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香杏舎ノート

第4回「緑内障と体の歪み」

失明したことがある先生

私は九州の片田舎にきていた。外は12月の寒い風が吹いてはいるが、明るい陽射しが窓から部屋の中にさしこんでいた。オステオパシーという治療法を知りたくて、日本で第一人者といわれる先生を訊ねて佐賀県の唐津までやってきた。オステオパシーというのはあまり聞き慣れない言葉だが、米国発祥の治療で、カイロプラクティックのような体の歪みを治す治療法のことだ。ただしカイロと違うところは、オステオパシードクターというのは医者であり、体の歪みの矯正で治らない病気には手術もする。つまり鍼灸師と医者の両方の資格を合わせ持つ医者のことをオステオパシードクターという。

初めてあったオステオパシーの先生は大柄な80歳くらいの老人であった。日本の医師の資格はなく、戦前に宣教師からこの技術を学んだと聞いた。初対面の私になぜ自分が体の歪みに興味をもったかを話してくれた。

若い頃、先生がボタ山にのぼっていたとき、トロッコが暴走してきて足に激しくぶつかった。先生は編み上げ靴をはいていたが、靴は破れ、踵の肉が引きちぎれて皮一枚で踵の骨にぶら下がるという大怪我をした。手術をうけてなんとか歩くことができるようになったが大きな傷が残った。そこで先生はふと話をやめ、靴下を脱いで踵を私に見せた。深い傷が踵を取り囲むように残っていた。

しばらくはびっこを引いて歩かねばならなかった。悲劇がおこったのは傷が癒えだしたころからだった。ある日、先生が目を覚すと部屋がかすんだようにみえる。何か炊きものでも焦がして煙がでていないか母に聞いてみたが、なにもしていないという。そうするうちに日ごとに目がかすんでいった。病院にいって目の検査を受けたが原因はわからないままどんどん見えなくなり、明るさがかろうじてわかっていたのだが、最後にはとうとうまったく見えなくなった。母に眼を見てもらうと瞳が白く濁ってしまっている。先生の父親は瞳が白いのは格好が悪いので角膜に入れ墨をいれて黒くすることを勧めた。昔はそういう美容治療もあったらしい。だが先生は嫌だと断った。

絶望感にうちのめされていた先生だったが、子供の頃によく親に連れていってもらった歌舞伎で「神社におまいりして目が見えるようになった」というのがあったのを思いだした。そこで毎日、朝晩2時間ずつ仏壇の前に姿勢を正して座り、「どうか眼がみえるようになりますように」と祈ったという。

すると不思議なことがおこった。数カ月がたったころ、薄ぼんやりと明かりがわかるような気がした。そして日に日にそれは明るさを増してぼんやり物が見えるようになった。その後も正座を続けるうちに、まったく正常に見えるようになった。そこで先生は話をやめてつぶやいた。「もし父親の勧めに従って墨を入れていれば、永遠に光をみることはなかっただろう」
「どうして見えるようになったのですかと」と私は聞いた。すると先生は「ケガで体が歪んだせいで頭蓋骨まで歪んでしまったんだ。正座して姿勢を正しているうちに体の歪みがとれ、それにつられて頭蓋骨の歪みが治った」という。だが私にはとても信じられないことだった。私が考えこんでいると、その様子をみてとったのか、先生は午後からの診察を見学するようにいってくれた。この診療も不思議なものだった。

頭蓋骨がゆがむと聞いてもなかなかピンとこない。でも耳の高さが左右で違って眼鏡を斜めにかけているような人をみたことがあるかもしれない。顔もよく見ると、鼻が曲がっていたり、唇の左右の高さが違っていたりと、左右対称の顔の持ち主はほとんどいない。この顔のゆがみを先生は、背中をバッキと捻じっただけで治してしまう。左右の耳の高さやほお骨、鼻の骨の位置もまっすぐになる。不思議でしょうがないのだが患者さんの顔を触らせてもらって確かめると、たしかに真っ直ぐになっている。

治療が一段落すると、先生はアメリカのオステオパシー医科大学に見学にいった話をしてくれた。見学後、アメリカの医師たちは先生に治療の手技をみせてくれと頼んだ。手技を披露してみせると、アメリカ人の教授たちは驚き、先生のための講座をつくり、先生を教授にした。

先生は東京でも治療していたので、何度か東京や九州にお邪魔して治療を見せてもらった。また私のクリニックまで来てもらって治療してもらったこともある。それは緑内障の治療だった。緑内障とは眼球の内部の圧が上がって失明してくるという難しい病気だ。先生は緑内障は眼球が入っている頭蓋骨の穴(眼窩)がゆがんで眼球を圧迫しておこるのだという。この話を眼科医が聞いたらあまりにも馬鹿げていると笑いとばすだろう。いずれにせよその当時、私は漢方薬が緑内障に効くという論文を書いたところ新聞にも取り上げられたせいで、よく緑内障の治療をしていた。緑内障の患者四人を先生に治療をしてもらった。先生の頭蓋骨の歪みをとる治療法を一回しただけで三人の眼圧が平均4~5ほど下がってびっくりした。

先生は毎週東京に通って治療を習うことを勧めてくれたが、開業しはじめた私には、とても無理だった。その後、先生は脳卒中で倒れられた。病床から私に会いたいというのでお見舞いにいった。先生は医者が本当のオステオパシーを日本に広げて欲しいと願っていた。医者に後継者になってほしかったのだ。残念なことに翌年先生は亡くなられ、先生の神業的な手技も永遠に失われてしまった。

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