第263回「内臓疾患を治す手技を残すために」
致死性の肝炎が手技で治った
知り合いの医者が亜急性肝炎で死にかけていた。だが民間治療を受けることで完全に治った。その治療は独特のものだった。
背骨の両側に胸から腰まで灸をすえる。そして最後に首をコッキと捻って治療は終わった。灸は365あるツボの中から病気に効くと思われるツボを選んで治療するのが普通だ。また首を捻るというのはカイロプラクティックの手技で日本の伝統的なあん摩や鍼灸とは違う。
それがどうして内臓疾患に効くのか。その時から私の民間治療の研究が始まった。
灸で背骨を真っ直ぐにする
大阪の道修町に灸だけで内臓疾患を治す鍼灸師がいるという。見学に行くと灸で背骨が真っ直ぐになるのが分かったという。つまり灸は背骨を真っ直ぐにするための手技として使われていたのだ。
ただし、灸は火傷の跡が残るので、今はほとんど使われていない。
背骨をまっすぐにする治療 オステオパシーとカイロプラクティック
背骨をまっすぐにする、つまり骨格の歪みを治すことで整形外科的な病気を含め内臓疾患も治すという治療法は、1900年頃アメリカで発明された。ふたつの流派がある。カイロプラクティックとオステオパシーだ。
カイロプラクティックはアメリカに4年制の大学が19校あり、施術を教えている。
いっぽうオステオパシーは医学部に骨格を治す治療を教える教科がついたもので、全米に6つの医科大学がある。
背骨は疲労や姿勢により筋肉が固くなり、それに引っ張られて骨が歪んでしまう。その骨の位置を治すのがカイロプラクティックとオステオパシーだ。カイロプラクティックはアメリカでは大学を卒業しても3割くらいの人しか開業していないという。
背骨をまっすぐにしたらどうして内臓疾患が治るのか?
内臓に分布する神経は交感神経と迷走神経だ。迷走神経は脳幹から出て臓器に分布しているので触ることができないが、交感神経は運動神経や感覚神経と同じように背骨の間から出て内臓に分布している。
だから背骨に挟まれて坐骨神経痛が起るように、交感神経が背骨に挟まれて機能障害をおこしてくることは理解できる。ただし、背骨をまっすぐにするのはとても難しい。
T4(胸椎の4番)が歪むと不整脈や狭心症が起こる。これは背骨を矯正することで治せる。
日本での骨格治療
カイロプラクティックとオステオパシーは1920年頃に日本に伝わり、日本のあん摩と融合して、硬くなった筋肉をもみほぐしてから骨を正常な場所に押し込むという方法が発達した。これを正體術という。
私にこの方法を教えてくれた諏訪長生館の丸茂真先生は大変優れたマッサージ師(正體師)で、100人以上の弟子を育てた。
私の治療はオステオパシー
私はオステオパシーの大家である古賀正秀先生に習う機会に恵まれた。古賀正秀先生は1920年頃、オステオパシーをアメリカ人の宣教師(医師)から直接習った。だから彼の治療法にはあん摩の要素はなく、関節の角度を微妙に調整して骨を正確に元あった場所に押し込んで治していく。極めて繊細で危険のない治療法だ。
古賀正秀先生は晩年にアメリカのオステオパシー医科大学の寄附講座の教授になった人物だから、最高の治療師に出会うことができた。
私は古賀先生の弟子から治療手技を説明したビデオ12本(昭和53年に撮影)をいただいた。その弟子はオステオパシーの技術を私に継いで欲しいと、金庫にしまっていた秘蔵のビデオを多くの弟子や医師に渡さず私に託したのだった。
内臓疾患を治せるのは私のクリニック以外いない

膠原病患者を治療中の古賀先生
現在、古賀先生や丸茂先生の弟子にも内臓疾患を治せる治療師はいない。理由は明白で、誰もマッサージ師に内臓疾患を治してくれとは行かないからだ。患者が来なければ、腕のあげようがない。
私のクリニックは漢方クリニックだから内臓疾患の患者さんが多い。私は従業員に何年もかけて不整脈、膵炎、リウマチなどの治療法を教えてきたから相当に上手くなおせる。
無論、整形外科的な疾患も上手に治せるようになる。
現在、医者も患者さんも手技で内臓疾患が治るとは思っていない。だから私の技術を知っているのは、私の患者と弟子しかいない。私が仕事をやめたら何十年もかけて作ってきた私の技術も失われてしまう。この技術を残すためには弟子が内臓疾患を治せる技術を持っているのだと広く世間に知ってもらう必要がある。
弟子は私ほど上手ではなくとも、何年も学ぶうちに様々な内臓疾患を治せるようになっている。だから弟子たちにはクリニックに勤めながら空いた時間をフリーランスとして、内臓疾患を治す治療を広めるように勧めている。
- 第263回「内臓疾患を治す手技を残すために」
- 2023年01月20日
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