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『 もみおこしと北斗の拳 』(シリーズ第103回)
マッサージやアンマをうけた後に体が痛くなるのを一般に もみおこし とか、もみこわし、という。例えば肩こりでアンマをしてもらったら後で首が痛くなり、回らなくなったといった現象だ。どうしてこういったことが起こるのだろう。北斗の拳という漫画をみたことがあるだろうか。主人公のケンシロウが相手を倒すとき、「お前はすでに死んでいる」というセリフを知っている人も多いだろう。殴られた相手はこの言葉を聞いて、しばらくすると体が爆発するように倒れてしまう。つまり殴るという外力が加わってからしばらくしてその効果が現れるところにこのマンガの面白さがある。
現実の世界では、殴られてから時間をおいてその影響が出ることはない。物理的外力により骨折、打撲が起こると、内出血、組織の損傷が瞬時に起こる。だからすぐに痛み、脹れが出てくる。面白いことに、もみおこしは北斗の拳と同じように痛みがすぐには起こらない。治療を受けて体が楽になったと思ったのに、しばらくしてから体が痛んでくる。
では何故もみおこしは起こるのだろう。もしアンマやマッサージもしくは整体の治療で内出血や組織の損傷がおこれば、少なくとも何らかの症状が治療を受けた直後から起こり、それがひどくなるという経過をたどるはずだ。だから、もみおこしは一般の打撲などによる組織の損傷が原因だとは考えにくい。
● もみおこしの症状
もみおこしの原因をさぐるためにはもう少し詳しく、もみおこしの症状をみていく必要がある。もみおこしの痛みは必ずしも治療した同じ場所に起こらない。上で述べたように肩こりを治療してもらったのに首が痛くて回らないとか、全身のマッサージをしてもらったのに頭痛がするといったことが起こる。つまり治療の前後では痛みの場所が異なるのだ。同じ場所の痛みが悪化することはあまりないし、起こることがあってもまったく異質の痛みであることが多い。
こういうことから考えると、もみおこしは十分に取りきれなかった凝りによるものではないかと私は想像している。このことを、肩こりを例に説明してみよう。肩こりが僧帽筋や胸鎖乳突筋といった筋群が凝ることで起こったとしよう。もし、ある一つの筋肉だけが十分に弛緩しなかった場合、その筋肉はすぐに凝りの状態にもどってしまう。すると弛緩した筋肉の中で弛緩しない筋肉が出現することになるから以前とは違った凝りの症状、つまり首が痛いという症状が出現する。状況はすべての筋肉が凝っていた肩こりの時とは異なっている。だから、肩こりの治療を受けたのに首が回らない、首が痛いという違った症状が出てくるのだ。
北斗の拳のように時間差で症状が出てくるのも十分に弛緩しなかった筋肉だけが早く凝りの状態にもどってしまったと考えれば納得がいく。
もみおこしはマッサージなどの経験のない人が治療を受けはじめた時に起こることが多い。何度も治療を受けてから起こることもあるが、そういったときは治療を受けた後に激しく体を動かしたときに起こるようだ。● 他の症状
一般的なもみおこしの症状とは違うが、まれに揉まれた後に内出血がおこることもある。内出血がおこるほどに強く押されたと患者さんは思う。だが、こういう反応を起こす患者さんはもともと体にアザが出来易い人だ。知らないうちに体をどこかにぶつけたのかアザができる。こういう体質を漢方では おけつ
血 という。
血体質の人は血が滞りやすく、少しの圧力でも内出血を起こす。面白いもので、こういう人は何回か治療をしているうちにアザができなくなる。
● もみおこしが起こったら
もみおこしが起こったらどうすればいいのだろう。一番いいのはすぐに凝りを取るための治療をしてもらうことだ。「治療で悪くなったのでもう治療には行かない」と考えないほうがいい。ただし治療が下手な人はもみおこしを頻回におこす。もみおこしは治る過程で起こりうる反応なのだが、私がこういうことを言うと、これを言い訳に利用する治療師が出てきそうで怖い。
● 私の経験
年間に何千例も整体の治療してきた私の経験から見ても、もみおこしは治っていく時に見られる反応であり、完璧に防ぐ手立てもないことを私は知っている。民間の治療師で、もみおこしがないことを自慢にしている人がいるが(とはいうもののもみおこしが全くないわけでもないのだが)、もみおこしを恐れてあたりさわりのない施術を繰り返しても治療にはならないことも知っておかねばならない。
アンマやマッサージをしてもらった後に湯あたりのような脱力感を感じることがある。全身の筋肉が緩むと、温泉に入った後のような体にだるさを感じる。これは筋肉が十分緩んだ場合に起こる。慢性的な凝りから開放され、循環がよくなってこういう症状が出てくる。これをもみおこしと勘違いしてはならない。
香杏舎ヒガサクリニック
2004年 6月22日発刊分
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