第54話「日本が生き残るためにはどうすればいいか」
もし世界で唯一核兵器を持っている超大国が、実際に核爆弾を使って攻めてきたら、攻められた国は無条件降伏以外に選択肢はない。
これが我々が終戦と呼んでいる第2次世界大戦における日本の敗戦の実態だ。
ちなみにアメリカがドイツに核爆弾を使わなかったのは、ドイツが密かに核爆弾を完成させている可能性が否定できなかったからだとハドソン研究所の日高氏は述べている。
アメリカは日本を属国にするために憲法第9条を作った
アメリカは日本を占領して自国の属国にしようと考えた。そこでまずは首都の東京近郊の横田基地や横須賀に軍隊を置き、岩国、沖縄にも軍隊を置いて日本を監視することにした。
次に属国にするための憲法を作った。
日本には他国との交戦権を認めず、軍隊も持たせないという憲法第9条を作った。ただし、他国から攻撃された場合はアメリカが日本を守るという日米安保条約を結んだ。この条約は相互的なものではなく、軍隊を持たない日本を一方的にアメリカが守る形になっている。
地位協定
アメリカの日本に対する属国的支配は今も続いている。
アメリカの基地には日本の法律が及ばない。アメリカ兵が犯罪を犯しても日本の警察に逮捕されることはない。これを地位協定と言う。
第二次大戦での敗戦国のドイツやイタリアにも米軍基地があるが、基地内ではドイツやイタリアの法律が優先されている。つまり日本は今でも敗戦国の中で属国の扱いを受けているのだ。
平和憲法とは
日本は有史以来、初めて外国に占領され、核爆弾という悲惨な兵器を使われた日本人の悔しさは尋常ではない。社会党は国としての自衛権さえ取り上げられた憲法を平和憲法だと呼び、日本は独自の軍隊を持たないので海外から攻撃されないのだという主張を繰り返してきた。
さらにアメリカの核で日本が守られているから安全なのに、核兵器を日本に持ち込ませないという非核3原則を自民党までが主張する精神的錯乱状態に陥ってしまった。
それほど原爆症で苦しむ人々を見てきたわけだが、憲法を改正しないといつまでも属国の地位に甘んじていなければならないのに、国民の多くが憲法改正だけは阻止しようと反対してきた。
零戦は火がつきやすい
核爆弾を作れなかった仁科研究所もそうだが、日本の武器を作る当時の技術はアメリカやドイツ、イギリスに遥かに遅れていた。
第2次大戦の日本の代表的な戦闘機、零戦はイギリスの戦闘機を参考にして堀越さんが運動性能を上げるために操縦士を守っていた装甲板を取り払って作られた。
そうなると、確かに軽いからスピードも運動性能も良くなったが、被弾するとすぐに火がつくので、アメリカ人はゼロファイターではなく、すぐに火がつくという意味で、ゼロライターと呼んでいた。
こういった恥や悔しさ、そして失敗に真摯に向き合わない限り、日本の本当の改革ができないことは言うまでもない。
日本学術会議 軍事研究は絶対にしない
日本の学術会議は日本のトップの研究者が集まる研究機関で、研究についての提言をおこなっている。第2次大戦の経験から【軍事研究は絶対にしない】としている。
しかし、仁科研究所のように核兵器を作れなかったり、火がつきやすい飛行機を作っているようでは困る。
彼らは、政府とは独立した機関との意識を持っているが、イギリスやアメリカのように経済的に独立した機関ではなく公務員だ。会議が推薦した研究者を国が認める形になっているが、任命は国の権利だ。菅首相の時に学術会議が推薦した六人が任命拒否されたと学術会議は腹を立て、「学問の自由が侵された。国は軍事研究をしたいのだ」と騒いだが、彼らの主張には何ら合理的根拠がない。
軍事研究といってもどれが軍事研究かを区別することさえ難しい。日本の知的エリートがこの程度の知性だと思うと、いかにも寂しい。
そもそもアメリカに戦争を仕掛けたのは日本だ
超大国のアメリカに宣戦布告したのは日本だ。
真珠湾攻撃を指揮した山本五十六はハーバード大学に留学していて初めから絶対に勝てない戦争だと分かっていた。
それでも日清、日露戦争に勝って浮かれた軍部と国民に押されて戦争を始めてしまった。戦争を始める時は、どこで妥協できるかを考えて始めなければならない。
戦争について古代ローマの執政官サルスティウス(ユリウス・カエサルの時代)は次のように述べている。
戦争は腰抜けでもはじめられるが、終わらせるのは極めて難しい。終わらせることができるのは勝った国が戦争を止めたいと思った時だけだ。
つまり、日本は戦争を始めるのに何の戦略も戦術も持っていなかったといっていい。
アメリカに占領されたのは幸運だった
日本を属国にしたのが、アメリカで本当に良かった。もしソ連だったらどうだろう。
ソ連のスターリンは自国民を1000万人殺した大粛清を平気でする人物だから、占領した日本人に対して動物以下の扱いをしただろう。
紅衛兵を使って自国民を数百万人から数千万も殺した毛沢東なら日本人をどう扱っただろう。
中国の他民族に対する残虐な行為は現在も続いている。ウイグル族の扱いを見ても分かる。女性に不妊治療をして民族浄化を図る。男性は収容所に入れて強制労働させる。そしてウイグル語を禁止して中国語を強制して国の文化を根底から無くしてしまう。
アメリカは建国400年ほどの若い国家で、無論、他国に侵略されたことはなく、戦後の日本の統治に関しては極めて寛大だった。日本に民主主義を広め、日本人も喜んでそれを受け入れた。
戦後の奇跡的経済発展
戦後はPax Americana (アメリカの平和)と言われるようにアメリカが世界の覇権を握った。アメリカが守っている日本に手出しをする国はなかった。アメリカにとって日本が民主主義の国になってくれれば共産党のソ連や中国の防波堤になるので、日本人の経済的発展にアメリカはあまり口を挟まなかった。だから日本人は自由に経済発展に取り組むことが出来た。
ゴールドマンサックスにいたデービッド・アトキンソンが詳しく分析したところ、日本の国民1人当たりのGDP(稼ぐ力)は当時も、今も世界で25番目くらいで、極めて低い。
では何故GDPを大幅に増やして世界第二位の経済大国になることができたのか。それは労働人口が急激に増えて経済成長するという人口ボーナス以外には考えられない。
何故、日本だけに人口爆発が起こったのか
人口ピラミッド
2013年の時点で、どの年齢層が多いかを示している。日本の場合、60歳から70歳のいわゆる団塊の世代が異様に多いことが分かる。
戦争が終わると、若い兵隊が復員してきて世界中で子供が多く生まれた。いわゆるベビーブームと呼ばれるこの現象は世界中で起こったが、日本には飛び抜けて多くの子供達が生まれた。
2つの理由がある。一つは海洋国だからソ連が側にあってもすぐに戦争になる危険がなかったこと。さらにアメリカが軍隊を置いてくれているおかげで、軍備に回すお金が必要なく、日本人は安心して多くの子供を産むことができた。ドイツでもベビーブームが起こったが、東西のドイツに分かれていたことや、ソ連の脅威が身近にあり、大陸国家ならではの緊張感が常に存在していたため日本ほどの人口爆発は起こらなかった。
ウクライナの戦争
ウクライナは核を持つ大国ロシアに侵略されている。
それはちょうど75年ほど前、日本が核を持つアメリカと戦う羽目になったのと同じ状況だと言える。
貧しい国のウクライナは、当初は戦えてもお金がないから兵站を維持できなくなって、すぐに白旗を上げざるをえない状況になっていたはずだ。
ところがNATOからの軍事費などの援助が続き、今も戦い続けている。アメリカは5兆円もの援助をしているが、NATOは航続距離の長いミサイルは提供しない。ウクライナがロシア本土に報復攻撃をしないためだ。
飛行機を提供してロシアから睨まれたら怖いからそれも提供しない。ロシアが核爆弾をウクライナに落としてもどの国も核でロシアに報復しないだろう。核を持っている国に攻められたら自分の国が核を持っていない限り戦争を避けることはできない。
ウクライナは日本に核武装を勧める典型的な事例と言って良い。
ウクライナは若い国家だから人口ピラミッドで一番多いのは30代で徴兵ができる。一方の日本は65歳以上が三分の一を占めているから今の軍隊の人数さえ集めることが難しい。
おまけにここ20年デフレが続いていてお金にも困っている。そうなると北朝鮮、中国、ロシアの核大国に囲まれている日本は核武装するしか道はない。
またウクライナのように石炭とか天然ガスがない国なので、早晩原子力発電で急場をしのぐしかない。
日本の危機的状況を十分に理解して、これからの困難な状況の中で自分だけは生き残ってやろうという、強い意志をもって困難な状況を勝ち抜いていくしかないだろう。
- 第54話「日本が生き残るためにはどうすればいいか」
- 2022年12月10日
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