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夢の中の老人

第13話「結婚はリスクが高い」

「俺の会社の従業員がお見合いサイトに登録していた。年齢は33歳、20万近い金を振り込んで会社が紹介してくる男性とお見合いをする。実際に会う前に写真とプロフィールが携帯に送られてくる。その会社はちゃんとしたお見合い会社で、独身証明書と年収証明書を出さなければ登録できない。
ある時、従業員がこんなプロフィールが送られてきましたといって俺に携帯を見せてくれた。そこには白い髭を生やした61歳の男性の写真が載っていた。コメントの欄を見ると年金生活なので、お互いに独立した関係を望むとある。」そう言いながら老人が夢の中に現れた。

「厚かましいにもほどがありますね。」

「30歳も歳下の女性と結婚する場合、将来、女は男の介護を強いられる可能性が高い。だのに金もないとはどういうことだ。身勝手な申し込みに女も腹を立てた。」

「そりゃあ怒りますよ。」

「芸能人で歳の差のある結婚が多くなった。そんな風潮だから自分も若い女と結婚できると思ったのかもしれない。」

「それにしてもどうしてこんな輩が出現するのですか?」

「人との接触が減ったのが原因だろう。昔だと、『何を寝ぼけたこと言っているのだ。金のないお前のところに若い女が来てくれるはずもないだろう。』と注意してくれる人がいたものだ。だが、孤立した社会では自分の思い込みをそのまま正しいと信じてしまう。自分の好きな妄想を抱いて、その通りに行動する。」

「どうして注意する人がいなくなってしまったのですか?」

「テレビゲームやSNSの社会の到来で、人と付き合うことが苦手な人が増えてきた。親や兄弟ともうまく話せない人が多い。考えてみると誰しも人に何か言われて傷つきたくない。メールなら自分の言いたいことだけ言って、相手が反論してきたらメールを読まなければいい。友人と遊ぶなら相手の立場を考えて気を使わなければならないが、ゲームなら好きな時間に好き勝手に遊べて、嫌なら止めればいい。他人との付き合いは忍耐がいるがそういうものを嫌うようになったのが原因だろう。」

「なるほど。ところで、最近はストーカー事件が多いですよね。しかも狂暴化しています。別れた妻や恋人を追いかけ回して殺してしまうといったことは、以前にはなかったことです。これも孤立しているからですか?」

相手に対する執着と狂暴化

「そうだな。ストーカーになるような奴も自分勝手な妄想の中にいる。女は男に従順だとか、強引に誘えばいいのだと思っている。だからうまく結婚できたとしてもすぐに捨てられ、欲求不満になって狂暴化する。今から50年前までは、もてない男でも結婚できたのだが、時代の変化とともに結婚するのは難しくなった。」

「どうしてですか?」

「昔は仕事をして金を稼ぐのが男で、家事、洗濯、そして子育てをするのが女と決まっていた。女は金を稼ぐ方法がないので、男と一緒になるしかなかった。そんな事情から、もてない男でも結婚することが出来た。だから昔はストーカーと言えば女だった。いい男を忘れられずに追いかけたものだ。ここ何十年かで女も自由に仕事ができるようになって立場は逆転した。」

「なるほど。時代の変化で人は付き合いが下手になり、女が仕事を持つことで、男は結婚するのが難しくなったわけですね。結婚しない人が増えたのもそういう背景があるのかもしれませんね。」

「動物の世界ではオスは自分より強大なメスを好まない。人間の社会も同じで、普通のサラリーマンが東大出の女弁護士を抱けるか?一流病院に勤める女医を抱けるか?そこには精神的な壁がある。
昔の話だが、大阪の商売人の娘がいた。大変優秀で大学ではとてもいい成績を収めていたので、教授はお嬢さんに大学院に進学することを勧めた。だが父親が反対しているというので、教授は実家まで出かけてお父さんを説得にあたった。教授の話を聞いたお父さんは怒って、『俺の娘を縁遠くする気か。』と怒鳴った。あまりに肩書をつけてしまうと男たちがビビッてしまうのを恐れてのことだ。」

「今は優秀な女性は一杯いますよ。そうなると、今の女性はとても結婚しにくいですね。」

「確かに優秀な女は結婚するのが難しい。女は自分より能力の低い男とは結婚したくないだろ。それに子供を産んでから仕事に復帰しても以前のような給料をもらうことは不可能だ。ストーカーに出会うかもしれないし、離婚するのは骨が折れる。結婚はあまりにハイリスクで踏み切れないのが現状だ。高学歴の男でも安心はできない。最近聞いた話だが、知り合いの女がいい大学を出た優秀な男と結婚した。結婚初日、料理を作ってご主人に一緒に食べようと奥さんが声をかけたが、テレビゲームに夢中でいくら呼んでも来ない。そんな変な奴が沢山いる。」

「ではどうすればいいのですか?」

「結婚しないことだ。」

「えっ!」

「高学歴で収入もよい女性は法律的な結婚をしなくてもいいのではないか。自分に食べていく力があれば何の心配もない。子供が出来れば自分の籍に入れればいい。法律的な結婚をしていなければ離婚でもめることもない。そもそも何十年も一緒に楽しく暮らせるか分からないのだから、そんな形態があってもいいだろう。」

「ずいぶん進歩的ですね。」

「俺は同僚の女性から『あなたの子供が欲しいので、協力してほしい。何の迷惑もかけないから。』と声をかけられた。4か国語を操るその女性はいい男性が見つからず30代後半になっていた。子供の産める時期に産んでおきたかったのだろう。」

「本当の話ですか?」

「本当だ。俺は所帯持ちで子供もいた。残念ながら協力する気持ちになれず、申し出を断った。後年、彼女はいい男を見つけて結婚したが、彼女の心配した通り、子供には恵まれなかった。」

「過激な人ですね。」

「最近、俺の知っている何人かの女性が離婚した。五十代後半になって突然、離婚して欲しいと言われたという。亭主に女がいるとか、借金があるといった理由ではない。困ったことにはっきりした理由がないのだ。専業主婦が年金半分と慰謝料や家をもらってもやりくりは大変だ。まだ30年以上人生が残っているからだ。夫婦2人で24万の年金で暮らすのは出来ても、一人で12万の年金で暮らすのは大変だ。家の固定資産税、電気、ガス料金、携帯電話などの基礎的な費用がかかるからだ。そもそも還暦近くになって離婚するには遅すぎる。そうなら女も働いて独立しておけば、お互い嫌になってもすぐに別れることが出来る。籍に入っていなければ別れることも簡単だ。」

「なかなか人生って難しいですね。」

人間の3つの欲

「俺は戦後の貧しい時に生まれた。美味しい物が食べたい、いい車が欲しいといったことを夢見ていた時代だ。その頃、結婚は比較的簡単だったが、食べていくのが大変だった。
子供の頃の夢はステーキを食べることだった。毎日の食事といえばご飯に味噌汁、漬物、そして焼き魚だ。ご飯のオコゲに醤油をかけて食ったりしたこともある。朝はパンを食べていたがマーガリンの塊に線を引いて今日はここまで使うといった風に1日の食べる量を決めていた。」

「失礼ですが、ずいぶん極貧のお生まれなのですね。」

「そんなことはない。父は医者で、役人をしながら大学で教鞭をとっていた。金持ちとはいえないが、ごく普通の家だった。」

「それにしては貧しすぎませんか?」

「当時の日本人はみんな貧しかった。俺は団塊の世代から少し後の生まれだが、それでもそんな状態だった。戦争に負けるとはそういうことだ。いつも腹を減らしていて、お腹の皮と背中の皮が引っつきそうだ(とても腹が減っている)という表現がよく使われたものだ。」

「ステーキを食べることはほとんどなかったわけですね。」

「そんなもの、めったに食えなかった。たまに母親が肉を買ってきても肉の10倍量ぐらいの玉ねぎと一緒に炒めるから肉なんか香辛料ほどしか入っていない。それをオカズにして何杯もご飯を食べるわけだ。
小学生の時、友人に晩御飯は何膳くらい食べるか聞いてみたことがある。するとそいつはオカズを沢山たべるので、一膳しか食べないという。それを聞いて俺は寝込むほど落ち込んでしまった。」

「ふーん。そういうことなら今はとても豊かになったわけですね。」

「牛丼が280円だろ。ステーキランチが1000円。豊かなんてもんじゃない。」

「でも生活保護を受けているとか、収入が少なくて美味しい物を食べられない人もたくさんいるのではないですか?」

「貧しい時代は餓死者が出る。体が悪くないのに食べる物が無くて死んでしまうという悲惨な状況だ。日本で餓死する人がいるか?腹が減ってパンを盗む人がいるか?俺が子供の時に感じたみたいに腹が減って一歩も歩けないと言う人がいるか?
いないだろう。贅沢を言い出すときりがない。牛肉やバナナも信じられないくらい安くなったし、食品の冷凍技術や流通革命が食品の値段を安くした。だから例外はあるものの日本人の食欲はほぼ完ぺきに満たされたといってもいいだろう。」

「確かに腹を減らした人はいなくなりました。」

物質欲

「では物質欲(金銭欲)は満たされたかだ?」

「それは無いでしょう。私は欲しい物が沢山あります。」

「じゃあ、君は何か欲しいのか?」

「急に言われてもパッとは思いつかないですね。服もPCもいいのがあればほしいですし、すぐにと言われればお金かな。」

ロータス「俺は会う人ごとに欲しい物は何かと聞いてみる。するとしいて言えばお金かなと言う人が多い。
昔は時計が欲しいとか車が欲しいとか、ヴィトンのバックが欲しいとか決まった商品に憧れたものだ。

俺の子供の頃の夢はいい車を持つことだった。高校の時、通学路をいつもシルバーメタリックのベンツが通り過ぎていた。いわゆる縦目のベンツで日本人の運転手の後ろに白人が乗っていた。俺はベンツに憧れをもっていて、いつか欲しいと思っていた。友人はロータスヨーロッパだった。ロータスはドアを開けると運転席に座ったままでタバコの火を地面に擦って消せるほど車高が低いのではないかと友人と話をしていた。
最近、その友人がロータスエリーゼを買ったので見せびらかしに行くと電話がかかってきた。美しいライトブルーの車体を見ながら友人にタバコの火は消せるかと聞いてみた。すると『消せる』という。エリーゼを見ながら友人も随分豊かになったものだと実感した。
憧れの車が買えるようになったのは単に豊かになっただけではない。車も安くつくられるようになった。そして安い車でも高い車と性能が変わらなくなってきた。
昔、憧れていたオメガの時計よりも電波時計のほうが性能がよくなり、ヴィトンのバックは重くて嫌われるようになってしまった。100円ショップに代表されるように安くても機能的な物が身の周りに溢れてきた。食欲と同じように物質欲も満たされ欲しい物はお金という抽象的な物に変わった。」

「ライカのカメラ、ダンヒルのライターなどをおじさんたちは欲しがっていたと聞いたことがあります。確かに欲しい物が急に思い浮かばないのは満たされているからかもしれません。」

「食欲と物質欲が満たされたら、身を粉にして働かなくなる。それが日本の現状だ。だが性欲を満たすのは難しい。性欲というと生々しいから、いい伴侶を見つけて楽しく暮らすこととでもしようか。そういったいままで普通のことがとても難しくなったと思う。」

「なるほど。いい伴侶を見つけて平凡な生活を送ることがとても贅沢なのですね。」

平凡な結婚ほど贅沢なことはない

バイクに乗ったラブラブのカップル

バイクに乗ったラブラブのカップル
撮影:老人

「昔は世話焼きの婆さんが見合いの世話をした。同じような家庭環境、収入の家からいい人を選んで見合いをしたので、離婚するリスクは低かった。日本の高度成長に伴って生活水準もずいぶん上がっていった。
今は豊かな時代と言っても共稼ぎでないとゆとりある生活は難しいし、離婚、ストーカーなどの問題もある。だから新しい結婚の形態を考えてもいい時代になったのではないかと思う。専業主婦だけを優遇した税制、年金制度なども見直していかねばならなのじゃないかな。」

「なるほど。時代が変わったのだから結婚観も見直して、できるだけリスクの少ない結婚のあり方を考えねばならないということですね。そう話してもらえれば、よく理解できます。」

「町の野良猫でも幸せそうだろ。一番の贅沢は信頼できるパートナーを見つけることだ。」
そういいながら老人はにっこり笑った。

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