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『 指先の関節が痛い(ヘバーデン結節) 』(シリーズ第107回)
指先の(爪のすぐそばの)関節が痛んだ経験はないだろうか。指で強く物を押し込もうとしたときや、包丁で物を切っているときにまな板に指をぶつけたりすると飛び上がるほどに痛む。この病気をヘバーデン結節という。ヘバーデンとはこの病気を発見した人の名前に由来する。結節という名前がついているのは、病気が進行すると、関節に小さなコブができるからだ。結節は柔らかくて押すと痛いが、しばらくすると固くなって痛みも消える。痛みが消えると、関節は手のひら側に傾いて固定されてしまう。人指し指から小指まで変形をきたすと鷲の爪のような形になる。女性に圧倒的に多い。いちばん病気を起こす可能性が高いのが人指し指で、次が中指、小指の順になる。● 加齢による生理的変化というが
レントゲンをとると骨の変形があり、関節の間が狭くなっている。特別な病因というのはないので、加齢での骨の変形が原因と考えられている。またそう考えられている別の理由は、手をよく使う職業の人、給食の調理員や清掃作業をしている人に多いからだ。
治療法に特別なものはなく、痛み止めの薬、シップ程度だ。困ったことに変形が起こり始めると、それを止める方法がない。この病気の発症は変形性膝関節に似ている。膝は老化と関節の酷使で骨に変形が起こるという。だが本当に老化と過度の使用が病気の原因なのだろうか。よく歩く人でも病気にならない人もいる。だから単なる老化と酷使が原因とは思えない。以前、変形性膝関節について書いたことを覚えている人もいるかもしれない(香杏舎ノート第54回)。変形性膝関節症の患者さんは運動嫌いの中年のオバサンに多い。関節を酷使して骨が擦り減ったというが、そんな激しい運動や労働をする人は誰もいない。どうしてそうなるのかと考えていて、体の捻れが原因だと気がついた。
ドアにぶら下がってドアを開け閉めしていると、ドアのちょうつがい蝶番が壊れてしまう。膝も捻れたまま運動すると、関節を捻って負荷をかけることになるから関節が壊れてしまう。膝関節の捻れを取ってやると痛みがましになり、曲がり易くもなる。私のクリニックでは変形性膝関節症の患者さんは膝の治療をすることは無く、体の捻れをとることで治療している。
● 猫背と肩こり
ヘバーデン結節も指の関節そのものではなく、体の別の場所が悪くて病気が起こっているのではないか。そう思って患者さんを詳しく観察してみた。すると面白いことに気づいた。手をよく使う人でも病気を起こしてこない人は姿勢がよい。ヘバーデン結節の人は猫背の人が多く、特に首が体より前にずれたような姿勢になっている。
患者さんに座ってもらい、横から観察すると、体の中心線より頭が前にずれていることが分かる。さらに首や肩を触ると筋肉の凝りがとても強い。そこで首や肩、さらには胸の筋肉を緩めてやり、姿勢を矯正すると指の痛みが楽になることがわかった。どうして肩や首の筋肉を緩めることで病気の進行が止まり、痛みも楽になるのかは分からない。指を動かす筋肉は腕から来ていて、その腕を動かす筋肉は肩から来ている。姿勢が悪いと、そういう筋肉の張り方に微妙な歪みが生じて指の曲げ伸ばしに影響を与えるのではないかと思う。
● 理由はわからない
いずれにせよ治療を受ければ多くの人が楽になる。これは実際に経験してみないと分からない。鍼灸のツボでも悪い場所から遠く離れた所を治療して実際に良くなる場合が多い。こういう現象を説明するために経絡の理論があるわけだが、科学的に説明して納得してもらうことは難しい。
● 私の感想
メディアの発達で何でも分かった気になっていることが多い。たとえばハワイに行かなくてもテレビでハワイの海と空をみればハワイの知識は得られる。だが気候のよさや太陽の光、海の匂いは伝えることができない。雰囲気は実際に体験してみないと分からない。
病気のことでも理論的に説明できることは本を読むだけで納得できる。我々は理論的に説得されることに慣れすぎているから理論のないところに不安を感じる。整体、鍼灸などは体験しないと納得できない分野の一つだと思う。
香杏舎ヒガサクリニック
2004年10月22日発刊分
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