第181回「CNN1000時間マラソン」
英語を上達するにはCNNを1000時間聞いてみたらどうだろう?
そう思いついた背景について説明してみたい。
第2時世界大戦の時、アメリカ兵は世界中に進駐する必要に迫られた。その時、兵士にその地域の言葉を千時間勉強させたという。千時間勉強すれば交通整理をしたり、買い物をしたりする基礎的な活動が出来たという。
1日10時間、3カ月で勉強させた。そこで千時間英語を聞いてどうなるか試してみようと思った。
英語を勉強する前提として幾つかのことを明記しておきたい。
- (1) 英語を聞くだけで上手く話せるという仮定の下で勉強する。
- (2) 私は漢方医なので日常で英語を使うことはまったくないし、試験を受けることもないので、勉強の仕方を工夫する必要がある。勉強の動機はどのくらい英語が上手くなるかという知的興味だけだ。
勉強の仕方についてはのちほど詳しく説明する。
2008年1月7日の七草粥の日からスタートを切った。終わったのは2011年2月23日であった。計画では1日1時間で3年を見込んでいた。
旅行でPC(その時,スマホはなかった。)の無い場所に行ったり、忙しくて聞けない日もあるだろう。だから月に28日聞けば3年で終わると予想していた。しかし、病気をしたりして1ヶ月少し遅れての達成となった。
1時間聞いた日はカレンダーに印をつけていった。○×では面白くないので、動物を描いたり、ヌードを描いたりしていた。この月は何故か人の顔を描いていた。この月は一度も休まなかった。
どの程度の英語力がついたか?
- (1) キャスターの英語は内容にもよるがすべて分かる。専門分野の単語が分からないこともあるが概ね分かるといっていい。
- (2) 専門家同士の会話も大体分かる。
- (3) 一般市民の会話が分かりにくい。特に映画の会話が分かりにくい。950時間を超える頃から時々会話のフレーズが耳に入ってくるようになった。
- (4) 900時間を超える頃から英語の発音が少し上手くなったのを自覚できるようになった。
- (5) 英語のテロップを読むスピードが遅かったが、800時間を超える頃からずいぶんましになった。CNNを聞くのが何の苦痛もなくなったので、テレビがつまらないときに時間つぶしに聞けるようになった。
- (6) 会話がうまくなった。1000時間マラソンを始める前にアメリカ人を吉兆に招待した時は会話の 80% しか喋れなかったが、1000時間聞いたあとは、98% くらいは会話が出来た。会話を勉強しなくても聞くだけで会話ができるようになることはまちがいない。
発達段階の説明
- (1) 最初の1ヶ月は本当につらかった。30分座っていることが苦痛でしかなかった。ヨーグルトにジャムを入れて舐めながら聞いた。そういうことが2-3カ月は続いた。
職場で聞こうと思ったりもしたが、少しでも日本語が聞こえてくるだけでまったく英語が聞こえなくなってしまう。イヤホンで聞くボリュームを大きくしておかないと雑音が入ることで、すぐに英語が分からなくなってしまう。 - (2) 300時間ほどで仕事の合間にも聞けるようになった。
- (3) 350時間ほど聞くと、英語を聞き始めて20分ほどすると頭が英語に切り替わってスムーズに聞けるようになってきた。この現象がいつまで続いたかは明瞭でないが、500-600時間もするといつでも聞き取れるようになった。
- (4) 500時間くらいのときに上手にならない苛立ちを感じた。
- (5) 700時間ほどで1時間続けて聞けるようになった。
- (6) 800時間くらいになるとニュースのボリュームが足らないので、BBCやABCを利用して聞いた。
コツと結論
- (1) 興味のないコンテンツはさっさと切り上げて次のニュースを聞くこと。
- (2) 初めはつらくても1時間ぐらい聞かないと単語の語彙も増えないし英語に慣れない。ある程度量をこなしていく必要がある。
- (3) 英語が必要な人は留学したほうがいい。会話、文章、質疑応答から学べるボリュームが違うから。
- (4) 法律、医学、工学などは学問によって語彙が違うので専門分野を日本で習ってから留学する方がいい。
英語の知的内容を下げないことが継続のコツ
英語を学ぶ時に英会話教室に行くことはお勧めできない。特に外国人の場合、教師の知的レベルが低いことが多いからだ。
ヒッピーのような生活をしていた人が日本に住んで暮らしのために英会話を教えていることが多い。そんな連中と天気やニュースの話をしてもすぐに興味は無くなってしまう。
英語が困難だからといって、英語の内容を下げると興味が沸かない。知的興味しか原動力にならないのだからできるだけ知的興味をそそる内容を聞かなければ続かない。そういった意味からも英会話教室といった番組を聴取することもお勧めできない。
私はCNNの放送の中で、CNNのストラテジストのファリード・ザカリアが Outliers を書いたマルコム・グラッドウエルと本について会話をしているのを聞いて本を買い求めて楽しく読んだ。また The World Is Flat. や Jared Diamond の Guns, Germs, and Steel も面白かった。
昔のCNNはコマーシャルも少なかったし、今ほど金儲けに走っていなかったからよかったが、今はとても見にくくなった。一番のお勧めは10分間のコマーシャルフリーのCNN Student Newsだろう。高校生をターゲットにしているので、それほど易しいわけではないので安心して聞いて欲しい。
あれから丸6年、私は一切英語を聞いていないので、ずいぶん英語が聞き取れなくなってしまった。英語能力を戻すためには多分、1ヶ月くらい英語を聞いて英語の頭を呼び戻す必要があるのだろう。語学は使っていないとすぐに錆びついてしまう。
私がCNNやBBCを聞かなくなったのには理由がある。コマーシャルが多すぎ、また海外の日本語放送が増えたからだ。知的興味が原動力なのだから、それが無くなれば英語を聴取する必要もなくなる。
最近は the economist も読まなくなった。日本語版が読めるからだ。THE WALL STREET JOURNAL も日本語で読める。そんなわけで今は英語を学ぶ意欲を失っている。
- 第181回「CNN1000時間マラソン」
- 2017年10月20日
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