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夢の中の老人

第24話「生活のリズムが速くなっていく世界」

子供の頃に比べると何やら慌ただしい。落ち着かない感じがする。働き出したからだと思っていたが、そうではないみたいだ。

カフェレストランからの夜景私は山の上にあるカフェレストランで満月の夜景を見ながら、そんなことを頭に浮かべていた。満月の下を飛行機がゆっくりと旋回して飛んでいく。
子供の頃はゆっくりとした時間が流れていたはずだ。どうしてこんな時代になったのだろう。そう考えていると老人が現れてしゃべりだした。

「坂本竜馬の時代を考えてみよう。テレビもラジオもない。固定電話は無論のこと、スマホもインターネットもない時代だ。情報と言えば瓦版と人のうわさ話しかない。瓦版だって毎日配達されるわけではない。そういう時代は自分と向き合うしかなかった。

坂本竜馬は沢山の手紙を残しているが、土佐の乙女姉さんに手紙を江戸から出せば1ヶ月くらいかかったはずだ。江戸と京都の間でも2週間はかかったのだから、そのくらいの時間がかかってもおかしくはない。返事が返ってくるのが2か月後、手紙を出す値段はよくは分からないが、1500円くらいはしたようだ。」

「とんでもなく退屈な時代だという気がします。そんな時代にもどったら生きていけそうにもないですね。」

「40年近く前、ブッシュ大統領、といっても親父の方だが、彼がCIA長官だったときから懇意にしているという日本のフィクサーに出会った。アメリカとのやりとりで電話代が月に100万以上かかるといっていた。
俺は最近、海外にいる友人にメールを送ったら、今はカリブ海にいますと返事が来た。
どこにいても瞬時に、しかも無料でメールをやり取りできる。本当に便利な時代になった。

便利すぎて恐ろしいことも起こる。エベレストで遭難した男は、人生の最後を衛星電話で故郷の妻と話をしながら迎えた。
便利な時代になったが、それが人の精神を蝕む時代にもなってきた。」

「精神を蝕むですか?」

「そうだ。スマホは便利だが休みの日に仕事のメールが来たり、休暇を取っているのに取引先から電話がかかってくることがあるだろ。」

「確かに相手には、こちらが休暇を取っていることはわからないですから。」

「メールを出しても、すぐに来ないとイライラしたり、LINEが既読にならないと、相手が何か腹を立てているのではないかと心配になったりする。

ある製薬メーカーでは、営業職にすべてGPSをもたせて管理している。営業職の多くは直行直帰(会社によらずに営業に出て、また会社によらずに家に帰る。)だから、サボろうとおもえば幾らでもサボれたが、今は自宅からGPSのアイコンが動いていないとすぐに電話が来るそうだ。」

「チャップリンのモダンタイムですね。」

「モダンタイムは1936年の映画だ。工業化が進んでいく時代だった。牧歌的な生活をしていた大衆はそれに対して恐怖を感じていたことが分かる。

若い頃、俺は荷物を送るのに荷札に住所を書いて駅までもっていったものだ。それが今は宅配で次の日には着く。時間指定も可能だ。昔は荷物を配るのに時間指定などないから、忙しければ次の日に配ればよかった。だが今は夜の8時から9時の間に配ってくれと言われる。宅配業者はワガママな王様に使える家来のような苦労を強いられている。

アスクルは『明日に来る』という意味だが、キョウクルの実験も行われている。いつも焦らされ、走らされているわけだ。」

「たしかにそういう事が長く続けば、精神を蝕まれてもおかしくはないですね。」

「学生時代、友人を訪ねて広島に遊びに行った。海辺に鯛公園と言うのがあって、池のような場所で鯛が泳いでいた。飼育員が餌をやるときにオーイ、オーイと間の抜けたような声で鯛を集めて餌をやっていた。
餌やりが終わると、飼育員が俺に話しかけてきた。『俺は戦争のときに騎兵隊にいた。馬を使う部隊では突撃!などと叫んではいけない。馬が驚いて隊列を乱すからだ。動物を扱うときはゆっくりとのんびりとした合図がいい。』そう教えてくれた。」

動物は早いリズムに弱い

「なるほど、人間も動物だから早いリズムや刺激には弱いですよね。」

「慌ただしい幾つかのことは、技術的に解決できるはずだ。
例えば休暇を取っている時にメールを送られたら、自動応答がくる。「現在、休暇中です。申し訳ありませんがお急ぎでなければ、休み明けにメールを返信させていただきます。どうしてもお急ぎの場合は、次の操作でメールをお送りください。」こういったメールをメールサーバーから返すようにすればいい。」

「確かにあってもいいサービスですね。」

「俺は、スマホとは別に携帯電話はガラ携も持っている。2in1(ツーインワン)というサービスを使うためだ。
1台に2つの番号を使える。一つはプライベート、一つは仕事用だ。一つの番号を優先にしておけば、優先でない方の携帯に電話が繋ってきても電話が鳴ることもない。
残念なことにスマホにはこの機能がない。仕事の電話は仕事時間中にかけるのがマナーだが、休暇を取っているかまでは分からない。そこで自動音声で同じような応対が出来ないか考えたらいいのではないかと思う。」

「なるほど。でもマナー違反の上司も出てきそうですね。」

ゆっくりした時代には引き返せない

「我々は消費者として、宅配が次の日の指定時間に届くのが当たり前と思っているから、少しでも遅れるとイライラしてしまう。配送業者は渋滞にイライラしながら物を配達する。そんな世界からのんびりとした世界へ戻ることは不可能だ。」

「ではどうすればいいのですか?」

「ドイツでは6週間の休暇を取るのが普通だ。そんなに長い時間空けて取れるのには理由がある。
休みを取っている間はすべて他の人に仕事をまかしてしまうからだ。自分の仕事を上司や部下に十分に説明して引き継ぎをするから、6週間は完全に休暇を取ることが出来る。それでいて労働生産性は日本より高い。
仕事の時はとても忙しいが、長いオフがあるので帳尻がつく。我々がこの世界で精神に異常をきたさず生き残るためには、完全なオフの日をどう作るかにかかっている。」

「なるほど。」

ウエットからドライへ

「日本では担当者に直接話したいというクライアントが多い。face to face の人間関係を好むからだ。
また、担当者しか事情が分からないということもある。そうなると、担当者はいつまでも休むことができない。
まずは人間関係をウエットなものからドライなものに変える必要がある。さらに他人に分かるように仕事を整理していくと、仕事の効率も上がり、完全なオフを迎えることができる。

アメリカの医者にはレジデントという研修医制度がある。
何日も泊り込んで仕事をするが、休みの日は代わりの医者が患者を担当するから完全なオフだ。患者の容態が急変しようが休みだ。

日本では助かる見込みのない患者でも、重篤になるたびに医者は病院から呼び出される。いつ呼び出されるか分からないから酒も飲めず、おちおち旅行にも行けない。
手術後の、患者の容態が落ち着かないといった状態とは違うにも関わらずだ。
過疎の病院では研修医がいないから高齢になっても当直も多い。
ドライな人間にならなければ殺されかねない状況になってきた。ウエットからドライが我々の健康を守るのに必要なことだ。」

年賀状を出さないことにした

「ところであなたは、どうやって安らぎの時間を得ているのですか?」

「俺は義理を欠くことで自分を守ろうと決心した。
人には優しくあらねばならないが、合理的でない付き合いを排除している。変わり者と思われてもいい。
その一つとして、年賀状を出すのを止めてしまった。」

「それはドライというより無礼じゃないですか?」

「確かにそうかもしれない。日本人の長い習慣だからな。だが、年賀状を出すのに疑問を感じたのは10年くらいからだ。
知り合いの郵便局員が11月になると年賀状を買ってくれと言ってくる。売れ残ったら自分で買い取らねばならないというのだ。」

「なぜ強制的に買わせたりするのですか?」

「郵便局にとって年賀状ほど儲けが大きいものはないからだ。一気に配れるから利益率がとても高い。そんな事情もあり、知人からずっと年賀状を買っていた。」

「それで?」

「俺は年賀状がそこまで商業化しているのにまず嫌気がさした。また、宛名も挨拶文も印刷された年賀状をもらっても、嬉しくないことにも気がついていた。さらに年賀状をもらったら必ず出すようにしているうちに、どんな人だったか分からない人まで出てきた。」

「年賀状をたくさん出す人にはありがちな現象です。」

「印刷の中に手書きで近況が綴ってあり、どうしているか尋ねるような文章が書かれていることがある。俺もそんな文章を書いて送ることもある。でも返事は帰ってこない。年賀状だからだ。
一番困るのは喪中につきというやつだ。間違って年賀状を出すほど無礼なことはない。出す前に何度も何度も確認することになる。12月の忙しい時期にこういう作業を強いられるのは苦痛だ。」

「確かにあなたのようなことを思っている人は多いでしょうね。」

「ニューヨークに住む友人が、毎年、クリスマスカードを添付メールとしてくれる。クリスマスカードとメールには近況が書かれている。今年は論文がネーチャーに掲載されたという嬉しいニュースだった。
俺はこれを読んでから、年賀状としてこちらの近況を綴ったメールと添付の年賀状を送った。

年賀状は連絡手段のなかった昔の遺物のようなもので、今やその機能を果たしていない。
また手間もかかるので、数年前から年賀状を出すのを止めてしまった。本当なら年賀状をやめますという挨拶状を送ろうと思ったのだが、それはケンカを売っているようなものだから黙ってやめた。
それでも年賀状をくれる人には、寒中見舞いとして近況を報告している。

年賀状を出さなくなって、本当に気が楽になった。年賀状リストは毎年更新していかねばならず、そういった作業は馬鹿にならないものだ。」

「私は年賀状を出さないという事には異論がありますが、確かにメールで年賀状を送ることのほうが費用もかからず、返事を書くこともでき、整理も簡単だと思います。
でもメールには移行できないですものね。アドレスが分からないし、それをどう感じるかという問題もあります。
オフを作る努力をしていかねばならないことは、よく分かりました。」

第24話イメージ画像「慌ただしい世の中で正常な神経を保っていくためには、日本人のウエットな人間関係をドライにしていく必要がある。
仕事がないのに上司がいるから帰宅できない、といった関係を断ち切ることから始まるのだろうと思う。
そうでないと間違いなく寿命を縮めることになる。」
そう言いながら老人はテーブルのローストビーフを口に運んだ。

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