第182回「牛の胆石は薬として使われる」
牛にも胆石持ちがいる。胆石のある牛は千頭に一頭だが、この胆石を中国人は紀元前から薬として使ってきた。
古代の中国人は、よくぞこんなものまで薬として使おうと思ったものだ。牛を解体していたら、石みたいなものが胆嚢の中から出てきても、普通ならこれが薬になるとは誰も思わないだろう。
胆石は牛黄(ごおう)と呼ばれ、1g の値段は金の何倍もする。
牛黄は成分的にはビリルビンがほとんどだから、頭の中で考えると効きそうにもない。だが効かないものにそんな高い値段はつかない。動物では馬や犬にも胆石があり、多分豚にもあると思うのだが、薬としては使われない。他の動物の物としては熊胆(ゆうたん)がある。熊の胆嚢で、胆汁が漏れないように胆嚢の口を紐で縛り乾燥させたものだ。やはり金よりはるかに高い。
高い薬は使いにくい
高い薬を買えるのはお金持ちに限られる。だから使いにくい。
最近は西洋医学の薬も高いものが多くなってきたし、MRIの検査も高いから昔ほど高い漢方薬も高く感じられなくなってきた。
だが、牛黄は物によるが一服1200円くらいする。希少生薬だからブームになると値段が急に高くなることもある。
知り合いの薬剤師は有名進学校に通う息子に毎日、耳かき一杯ほどの牛黄を飲ませていた。牛黄の投与量は 0.1g 前後でそれが通常の投与量だ。牛黄で疲れを取り、集中力を高めたいためだが、その甲斐あってか、東大に合格した。毎日飲んでとても元気になったという人もいる。
老人性痴呆を予防するとも言われるが、詳しいことは分からない。お金があれば試してみるのも悪くはない。
私のところでは品質の良い牛黄をまとめ買いしている。石の形をしていないものは良質な物か分からないので、結石の形の物をすり鉢で粉にして分包している。世界ではオーストラリア産が一番いい物として知られている。
牛黄は飲む量が少ないので、他の漢方薬と違い、誰でも服用できる。体力が落ちてなにやら疲れやすいという高齢の人に出すととても喜ばれることがある。
牛黄は製品として売られていて、薬局などでも買える。ドリンク剤に入っていることもあるが、成分として牛黄と書いてあっても牛黄がどんなものか知らない人も多いのだろうと思う。
- 第182回「牛の胆石は薬として使われる」
- 2017年11月20日
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