第169回「めまい、動悸とパニック障害」
夜中の3時頃に目が覚めると天井が回って見えた。気持ちが悪いので、目をつぶって壁に寄りかかりながら立ち上がった。そして目を開けると、眼振が起こっていることが分った。
左から右へと繰り返して光景が流れていく。立っていられなくて再び寝ころんだ。
生まれて初めての経験だった。しばらく休んでいて目を開けるとまだ続いている。明日は仕事にいけるのだろうか?何時まで続くのだろうか?急に不安になった。目を半分つむりながらトイレに行って、再び寝床に入った。
めまいの治し方を知っている私でさえ怖いのだから、めまいを起こす人がパニック障害になってもおかしくはない。
パニック障害とは
パニック障害は突然におこる動悸やめまいなどが原因で、強い不安や恐怖感を感じる病気だ。
西洋医学では心の病気として治療しているが、実際にはそうではない。突然にめまいや動悸といった身体的な症状が出れば、誰でも私のように不安になり、電車に乗ることや、人混みでそんな症状がおこることを恐れるようになるのは当たり前だ。
私は何故めまいになったのか、どんなことでめまいになるのかを説明していこう。
めまいをおこす大半の人は筋肉の細い女性だ。梅雨の湿度が高くて温度が上昇していく時期や秋雨の頃、気温が下がっていく時期に多い。
温度変化と湿度で首や肩が凝り、骨格が歪むことによって起こる。特に胸鎖乳突筋という首の筋肉のこりが激しい時に起こりやすい。首や肩の筋肉を緩めるだけで多くのめまいは治ってしまう。
私の場合、iPad miniで夏休み中、ずーっと原稿を書いていた。膝の上にiPad miniを置いて書いていたので、無理に首を下に向けた姿勢を取り続けていた。だからかなり肩が凝った。
今年の夏は天気が不順で暑い日があれば急に温度が下がる日もあり、梅雨時のように湿気もあったから寝ている間に急に肩こりがひどくなった。
そんな理由からめまいが起こったに違いない。
翌日、クリニックでかなりきつめのマッサージと整体をしてもらうことで治った。
パニック障害でよく起こる症状として動悸、息苦しさなどがある。これも背中の凝りが原因だ。
動悸と息苦しさ
動悸は左肩の肩甲骨と背骨の間の部分が凝ることによっておこる。
以前、香杏舎ノートの第3回「東洋医学で心臓病を治す」の中で不整脈は肩の凝りからおこり、瀉血で治ることを書いた。20年も前のことだ。
それから鍼、灸などで治療を試み、不整脈は東洋医学的マッサージや整体で良くなることを見つけた。動悸は不整脈といった病気ではないから施術で簡単に治ってしまう。
息苦しさは香杏舎ノートの第2回「過換気症候群」のところで肩こりから来ることを書いた。
人が息を吸う時、横隔膜を下げ、胸を大きく広げて息を吸い込む。もし胸にゴムでてきた帯のようなものを固く巻きつけていたら息が吸いにくいであろうことは、容易に想像できる。
肩や背中が凝るとゴムを胸に巻きつけたような状況になり、息がしにくいからもっと息を吸い込もうと必死になり過呼吸になる。息が出来ない恐怖から冷や汗が出てくる。
つまりパニックの原因であるめまい、息苦しさ、動機などはすべて背中の凝りからくるのだ。
実際にパニックの患者さんをこういった治療で治すことができる。つまりパニック障害は心の病気ではなく、単なる肩こりや背中の凝りが原因だということだ。
どうしてこういった事実が知られていないのか?
これほど重要な治療法が知られていないのには明確な理由がある。昔の漢方医は煎じ薬を調合するだけでなく、鍼灸、瀉血、整体といった漢方的な理学療法も行ってきた。
ところが現在の漢方医で鍼灸などの理学療法が出来る人はほとんどいない。漢方的理学療法は鍼灸師、マッサージ師、柔整師がやることになってしまった。つまり2つの治療法を別の人が担当するようになってしまったのだ。
本当の漢方医なら両方できるようことを目指すべきなのだが、そういう意欲のある医者もいない。
患者さんは過換気やめまいがマッサージで良くなると思っていないからマッサージを受けることがないし、治療する側は患者さんが来ないと腕が上がらず病気は治せない。そういった悪循環の中で治療技術さえも発達しなかった。
私は20年以上前から治療していて、漢方医だからそういった患者さんが多く来られるので腕を上げることが出来た。
- 第169回「めまい、動悸とパニック障害」
- 2016年11月20日
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