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漢方医

第8話「一般の医者は漢方を信じていない」

ある時、泌尿器科から患者さんが紹介されてきた。慢性の前立腺炎で下腹部の痛みが取れない。私が作った丸剤で治療すると簡単に治ってしまった。

その患者さんが「先生、子供さんはおられますの?」と聞く。「はい」と答えると、「お医者さんですか?」と聞く。「違いますが、どうしてですか?」と答えると、その患者は私の作った丸薬が私のオリジナルだと知っていて、もし私に何かあると薬が貰えなくなることを心配していることが分かった。

確かに私は自分の作った薬を誰にも教えていない。処方の記録はあるが、細かい使い方などは記録していない。誰かに処方を教えておかねばならないと思った。
ただ自分が苦労して作った処方だけに丸剤を発展されてくれる人に教えたいと思った。

そこでまず親戚の医者に声をかけてみることにした。
一人目は国立循環器病センターにいた心臓カテーテルの専門家だ。開業も考えていると聞いたので、食事を一緒にしたが漢方については興味がなかった。

2人目は小さい時から知っている従弟だ。大学で講師をしている。エイズの専門家だ。
兵庫医科大学に漢方の講義に行ったとき、ついでに従弟のいる血液内科を覗いてみた。漢方の話だけでは興味がわかないかもしれないと思い、開業医の方が実入りがいいことを説明しようと「私が2シーターのオープンカーを持っているのを知っているだろ?」と声をかけてみた。従弟はオペルに乗っていたので車好きと思ったからだ。
一度でもいいから医院を見学に来てほしいと言ってみたが反応はなかった。

3人目は義理の弟、大学で遺伝子の研究をしている准教授だ。
たまたま会う機会があったので誘ってみたが無反応だった。私は医者を誘う時に、自分の仕事を仔細に話して誘った訳ではない。私としてもそこまでして来てもらいたくはなかったからだ。
後継者を求めて親戚を駆け回る私を医者の兄は馬鹿にしていた。

私は親戚を諦め、友人に救いを求めた。中高の同級生で病院長をしていて臨床教授の資格があった。
ホテルのレストランで会う約束を取りつけた。私は袋に入れた丸剤を見せた。「これが、自分で作っている丸剤」というと、何十年かぶりに会った友人は「鼻くそ丸めて、ゴメン、ゴメン、それで?」という。
私は「外科は大変でしょう。オペ後の急な呼び出しが院長でもあるでしょう」と話題を変えて会談は終了した。

私の仕事はとても魅力的だと思う。難病の患者さんのために薬を工夫し、自分で創薬して患者さんと一緒に病気と闘っていく。
私や山本先生のように自分で薬を作って他の医者が治せない病気を治していくことほどやりがいのある仕事はない。漢方や丸剤と聞いても何の反応も示さないのはどうしてなのだろう。

ある時、その理由が分かって、はたと膝を叩いた。
そうだ!医者は漢方が効くとは誰も思っていないのだ。癌が治ったり、脱肛が治ったりするなんて想像さえしていないに違いない。
何故か?
それは保険の漢方薬が効かないからだ。普段目にする漢方薬の効果から判断して自分の専門としてやりたいとは思わないのだろう。
では何故、すごく効く漢方が知られていないのだろう?
そこには大きな問題が横たわっていた。

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