮古島は空港からホテルまでのアクセスがいい。空港からホテルまでタクシーで15分、ホテルのすぐ前には青く澄んだ海があり、東洋一という白い砂浜が7キロも続いている。敷地内の芝生の庭園にはパターゴルフやアーチェリー場、テニスコート、自転車の周遊道路がある。

自転車の練習

当時、小学生だった娘は自転車に乗ることができなかった。自宅近くの公園で自転車の練習をしたことはあるが、都会地ではゆっくり練習できるスペースがない。そこで自転車を借り、勝手に遊ばせていると、1日でなんとか自転車に乗ることができるようになった。一応乗れるようになると、今度は親子で自転車を借り、ホテルの隣に広がる防風林の中の自転車専用道路を走っているうちに完璧に乗れるようになった。

私はホテルに着くと本を持って、海を眺めに行く。砂浜に座って潮騒を聞きながら海を眺め、飽きたら本を読み、それにも飽きたら波打ち際を歩く。歩き疲れて砂浜で寝込んでしまうこともある。そんな時間を過ごすのが楽しい。東京や大阪2~3時間でいけるから、短い休みでも十分に楽しむことができる。

ハワイ

世の中にはハワイ好きという人が多い。何十回も行っている人もいる。ハワイはそんなにいいのかと興味をもった。飛行機が苦手な私は遠くへ出かけたことがない。海辺のリゾートではグアム島とバリ島にいったことがある。バリ島は物売りに囲まれて困った経験があるし、グアム島は近いけれど田舎だ。皆が絶賛するハワイはどうなのか、行ってみたくなった。飛行機に長く乗る恐怖心から、ビジネスクラスで行ったから大変な費用がかかった。

旅行先はオアフ島とマウイ島。確かにいい。清々しい気候が続く。日陰は涼しくさわやか、日向は太陽の光が刺すように眩しい。特にマウイがいい。何度も行く人の気持ちが分かる。ただ、フライトに時間がかかる。飛行機に乗っている間は8時間ほどだが入国、出国、ホテルまでの送迎を入れると、丸1日かかる。だから旅行を終えて帰ってくると、ぐったり疲れてしまった。

8日間のスケジュールで行ったが、ゆっくりするには不十分だ。最低でも2~3週間の休みが取れる人には最高だろう。そして英語がうまいとなおさらいい。ワイキキのトロリーバスに乗っていると、「このバスには日本人しか乗っていないから、どうせ僕のガイドなど聞いていない」とガイド兼運転手が言う。私がその運転手に質問すると、彼は急に早口で喋りだした。早すぎて私には十分には聞き取れなかった。だから英語が上手ければ、もっと楽しいと思う。それと確かにハワイは魅力的だが、治安の問題から宮古島のようにワイキキで子どもを勝手に遊ばせることはできない。

最近、宮古島のよさがハワイ好きの芸能人にも見直されてきたようだ。飛行機に乗りさえすれば3時間でホテルに着く。2泊で十分に楽しい気分になるから、わざわざ休みを取らなくても済む。治安もいい。シーズンオフなら4~5万で行ける。ダイビングも楽しめる。いわゆる安、近、短なのだ。ただし、夏休みに行くのなら注意が必要だ。台風で飛行機が飛ばないことが多いのだ。それと正月は寒いこともある。私はいわゆるビーチハンターではないので、タヒチやモルジブと比較して述べる能力はない。

私の感想

自転車で宮古島を走っていると、小学生くらいの地元の子供たちが2~3人、自転車に乗り、釣竿を持って追い越していった。その際、子供の一人が「何処から来たの?」と言う。「神戸」と答えると、「どうしてこんな所に来たの?」という。確かにゲームセンターもデパートもない場所での生活は退屈なのだろう。

考えてみると、旅行は非日常だから楽しい。非日常が日常になれば刺激はなくなる。それはハワイでも同じだ。余りに熱心に非日常を追い求めれば、それは退屈な日常となって自分に返ってくる。日常の中に非日常をいかにうまく取り込んでいくか、それもお金をかけずに楽しめるかは工夫と創造力にかかっている。

9月上旬、六甲山を車で走ってみた。神戸市内の気温は車の温度計で33℃だが山の上は24℃。9度も温度が違う。これほど違えば非日常を感じる。市内から40分、身近な場所にも非日常はあるのだと思った。

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