【 漢方・整体施術 治療症例 】
103.医師国家試験に出る漢方薬
私は兵庫医科大の漢方講義を30年担当してきた。2年生の講義で漢方薬理学の基礎を教えてきた。その間に主任教授は3人変わった。それ以前にも兵庫医科大の評議員をしていたので兵庫医大には35年ほど勤務したことになる。
生薬は単なる薬物でしかない
講義では葛根湯を構成する7つの生薬を見せながら1つ1つの生薬の薬理を教えた。葛根(クズの根)、生姜、麻黄、ナツメ、桂枝、甘草、芍薬(芍薬の根)を見せて1つ1つの生薬の薬効を説明してきた。
生薬は単なる薬物であり、漢方医学に特有の陰陽虚実などの漢方的説明は、一切していない。繰り返しになるが、生薬は単なる薬物でしかないからだ。
漢方的診断で処方が変わることがあってはいけない
西洋医学では体質によって薬の使い方が変わることはない。体重や年齢で薬の量が変化することはあっても、漢方薬のように陰虚だからこの薬、気虚だからこの薬といったように、まったく違う薬が選択されることはありえない。
最近、最難関の国立大学の薬学部の名誉教授と連絡をとる機会があった。その教授は陰陽などの体の体質に合わせて処方が変わるということを学生に教えていた。
薬理学の国家試験ではそんな知識が問われるのだろうか? 少なくとも医師国家試験ではそんな知識を問われることはない。
文部省の教育要項
【文部省の教育要項に各漢方処方の使い方を説明できる】という文面があり、それに従っているだけかもしれない。
しかし、科学的に証明されていないことを試験に出せるはずがない。事実でないことを教えるのは洗脳教育になるからだ。
4年生の講義
大学の4年生の時にはもう少し臨床に役立つ漢方を教えることになっている。
そこでも私は、漢方薬は単なる薬物であるという講義を続けていた。しかし、他の講義を含め13コマほどの枠があるが、私以外の先生は陰陽虚実の講義をおこなっている。
ある時、兵庫医大の理事長から呼ばれて会いにいった。そこで、教えている内容はまったくの陰陽虚実なので、私は【これはアメリカのフルブライト留学を真似たものだが、中国は孔子学院を世界に広めて中国を宣伝するものだ。気をつけて下さい】とお願いした。
世界中で孔子学院が禁止されていく中で、兵庫医大でも遅ればせながら最近になって孔子学院を廃止した。
中国には3種類の医者がいる
中国にはまったく漢方を信じない医者、西洋医学を学んでいるが漢方も学んだ医者、さらに中医学院を卒業して中医学しか知らない医者がいる。その中で西洋医学も漢方も学んだ医者は漢方に懐疑的だといっていい。
最近、習近平が老人医療費を減らすために、中医学院を卒業しなくても2人の中医師の推薦があれば中医師になれる制度を作った。そんな理由から中国の漢方医はいわゆる裸足の医者以下の存在になった。
13コマの授業枠を西洋医学教育に当てて欲しい
4年生の講義は13コマも使うのに洗脳教育でしかない。現在の薬理学の主任教授はプログラム委員をされているので、せめてプログラムを選択制にして欲しい。
13コマも講義時間を使うのはあまりに勿体ない、それを国家試験の勉強に当てて欲しいとお願いした。
世界最高峰の北京中医学院
北京中医学院の学長は私の知り合いで、自宅に招かれたこともある。日本に招聘して漢方を学んだ。立派な人物だった。
北京中医学院は数千人のスタッフを抱える大所帯で独立採算制なので、経営手腕も問われる大変な仕事だ。資本主義とは何かを知っている人物だった。国会議員なので、外交官パスポートで来日した。
漢方の基礎研究は中国ではすごくされている
中国の中薬大辞典を見ると、ものすごく生薬について研究されていることが分かる。動物実験のデータも豊富なことに驚かされる。これだけ調べてくれていると、私の研究に大変役にたつ。そういった基礎データを利用して丸薬を作っている。
残念ながら兵庫医大を含め中薬大辞典の日本語版を持っている大学は数少ない。
ある時、地方の中医学院を卒業した先生が私の講義を聞きにきてくれた。そしてこれほど充実した講義を聞くのは初めてだと喜んでくれた。
中医学しか知らなくても論理的思考で説明すると納得してくれる。やはり、生薬は単なる薬物でしかないのだ。
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103.医師国家試験に出る漢方薬 - 2024年02月10日

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