第180回「週刊新潮、漢方薬の副作用の記事について」
最近、週刊新潮が漢方の副作用を取り上げたことから、漢方の副作用について詳しく述べてみたい。
副作用とは薬物を使った場合に治療目的に沿わない、好ましくない作用をいう。
医者が薬を使う場合、薬の好ましい作用である薬効と好ましくない作用、副作用を秤にかけ、たとえ副作用がでる可能性があっても薬効が大きければ薬を使用する。
例えば 抗がん剤
脱毛、胃腸障害、白血球の減少、手足の痺れなどが起こっても抗癌効果がみられると思われれば抗がん剤を使用する。
発がん性のある抗がん剤も多いが、そういうことを十分に医者は理解した上で、患者さんに説明して薬を投与する。
オプシーボと言う高価な抗癌薬は肺がんの 20% にしか効果がない上に7人に1人の割合で重篤な副作用が起こる。それでも医者が投与するのはそれ以外に方法がないからだ。
一般消費者も医者と同じように薬効と副作用を天秤にかけている。
例えば市販の解熱剤を飲む時、副作用の説明も読んだ上で薬を飲む。熱を下げるという薬効が確実であることを知っているから副作用というリスクを承知の上で薬を飲む。例えばバファリンの副作用では極めて稀だが失明して死に至ることもある。
漢方薬は薬物であり、薬効があると同時に副作用もある。新潮の副作用の記事は本物の漢方医なら誰でも知っていることで、私も医学部の講義の時に説明している内容だ。
では何故漢方薬の副作用がこれほど大きな記事として扱われるのだろうか?
それには2つの理由がある。
① 漢方薬には副作用がないと思われていること
生薬は天然自然のものであるから副作用はないと、一般の人や漢方をあまり知らない医者は思っている。
漢方薬の副作用は西洋薬とは比較にならないくらい穏やかで、投薬を中止すれば回復する。記事のような重篤な副作用がおこることは極めてまれであるが、危険があることも承知しておかねばならない。
② 薬効と副作用のバランスから考えて不利益が大きいと思われる場合があること
市販の漢方薬や保険の漢方薬の薬効と副作用を天秤にかけた場合、副作用が非常にマイルドでも薬の効き目がなければ薬を飲む意味はない。
やせ薬としてテレビでも宣伝されている防風通聖散(ボウフウツウショウサン、テレビでは違う名称が使われている。)は、もともと丹毒などに使われた薬でやせ薬ではない。この薬を使用した私の経験から薬を飲んでも痩せない。副作用で肝炎や間質性肺炎が起こる可能性があるとすれば、薬を飲む意味はない。
漢方に習熟した医者や薬剤師が漢方薬を投与すれば、一定の薬効を出すことができ、副作用もほとんど起こらない。また副作用が起こったとしても薬を中断するだけですむことがほとんどだ。西洋薬の副作用と比べれば、漢方が純粋な化学物資ではないだけに副作用はほとんどないと言っていい。
一番良い投与法
私のような漢方医は自由に処方を組めるので、少しでも危険な生薬は省いて処方を組んでいる。別の生薬を入れたりもする。
癌などの重症の患者さんに、どうしても副作用のある生薬が必要になる場合は、治療効果と副作用を天秤にかけることもあるが、私の丸薬にリスクのある生薬は基本的に入っていない。
最後に
肝炎や肺炎を起こすと紹介された黄芩(オウゴン)という生薬、この副作用は30年ぐらい前から起こってきたものだ。ちょうどピーナッツアレルギーやアーモンドアレルギーで人が死んでしまうことが報告されてきた時期に一致するようだ。
我々の体が変化してアレルギー的な副作用が出てきているのだろう。
山梔子による腸管動脈硬化症は、5年以上毎日飲んだときに起こる可能性があると4年前に報告された。
新しく起こってくる副作用に十分安心して対応するためには、処方が自由に組める漢方の専門家の方が対応しやすいことは言うまでもない。
- 第180回「週刊新潮、漢方薬の副作用の記事について」
- 2017年09月20日
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