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香杏舎ノート

第76回「開業医は能力が低いのか」

新聞を読んでいると開業医の能力が低いという記事が出ていた。どんな記事なのかというと、ある患者さんが体のむくみを訴えて開業医を訪ねた。開業医は別に問題ないと診断した。だが症状がひどくなるので別の病院で診てもらったところ急性腎炎と診断をされ緊急入院した。開業医は可能性のある病名すらあげることができなかった。病院に勤める医者は専門化されていて能力が高いが、開業医は訓練不足だと書いている。

研修医のとき思ったこと

大学病院で研修しているとき、私も開業医の能力が低いと思った。こんなに病状がはっきりしているのに、どうして診断がつかないのか、見逃してしまうのかと思った。

研修を終えて病院に勤務した時のことだ。腹痛と発熱の患者さんがやってきた。発熱 と腹痛があれば盲腸(虫垂炎)の可能性を考えておかなければならない。そう思って慎重に腹を触診した。案の定、右下腹部に圧痛点がある。典型的な盲腸の患者だ。すぐに外科で手術してもらうことになった。患者さんによると、近所の開業医に診てもらったところ風邪だと言われたという。やはり開業医はダメだと思った。

1年ほどして同じような腹痛と発熱の患者さんがやってきた。盲腸ではないかと思い、何度もていねいにお腹の触診をした。ミゾオチには痛みがあるものの盲腸の部位には痛みはない。急性胃腸炎と診断した。翌日、良くならないといって患者さんがやってきた。診察すると、盲腸の部位に圧痛があり、典型的な盲腸の患者だとわかった。盲腸の痛みは、はじめは上腹部の真ん中、つまり普通のお腹の痛みと同じように症状が現れ、その後、盲腸の部位に痛みが移っていく。患者さんがミゾオチにしか痛みがなかったのはそのためだ。なるほど、病気が進行すればするほど診断はつきやすいのか。
病状が軽いときは診断しにくい。何度探しても症状がなければ、その時点では別の診断がついてもしかたない。そう考えると、開業医が駄目だと思い上がっていた自分に気がついた。

最近、むくみを訴える患者さんが多い。検査をしても何処も悪くなく、診断がつかない。運動不足や糖分や塩分の取り過ぎから体がむくんでいるのだ。西洋医学の診断名は特発性浮腫、特発性とは原因のわからないという意味だ。新聞の記事にある急性腎炎の患者さんもこういった患者さんに混じって開業医を訪れたに違いない。検査をすれば腎炎と分かったかもしれない。だが、検査すればやたら検査好きの先生と誤解されてしまう。そんなことで経過をみましょうということになったのではないか。そんな想像をしてしまう。もちろん開業医にも腕の悪い先生もいる。でもそれは病院の先生とて同じことだ。開業医が馬鹿で病院の先生が賢いという風な割り切りはできないのだ。

親父の格言

私の父は長い間、衛生行政にたずさわってきた。もともとは小児科の医者だったが、子供が病気で亡くなることに耐えきれずに行政職に転職した。退職後、勲三等の勲章をもらったほどだから生真面目に役人の仕事を勤めあげたのだろう。そんな父は職業柄、医療事故や誤診などにも詳しかった。父がこんなことを言った。「なにかおかしい、普通じゃないと感じたら病院にいったほうがいい。開業医はだめだ。開業医は病人を見慣れていない」と言う。
私は不思議に思った。開業医だって病気の人を診ているではないか。どういうことなのだろう。父は詳しくは説明してくれなかったが、しばらくしてその意味がわかった。

胃が悪い人が1,000人いて、その中に1人、早期の胃癌の患者さんが混じっていたとしよう。開業医の先生は毎日、毎日、胃の悪い患者さんを診察する。検査をしても胃炎の人しかいない。1,000回に1回しか癌の人にあたらない。病院にいくと開業医の先生の紹介で普通でない胃炎の人が集まってくる。胃炎の中に含まれる癌患者の比率は50人に1人くらいに上がる。比率が高いと癌患者ではないかと疑う癖がつく。めったに癌患者に出くわさないと、どうしても見逃す危険が高くなる。善人に囲まれていたのでは、そうそう悪人がいるとは思えなくなってしまうのだ。

父は決して開業医の能力が低いと考えていたのではない。開業医は病院に比べて設備がない、めったに重症の病人に出くわさない、検査を勧めると検査浸けの先生だと思われる、といったハンディがあると言いたかったのだ。
父の格言の中で大切な部分は、「普通じゃないと感じたら」というところだ。患者さん自身が普通でないと感じたら詳しい検査を受けたらいい。腹が痛いが普通の痛さじゃない、何か変だと感じたら大きな病院で徹底的に検査をしてもらう。病気の発見はやはり患者さん自身の感覚が一番大切なのだ。

私の経験

20歳のときに盲腸になった。熱は高かったが、腹はあまり痛まなかった。トイレに行こうと立ちあがろうとしたが、力が入らなくて立てなかった。父が診てくれたが臨床から遠ざかっているので自信が無かったのだろう、県立病院に勤める叔父を呼んだ。わずかに右下腹部に圧痛点があり、盲腸と診断され緊急手術を受けた。私の場合も普通ではない「立てない」という症状が出たのだった。

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