漢方治療

気滞体質(ガス腹体質)

お腹にガスが溜まることをガス腹として香杏舎ノートでは紹介しました。
お芋を食べ過ぎたりすると、腸の中でガスがたくさん作られてガス腹になることは誰にでも起こることですが、体質的にガスがとても溜まりやすい人がいます。

お腹に溜まったガスがとても危険なことを図解で説明しながら、ガスの溜まりやすい体質について解説したいと思います。

ガス腹の原因

お腹のガスは
どこからくるのでしょう?

食べ物には空気が含まれていますから、食べ物を食べる時に一緒に空気が呑み込まれていきます。呑気症(どんきしょう)といって空気を飲み込む癖の人もいます。
またお腹のガスは腸内の細菌のせいで発酵が起こって作られもします。

つまり、口から入った空気が消化管に取り込まれる場合と、消化管の中で微生物により作られるという2つの場合があります。

体内でのガス処理

消化管に溜まったガスは、ゲップやオナラとして直接排出されるほか、血液に溶けて肺からも放出されます。
腸で異常発酵が起こっている人のゲップやオナラが臭いだけでなく、吐く息も臭くなります。

溜まったガスが
引き起こす病気

1.ガスによる物理的な圧迫から起こる様々な症状

お腹にガスが溜まっていて、オナラやゲップでも出ていかないとしたらどんなことになるでしょう。

それはちょうど図のように、お腹に風船を入れていつも膨らましているような状態になります。

すると周りの臓器はいつも圧迫されて血液循環が悪くなり、臓器の機能が落ちてくることが想像されます。

実際に脾湾曲症候群という病態が知られています。

起立した状態では大腸の一番高い場所、つまり脾湾曲部に空気が溜まり横隔膜を押し上げ、心臓を捻じって狭心痛のような胸の痛みを起こしてきます。ガスが心臓だけでなく、他の内臓の臓器を圧迫して悪い影響を与えていることは間違いありません。

ちなみに急に激しい運動をしてお腹が痛くなる、例えば急にマラソンをしたらお腹が痛くなったというのは、飛び跳ねることで大腸のガスが上部に溜まることによるものです。

ガスが悪影響を及ぼす例をもう一つ上げましょう。これは人間の場合ではないのですが、牛の鼓腸症です。

牛の場合、胃の中で異常発酵が起こるとガスが溜まり、周りの臓器を圧迫して死んでしまいます。24時間以内に針をさしてガスを抜いてやらなければならない病気です。写真では、牛のお腹がガスで異常に腫れているのが分かります。

つまり人間でもガスによる圧迫は回りの臓器に様々が害を与えていることが想像できます

2.腸内の異常発酵による毒物の産生

腸内にはビフィズス菌のような良い細菌と、ウェルシュ菌に代表される悪い細菌がいるのが分かっています。

よい細菌は免疫を高め、体にいい影響を与えますが、悪い細菌は腸の中で毒素や発がん性物質を作ることが知られています。作られた毒素は血中に吸収されて免疫を弱めます。腸の中には何百種類もの細菌いて、その種類は人によって千差万別だと言われています。いい細菌の多い人は健康を維持しやすいのですが、悪い細菌が多い人は癌などの病気になりやすいと考えられています。歳をとるにしたがって悪い細菌が増えてきます。悪臭の強いオナラが出る人は悪い細菌が証拠と考えていいでしょう。

ここまでの話をまとめてみましょう。
お腹に溜まったガスは物理的に周りの臓器を押し付けて循環不全を起こすだけでなく、異常発酵により生じた毒物が体の免疫を弱めていくことが分かると思います。

体質としてのガス腹

次のような人はガス腹体質といえます。

  • 腸の動きが悪くてオナラが出ない人
  • 本来排出しなければならない便を腸に長く溜めている便秘の人
  • 猫背の人

…など。
こういう人は疲れやすく、いつもお腹がガスで張っていて目の周りにクマをつくり、元気がありません。整体、丸剤などで治療する必要があります。

中医学における
気滞の説明

ガス腹は、漢方の気滞という考え方の一部を日笠院長が分かりやすく説明したものです。

従来の中医学の説明では、

[気滞とは、気の停滞を意味するが、体とは主として自律神経の緊張や亢進にともなう消化器、気管支、平滑筋の緊張や痙攣による症候と考えられる。
主な症候は、脹った痛み、膨満感、苦悶感、遊走性の疼痛などで、これらが時間的に変化することが特徴である。
呼吸器の症状である咳、呼吸困難やイライラ、怒りっぽいなどの精神的または情緒的な疾患も含む広い概念]

と書いてあります。
この概念をすべて西洋医学的に説明するのは難しいのですが、肺の症状、胃腸の症状、イライラなどの精神的症状を含む広い概念です。

気は血液のように体の中を循環していて、それが滞ることで起こってくる諸症状と考えていいのだと思います。

(漢方における体質についての関連情報)

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