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夢の中の老人

第12話「医者の収入と社会保障」

私は代官山にあるTサイトに来ていた。スターバックスでラテを買い、椅子を確保した上で週刊誌を持ってきて読み始めた。その雑誌には大学受験の合格率が載っていた。今は東大より医学部の合格率が進学校の評価になっているようだ。医者という職業はそんなに人気があるのかと考えていると、例の老人が隣に座っていて、ラテを飲みながら私の見ている雑誌を覗きこんできた。

夢の中の老人12話-1「ほう、医者になりたい学生が多いのか。確かに今の時代、いい大学を出て会社に就職しても一度辞めると次からは就職がとても悪いと聞いている。だから安定した医者という職業を選ぶ人も多いのだろう。でも医者という仕事はなかなか大変だし、収入も世間が思っているほど良くはないと聞いている。医学部に入れるほどの学力があれば、一流の企業に勤めることができる。そんな一流企業に長く勤めている方が生涯給与は医者より多いかもしれない。」

「本当ですか?医者って給料が飛び抜けていいですよね。」

「医者の収入について面白い話をしてやろう。現在の話は面白くないから江戸時代の杉田玄白からはじめよう。」

「杉田玄白って、あのターヘル・アナトミアを翻訳して解体新書を作った人でしょう?」

「そうだ。彼が流行(はやり)医者だったことはあまり知られていない。彼は、学究肌であるばかりでなく文化人的感覚、さらには金銭感覚にも優れていた。彼の薬札(診察料)収入は膨大だった。
彼の収入を見る前に滝沢馬琴の収入を比較のために見てみよう。馬琴は江戸時代に原稿料だけで生活したただ一人の作家だ。その滝沢馬琴の年収は36両、杉田玄白は4百-6百両もあった。(引用 医者の歴史 中公新書)」

「すごい金持ちですね。学者とばかり思っていました。」

「江戸時代、そういう流行医者は結構いた。流行医者の中でも面白いのが土生玄碩(はぶげんせき)だ。江戸時代後期の眼科医で白内障の手術を得意とした。氏素性ははっきりしないが腕がよかったので将軍家の御典医にまでなった。
白内障の手術と言っても焼いた木綿針で、白内障で濁った水晶体を亜脱臼させる手術だ。強度の近視になるが、光りが入るようになる。そんな手術で莫大な富を築いた。
ある時、玄碩はシーボルトの瞳孔散大薬の実験をみた。瞳孔が散大すると白内障の手術がとてもしやすくなる。そこでその薬方の伝授をシーボルトに乞うたが、日本研究資料収集を目的としていたシーボルトは、おいそれと教えてくれなかった。そこで将軍から拝領したご紋付衣服を密かにシーボルトに送ってハシリドコロ、漢名で莨菪根(ロートコン)に瞳孔散大作用があることを知り、また大いに収益をあげた。
後日、このご紋付衣服を送ったことでシーボルト事件に巻き込まれて獄につながれる。獄に繋がれるまえに、玄碩は何につけても金が第一だと言って、家族に命じて金銀を油樽2つに入れて深川の高橋に沈めて家族の生活費と獄中のワイロに備えたという。」

「やっぱりお医者さんは昔からお金持ちだったんですね。」

「そんなことはない。大正時代に活躍した漢方の名医で森道伯先生という先生がいた。皇室関係の人も診察されていたというが、若いころ医学では飯が食えなくて鼈甲細工師をしていた。国民皆保険でなかった頃、貧乏な医者も多かったのだ。」

「そうなんだ。でも今のお医者さんはお金持ちでしょ?」

「世間で思われているほど金持ちではないが、確かに高給取りだ。これも国民皆保険のおかげだ。ただ世間の人が勘違いしているのだが医者はいわゆる自由業ではない。」

「え!医者は自由業ではないのですか?」

夢の中の老人12話-2「半分公務員のようなものだと俺の知り合いの医者が言っていた。保険で治療しているから薬の使い方など厳しく審査される。当たり前のことだが相当に気を使うらしい。
また患者さんが来るときは必ず医院にいなければならない。休みを取ると患者さんが来なくなるので、サラリーマン以上に休むことができない。だから自由業ではないのだと。」

「収入がいいのだからそのくらいは我慢しないといけないと思います。」

「確かにそうだ。だがそいつが言うにはこれから医療費や社会福祉費が削減されてくるから収入もかなり減るだろうと落ち込んでいた。政府は沢山の税金を医療費や社会福祉費につぎ込んでいる。しかも財源は赤字国債だ。だからそいつの言うように医療費や社会福祉費は削減されてくるだろう。」

「そうですね。医療費の話題はあまり聞きませんが、確かに年金については時々話題になりますね。」

「年金について面白い記事を見つけた。2011年のイギリスの雑誌、The Economistに3世紀に渡って年金をもらった人の記事が載っていた。
ある男性が1865年の南北戦争に従軍して退役軍人年金をもらった。その男性は1927年、81歳の時に18歳の女性と結婚する。その女性は寡婦年金をもらいながら2003年まで生きたので、アメリカ政府は3世紀に渡って年金を払い続けることになった。アメリカ政府もよく払ったものだ。第1次世界大戦、大恐慌、第2次世界大戦、ベトナム戦争など国の出費は大変なことが多かったからだ。

日本では明治になって武家が士族になり、その人たちの俸禄が明治政府の予算の三分の一にもなったので、政府は早々に俸禄を出さなくなった。第2次大戦後、政府はデノミを実施して借金をチャラにした。こういうことを考えると国というのも信用がおけない。自分が老後の金を貯める自信がないから政府にまかしておいたら安心と考えたら大間違いだ。

1990年にベルリンの壁が崩壊して資本主義が共産主義に勝利した。冷戦中、資本主義の国では労働者が共産主義に走らないように社会福祉の制度を整えてきた。ところが社会福祉をやりすぎて自滅しそうな国ばかりになった。日本はもちろんのこと、欧米の先進国は社会福祉費が大きな財政赤字を生む原因になっている。最近になってアメリカはメディケアやメディエイドといった国民皆保険制度を導入し、一兆ドル以上が出費されることになった。中国でも遅ればせながら国民皆保険になったが、少ない掛け金で医療が受けられるのはいいのだが持続可能か不安視されている。余談だが中国に資本主義を植えつけて平和的に民主主義国家にする戦略を和平演変という。一人っ子政策で急速に老齢化が進む中国では年金問題、医療問題などの難問を解決していかねばならず、和平演変がおこる可能性が高まってきた。

つまり先進国では国民が過分な社会保障を国に要求し、政治家は赤字国債を出してその要求を受け入れてきたのだが、とうとう立ちいかない状況になってきた。今後、何十年にもわたって世界中で社会福祉費が削減されることになるだろう。国民は医療費の高騰とサービスの低下を嘆き、医者は収入が持続的に減ってくる時代に突入したのだ。」

「なるほど。年金も医療費も減らされてくるわけだ。そしてお医者さんの収入も減るわけですね。私のような庶民からすれば当然という気がします。」

「そうだな。俺もそう思う。無い袖はふれないということだ。」

そう言うと老人は立ちあがって人ごみの中に消えていった。

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