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夢の中の老人

第52話「日本人の給料が低いのには明確な理由がある」

最近、マスコミでは日本人の給料の低さが常に話題になっている。日本の給与は韓国より低くなってしまった。
何故なのだろう?そう思っていると、夢の中に老人が出てきて一気に語り始めた。

国民一人あたりの実質GDP(国民一人あたりの稼ぎ)でみると、日本の順位は28位、韓国は24位で一人当たりの稼ぎの少ない日本の給与が低いのは当たり前の結果といえる。

1人当たりのGDP1人当たりGDP順位収入順位
日本41,000ドル28位24位
韓国42,600ドル24位20位

人口が多いだけの理由で日本は世界第三位の経済大国

経済をどうとらえるかはとても難しいが、確かなのは一人当たりのGDPが低いのに日本が世界第3位の地位にいるのは単に人口が多いからだ。中国の一人当たりのGDPは17,200ドルで72位、人が多いから中国は世界第2位の経済大国の扱いを受けている。日本は経済大国との認識を日本人は持っているが、その実態は単に人口が多いに過ぎない。

国全体のGDP1人当たりのGDP1人当たりGDP順位人口
中国世界2位17,200ドル72位14億人
日本世界3位41,000ドル28位1億2580万人
韓国世界10位42,600ドル24位5178万人

日本の労働生産性が低いのは人が安いから

バブルが崩壊して景気が悪くなった時、日本政府は人件費を削減するために派遣社員を作った。さらにパートやアルバイトなどの非正規労働を増やして人件費を節約するための方法を選んだ。これらの賃金の安い社員は日本の労働者の40パーセントを占めるまでになった。
給料を下げれば一時的に不況をしのげても従業員の意欲が落ちてしまうし、経営者は人が安ければ労働生産性を真剣に考えなくなる。

生産性が悪いと言われているサービス業、例えば、レストランはすべてネットの予約制にする。そうすれば人件費を節約でき、食材の無駄も省ける。
会社でも仕事の効率化のため会議の資料はすべて事前にメールで配り、意見調整をしておき、会議で最後の決定をするようにしておければ長い時間の会議を減らすことができる。また社員は事前に仕事のスケジュールを決めてネットで上司に送るなどすれば、勤務時間の効率を高めることができる。

つまりIT技術を使えば仕事の効率を図ることが出来るのである。

IT革命による新しい技術を積極的に取り入れて効率化を図る

世の中に新しい技術が出てくると、人々はそれを利用して人件費を削減しようとしてきた。
1800年代初頭に発明された蒸気機関は、運動エネルギーを作り出す機械で紡績機に応用された。当時のイギリス人の労働者の給与はとても高かったから人件費を削減するために紡績機が盛んに使われたが、インドでは普及しなかった。その理由はインドの労働者の給与がとても安かったから機械を入れるメリットがなかったからだ。

日本は人件費の高騰に悩み、紡績機の例に例えるならイギリス人の給与をインド人並みに引き下げること、つまり非正規労働者を作ることで問題を解決しようとした。いっぽうの欧米は給料を下げるのではなく、新しい技術、つまりITを利用して人件費の高騰に歯止めをかけようとした。

IT革命で効率化を図り新しい仕事を作り出していく

1995年Windows95が発売されると、欧米ではインターネットやメール、エクセル、テレビ電話をフルに使って業務の効率化を図っていった。

1995年アマゾンをベゾスが、2004年マーク・ザッカーバーグがフェイスブックを創設し、2003年イーロン・マスクはテスラを作った。テスラは衛星通信でウクライナを助けていることは有名だが、1975年頃に創設されたマイクロソフトや1976年のアップルやなど老舗のIT産業が多くの雇用を生み、さらに巨大企業へと発展している。

創立年社名特徴
1975年Microsoftビジネス用のPCソフト
1976年Apple携帯電話で優位
1995年Amazon売り上げの中心はレンタルサーバー
1998年Google検索エンジン
2003年Tesla衛星通信など
2004年Facebookソーシャルネットワークサービス

GAFAGoogle Amazon Facebook Apple)

それだけではない。ウーバーはITによる配車サービスを展開して成功を収めている。つまり、ネットで省力化、効率化を図ることで収益を伸ばし、それがさらなる雇用を生み出しているのである。

何故、日本人はITが苦手なのか?

日本では政府の感染アプリのCOCOAやマイナンバーカードの失敗、大企業でもセブンペイの失敗や、単に現金自動支払機の不具合が19年も続くみずほ銀行の失敗などをみると、政府や大企業に勤める超エリート層の知力低下に驚く。

日本の政府の役人は国家公務員試験に合格したエリートだし、大手銀行などに勤める人も一流企業に勤めるエリートだ。何故、日本のエリートがIT革命という産業革命を理解できずに、何故、その波に乗り遅れてしまったのか。
それはエリートを選ぶシステムに欠陥があるとしか言いようがない。

歴史家の目で原因を考えてみる

過去の産業革命をうまく取り入れられずに滅んだ例はないかと探すと、中国の清朝(1644-1912年)がある。清朝衰退の原因は科挙制度による硬直した官僚制度だった。官僚は四書五経をそらんじられても科学技術に興味がなく、それでも自分たちは優秀だと信じていた。
その結果、産業革命の成果を取り入れられずに衰退した。そして清朝の衰退とともに科挙制度も消滅した。

科挙制度

身分で官僚になれるのではなく、試験で登用されるシステム。隋の時代から清の時代まで1300年続いた官僚登用試験。誰でも受験できたが、競争倍率は3,000倍になることもあった。

試験は四書五経をそらんじる記憶力を問うものであった。パソコンがなく、竹簡や紙で文字を残す時代にはすぐれた記憶力はとても貴重な財産だった。しかし記憶力に優れた官僚は、世間知らずで産業革命も起こらずに欧米列強に領土を取られていった。

東大王決定戦

テレビでは現役の東大生が本来の勉強もせずにテレビに出演して、お笑い芸人とつまらない記憶力の競争を広げている。日本は記憶力だけのエリートを選んできたので、科挙制度の役人のように記憶だけが自慢の集まりになってしまった。

彼らのエリート意識は大変なものだが、国家公務員やエリートサラリ―マンも仕事を辞めたら、彼らの価値はなくなることを彼ら自身もよく知っている。

多様な人材を選ぶには記憶だけの試験を止め、通年採用にして様々な経験のある人を採用していく必要がある。そうでないと日本は滅んでしまうだろう。

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