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香杏舎ノート

第88回「香杏舎(こうきょうしゃ)の由来」

2年前の春、私に漢方を教えてくれた山本先生は重い病の床に就いていた。先生は漢方を教えてくれただけでなく、私のクリニックに名前をつけてくれた恩師だ。その先生が病に倒れてから数か月が過ぎようとしていた。病は重く、明日をもしれない状態だという。私は何も出来ない自分に苛立ち、重苦しい気分で過ごしていた。

早春の日差しを浴びて咲くプラムの木

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そんなある日、一枚の絵葉書が送られてきた。そこには早春の日差しを浴びて咲くプラムの木と緑の色を深めていく大地が描かれていた。印象派的なその絵をとても美しいと思った。私はその絵を見ながら山本先生から聞いた杏林伝説のことを思いだしていた。

「いまから2千数百年前の中国に董奉(とうほう)という名医がいたといいます。董奉は患者を治しても金をとらず、軽い病気の者には杏の木を1本、重い病気の者には5本植えさせました。彼の名声を頼って多くの患者が集まったので、いつしか大きな杏の林ができたといいます。植えられた木から取れる杏の実は飢饉の時の食料になり、杏の種はせき止めの薬(杏仁水)として使われました。」

「日笠先生が開業するにあたり香杏舎ヒガサクリニックという名称を考えました。香杏舎とは杏の花の香がたちこめる医院という意味です。先生に董奉のような名医になって欲しいとの気持からです。舎は医院の意味です。また日笠診療所とせず、ヒガサクリニックとしたのは漢方のみならず西洋医学も使って最高の治療をして欲しいからです。」

私は山本先生の言葉を思い出しながら杏の林はこんなプラムの木が幾重にも重なった林なのだろうかと思った。プラムも杏(アプリコット)もその花はとてもよく似ているので、そんな想像をしたのだった。

画家に会う

ふと我に返って絵葉書の裏を返して見た。それは個展の案内状だった。フランスのロアール地方に住む日本人画家が東京と大阪の三越で個展を開くらしい。案内状に書かれた文面を読むと、その人物は私の同級生の弟だと自己紹介が書かれていた。

初対面の弟さんはジーンズにツイードのジャケットという画家らしい格好をしていた。
個展の絵を一枚づつ見て回ったが、彼の絵は心をなごます雰囲気があり、どの作品もとてもよかった。私は絵葉書にあったプラムの木の前で私は足を止め、[もしこの画家が杏林伝説を描くと、どんな感じの絵になるのだろうか]と想像した。
翌日、もう一度絵を見たくて個展に出かけていった。そして昨日ふと思ったこと、つまり[杏林伝説の絵を見てみたい]という気持を抑えられなくなった。私は意を決して画家に話しかけた。「絵を描いてもらえませんか。それも伝説の絵を想像で描いて欲しいのです。」彼は一瞬戸惑った表情を見せたが、杏林伝説の話をすると、「いいですよ」と快く引き受けてくれた。彼はフランスに帰るので出来上がりは1年後、描くための資料はこちらから送ることになった。

資料を集める

杏林伝説の絵

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長野県の更埴市には有名な杏の林がある。絵を正確に描くためにはここの写真だけではなく、花の拡大写真や杏によく似た梅や桃の写真も集めなければならなかった。
さらに問題になったのは董奉の姿だ。昔の日本の医者はクワイ頭という分かりやすい格好をしていたが、中国の医者の服装が分からない。漢方薬メーカーに問い合わせたが資料はないという。董奉は神仙伝に出てくる人物で、実在したかどうかはっきりしないし、中国は多民族国家なので服装もまちまちだ。そこで漢方の歴史に詳しい専門家に手紙を書いて教えてもらったところ、医者だから特別な格好というのはないという。そこで伝説ができた紀元前3ー5世紀頃の服装の参考にするため、友人を通じて三国誌時代の資料を中国から送ってもらった。こういう資料とともに神秘的な山里や桃源郷的な雰囲気のある写真を集めてフランスに送った。

絵を楽しみに待ちだしたある日、山本先生が亡くなったとの訃報が届いた。私は寂しい気持になったが、絵を山本先生の形見だと思って出来上がりを待つことにした。1年7か月後、個展を開くために彼が帰国した。はじめて絵をみた時は本当に嬉しかった。それは想像以上の出来栄えだったからだ。また画家の表現力にも驚かされた。この杏林伝説の絵はみんなに見てもらえるようにクリニックの待合室に飾ってある。

私の感想

ヨーロッパでは画家に依頼して絵を描いてもらう伝統がある。たとえばレオナルド‐ダヴィンチの最後の晩餐は聖書の一場面を描いたものだが、どのようにユダを描きその他のキリストの弟子を描くかはその画家の想像力にまかされていた。日本には画家に絵を依頼するという伝統はないし中国にもない。私は画家の好意から絵を画家に依頼するという贅沢を体験することができた。1年7か月は長かったけれど絵のテーマを画家がどういうふうに理解し、絵にしてくれるかを想像しながら待つのはとても楽しい経験だった。

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