【 漢方・整体施術 治療症例 】
83.ガングリオンの治療
体に溜まる水分を浮腫というが、大きく分けで炎症性と非炎症性に分けることができる。
非炎症性のものではリンパ浮腫、心不全による胸水や腹水、肝硬変による腹水、腎機能低下による浮腫などがある。炎症によるものでは肺炎による胸水、リウマチなど炎症性疾患に伴う浮腫がある。漢方では浮腫を取る薬のことを利水消腫薬という。
利水消腫薬の分類(5.2. 漢方薬に西洋薬の分類を当てはめて利水薬を作る)
炎症の分類
炎症は急性炎症と慢性炎症に区別される。漢方では急性炎症にも慢性炎症にも効く温清飲という薬がある。温清飲は黄連解毒湯という処方と四物湯という2つの処方からなる。
急性炎症、例えば焚き火が燃え上がるような炎症には黄連解毒湯が効く。焚火が消えたはずなのに燃えカスがくすぶるような炎症には四物湯がいい。
黄連解毒湯 | |||
---|---|---|---|
黄連 | 黄芩 | 黄柏 | 山梔子 |
急性の炎症によい |
四物湯 | |||
---|---|---|---|
当帰 | 芍薬 | 川芎 | 地黄 |
慢性の炎症によい |
私は黄連解毒湯を日焼けなど特殊な炎症に使うことがあるが、概ね急性炎症はステロイドや様々な西洋薬の抗炎症剤が効くので、漢方の治療では温清飲の加減法の竜胆瀉肝湯(一貫堂)の黄連解毒湯を除いた竜胆瀉肝湯去黄連解毒湯を使うことが多い。
57歳女性の症例
もともとへバーデン結節の治療をしていたが、急に肘の所が腫れてきたという。以前、ガングリオンが出来たことがあるので、それではないかという。
肘の腫瘤は触れると確かにのう胞の中に粘液が溜まった触感がある。ただ今まで経験したガングリオンより硬くはなく、場所的にはあまりできる場所ではない。
ガングリオン
ガングリオンは手首に出来ることが多い滑液の溜まった腫瘤で滑液包とつながっている。自然にできて勝手に消えてしまうこともある。注射器で吸引するとゼリー状の滑液が出てくる。
ガングリオンは炎症性の浮腫ではないから麻黄・石膏丸の出番はない。また軟部組織が溜まった液体ではないので茯苓、沢瀉、白朮、桂枝なども役には立たない。閉鎖空間に溜まった腹水、胸水で非炎症性のものは分消湯血鼓加減がいい。
そこで分消湯血鼓加減に地黄と石膏を足してみた。すると30分でガングリオンが小さくなり、2週間の投与で消えてしまった。
沢山の症例をみてみないと本当に治るかどうかは分からない。
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83.ガングリオンの治療 - 2022年11月01日
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