漢方では体質に応じて薬を処方します。体質の重要性をわかっていただくために瘀血(おけつ)という体質を例にとって説明してみましょう。

瘀血とは血液の循環が悪くなったり、体に非生理的な血液が溜まった状態を示す漢方の言葉です。難しく聞こえますが、理解しにくいものではありません。たとえば打ち身をして青あざができた状態は瘀血と考えます。つまり内出血は瘀血なのです。

交通事故の症例で説明してみましょう。44歳の男性が高速道路でトラックに追突しました。

男性は顔の骨を折り、ムチ打ちになりました。怪我は1カ月ほどでなおりましたが、ひどい頭痛に悩まされ当院を受診しました。痛みの原因は瘀血だと考えました。レントゲンに写らない頚部や顔面の深部組織の内出血、つまり瘀血があると想像したのです。そこで瘀血をとる通導散(つうどうさん)という漢方薬を飲んでもらったところ頭痛が嘘のように取れました。やはり頭痛の原因は瘀血だったのです。事故の写真をみると、骨ばかりでなく筋肉などにも相当な打撃があったことが容易に想像されます。

2例目は46歳の運転手さんの例です。信号待ちをしているところに車がつっこんできて首と腰を捻ってしまいました。整形で痛み止めや湿布をもらっているが治らないといって来られました。やはり通導散で痛みがとれました。

この事故の写真も体にかかる衝撃のすごさを示しています。打撲傷を負ったときは、こういった瘀血をとる薬を飲むと、西洋医学だけの治療より、はるかに治りが早いのです。治打撲一方(じだぼうくいっぽう)という読んで字のごとく、打撲のときの瘀血をとる薬が漢方にはあるくらいなのです。

冶打撲一方の症例

冶打撲一方の症例

私の医院に勤務する34歳の鍼灸師。転倒して足の指を打撲しました。そこで治打撲一方を処方しました。鍼灸師は本当に早く治るのか試してみようと思って自宅で写真を撮っていました。歩くのも困難だったのに4日目には治ってしまいました。

瘀血とは非生理的血液が体にたまったものだということがわかっていただけたと思います。でも瘀血は内出血を示すだけの言葉ではないのです。たとえば事故でムチ打ちになっても痛みが長く続く人と、そうでない人がいます。その差は瘀血体質かどうかによります。痛みが長く残る人は不要な血液がたまりやすく、循環が悪い瘀血体質の人なのです。ですから瘀血体質の人は、脳梗塞や心筋梗塞といった血液の流れがわるくなる病気にもかかりやすいのです。さらに男性に比べ女の人は生理不順から不要な血液が体にたまりやすいので、一般に瘀血体質と考えられます。

こういってくると、ずいぶん瘀血というものがわかってきたと思います。そこで問題を1つ。シモヤケになりやすい人は、そう、もちろん瘀血体質なのです。

では瘀血体質の人はどんな身体的特徴があるのでしょう。

瘀血体質の人の足や肩などの皮膚には赤い糸ミミズのような血管の拡張があります。

 

舌の裏の静脈がはれ上がっています。

 

顔がお面をかぶったように赤くなることもあります。

この写真を見ると更年期障害ではないかと思う人もいるはずです。そう、更年期障害でこのような特徴がある人は瘀血と漢方では考えるのです。

 

さらに舌に瘀斑という斑点がある人もいます。

 

これらの症状や脈の打ち方などを総合すると、瘀血体質かどうかを判断できることになります。

瘀血があれば、通導散や治療打撲一方で治療をおこないますが、薬だけで治すわけではありません。瀉血という治療もおこないます。

瀉血とは皮膚を切って血を出す治療法です。原始的な方法ではありますが、現在においてもすぐれた効果をもっています。瘀血が原因の喘息、関節痛などには大変よく効きます。

写真は肩から瀉血して吸い玉で血を吸いだしてているところです。

以上、瘀血という体質について説明しましたが、漢方では体質がいかに重要かが解かっていただけたと思います。漢方では瘀血以外にも沢山の体質分類がありますが、大事なことは体質を無視して漢方を処方しても治療効果は期待できないということなのです。

 

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