香杏舎ノート

 

『 夫婦別室 』(シリーズ第90回)

夫婦別性ではない。夫婦別室とは寝室を共にしない夫婦のことだ。最近、同じ部屋で寝ないことを望む夫婦が増えている。20歳代では5%程度だが、60歳代になれば半数以上が夫婦別室を望んでいる。実際に家を建てる場合でも30%の人が別々の寝室を作るという。

私の父は70歳の時に家を建て直した。以前、住んでいた家は戦後すぐに建てたもので、老朽化が激しかった。家を建て直す時、父と母は寝室を別にした。家の中にトイレを2つ作り、1つは玄関のすぐそばに、もう1つを父と母の寝室の間に配置した。夜中にトイレに行くのが便利なようにと考えてのことだ。各々の寝室の広さは4.5畳ほどで、2つの寝室の距離は2メートルくらい、呼べばすぐに聞こえる距離なので、夜中に体調が悪くなっても安心だ。

 医学的立場から考える

夫婦が別々の部屋に寝ることに抵抗を感じる人も多いに違いない。なんだか心が次第に離れていく感じを持つ人がいてもおかしくはないし、また別々に寝ていることが噂になれば離婚間近のように思われるかもしれないと心配する人もいるだろう。また本当は別室を望んでいるのだが、相手にどう言い出そうか悩んでいる人もいるかもしれない。

歳を取るにしたがって別室を好む人が増えるのは面白い。恋の季節が終われば、誰でもひとりで寝るのを好むようだ。別室か同室かは夫婦が好きに決めればいいことだが、一人で寝るほうが熟睡できるのは間違いない。

 睡眠妨害

寝言、歯軋り、イビキに悩まされている人は多い。奥様だけが被害者ではないが、加害者はやはり旦那さんに多い。深酒すると咽頭がむくんでイビキをかきやすくなる。

酒を飲むのは男性に多いから被害者は女性ということになる。また男性は歳を取ると前立腺肥大になる。すると夜中にオシッコにいく回数が多くなる。ご主人がトイレにいく毎に奥さんは目がさめてしまう。雑音を避けるためには別室が望ましい。さらに温度差も別室を考えるのには重要だ。

 男は熱症、女は冷え症

男の人は暑がりだ。ひどく暑がりの人は布団から足を出して寝る。こんな体が熱を持ちやすい体質を熱症という。男の人はだいたい熱症だと思っていい。いっぽう女の人は体が冷えやすい。こういう体質を一般に冷え性(ここでは冷え症と書いておこう)という。冷え症と熱症が一緒に寝れば、どちらかが体調を壊してしまう。夏、暑いのでエアコンをかけて寝る。御主人の温度に合わせると、奥さんは風邪を引いてしまう。
奥さんの温度に合わせるとご主人は暑くて眠れない。

睡眠のリズムは人によって違う。早起きの人、朝寝坊の人、寝つきのよい人、悪い人など様々だ。睡眠は自分のリズムで取ったほうがいいにきまっている。どう睡眠をとるかついては今まで女性が男性にあわせてきたのだろう。ご主人が仕事に行っている昼間に奥様は昼寝をしたり、夕食の準備をしてからうたた寝をしたりして睡眠をおぎなってきた。

最近は専業主婦が減って仕事を持つ主婦が増えてきた。働いていると、昼寝をして睡眠をおぎなう時間がない。専業主婦だっていまの専業主婦はお稽古に出かけたり、子供を塾に連れていったりと忙しい。夜の遅いご主人に合わせていると病気になってしまう。貴重な睡眠時間を守るためにも一人でぐっすり寝るほうがいい。ご主人も奥様も忙しいのだ。NHKのニュースの放送時間が7時から9時、そして10時にと遅くなってきたように、世の中全体が夜更かしになって睡眠時間はどんどん少なくなってきている。貴重な睡眠時間を大切にする必要がある。

 睡眠を馬鹿にしない

睡眠を取らないでいると、精神に異常をきたしたり、突然死することが知られている。忙しいと睡眠をけずりがちだが、気持よく朝に目覚めれるほどの睡眠を取りたい。現実には十分な睡眠時間はなかなか取れないものだが、短くとも充実した睡眠は是非とも必要だ。

 私の経験

「おまえと一緒に寝ていると、ふと愛人の名前を寝言で言ってしまわないか心配だ」
と妻をからかってみた。
「そういう悩みをもっている人は多いみたい。だから犬や猫に愛人の名前つけるのでしょ。うっかり名前を言っても大丈夫だから。」
なんてことを知っているのだろうと私は思った。
「そうなんだ。だから僕もペットを飼おうと思っているんだ。でもマンションでは犬や猫は飼えないからリスにでもしようか。」と私は言った。
「リスに花子とか名前をつけるの。おかしい。」と妻は笑った。
結局、つまらないことを言ってからかわれたのは私だった。

香杏舎ヒガサクリニック
2003年  5月22日発刊分


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