【 漢方・整体施術 治療症例 】
73.ドライアイ:58歳女性
2019年にドライアイと診断された。目が赤く腫れて痛いという。こういった場合、まずは涙腺や唾液腺が侵されるシェーグレン症候群という自己免疫疾患と区別しなければならない。涙の分泌を調べるシルマーテストや血中の自己抗体なども調べる。この病気でなければドライアイということになる。
私が今治療しているシェーグレン症候群の患者さん(47歳男性)は目の症状はまったくなく、関節が痛むので、関節炎の治療だけをしている。人によって現れる症状も色々なので、診断も治療も難しい。
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ドライアイの原因
涙の分泌不足、涙の質の変化、長い時間PCの画面を凝視することによる角膜の乾燥といった原因が上げられているが、詳しいことは分かっていない。
私は治療を2つに分けて考えることにした。まず炎症を治すことだ。炎症は以前報告したアレルギー性結膜炎の治療を応用して麻黄と石膏の組み合わせを使ってみた。このアレルギー性結膜炎では15分テストで効果がみられ、今はまったく症状がない。だからとりあえず炎症を抑えるために漢方利水剤の麻黄と石膏の組み合わせを選んだ。
カサカサになった角膜をどう修復するか?
次に考える必要があるのは、乾燥して傷んだ角膜の修復をどう治すかだ。
体が乾燥してカサカサになる病気に老人性皮膚掻痒(そうよう)症がある。これには当帰飲子(とうきいんし)という漢方薬が効く。四物湯が中心の薬で、それに蒺藜子(しつりし)といった痒みを止める生薬が入っている。皮膚がカサカサになるのは、アポクリン腺という皮脂腺が老化により機能低下を起こして油性成分が出なくなることが原因だ。主役の地黄は組織を回復させる力があるように思う。
コラム 生地黄と熟地黄
熟地黄は生地黄を酒に漬けて蒸して加工(修治しゅうじという)したもので生地黄は清熱作用があり、熟地黄は補陽作用があると言われている。実際に使ってみてもそれほどの違いを感じない。昔は生地黄しかなかったのだから私は生地黄でいいと考えている。無論、生地黄でも補陽作用は十分にある。
シェーグレンでは膣が乾燥して痛むことがある。また50歳くらいになると膣の乾燥から性交で痛みを感じる人もいる。そういう人に肉蓯蓉(にくじゅよう)が良かった。もともと精力剤として使われる肉蓯蓉だが皮膚を潤す作用がある。
写真のボトルに肉丸とあるのは肉蓯蓉のことで、肉蓯蓉は粉にするのが難しく、夏はドロドロになるから冬の寒いときにしか粉末にできない。冬場にしか買えないので使用禁止にしてある。肉地黄と書いてあるボトルは肉蓯蓉の間違いではなく、肉蓯蓉と乾地黄の合薬だ。
こういった薬で治療すると1か月後にはよくなった。
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熟地黄を粉にするのは不可能
粘り気のある生薬を粉末にするのはとても難しい。一般にはフスマ(小麦の米ぬかにあたる部分)を混ぜて粉にする。それでも粉にならない場合は液体窒素で粉にする方法もあるが、一般的ではないし、粉になっても丸薬にはできない。
特に熟地黄は難しい。八味地黄丸に含まれる地黄は桂枝や附子、山薬など他の生薬が多いから粉にできる。丸薬を作っている人なら肉蓯蓉や乾地黄が丸薬になっていることに驚くだろう。単味の生薬の丸薬を作らないと生薬の作用を正確には調べられないから大変な労力をかけて作っている。
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73.ドライアイ:58歳女性 - 2022年06月01日
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