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夢の中の老人

第23話「お前らなんぼのもんじゃ」

路上でヤクザが怒鳴り合っている。

「なに言うとるんじゃ!コラ!」

「なんやと!お前らなんぼのもんじゃ!

「お前こそなんぼのもんじゃ!

それを見ていた老人がゲラゲラ笑いだした。私は思わず止めに入った。

「あんまり笑っていると、ヤクザに絡まれますよ。向こうに行きましょう。」そういって老人をその場から引き離した。しかし、老人は笑い続けている。

「どうしてそんなに可笑しいのですか?」

「だって、なんぼのもんじゃというのは、あなたは幾ら位の価値がありますか?ということだろ。面白いじゃないか。」

「そうじゃなくてお前みたいなチンピラが大きな顔をするなと言うほどの意味です。」

「無論、そういう意味だと分かっているが、ヤクザが、おたくさんは幾らくらいですか?あなたこそ幾らくらいですか?と聞きあっていると考えたらとても可笑しいじゃないか。二人ともヤクザとしての価値は高そうにも思えない。」

「三下(さんした:チンピラの意味)でしょうね。」

「ヤクザのことはまあいい。ところで君は自分の価値ってどのくらいか考えたことがあるか?」

「そんなこと考えたことはないですね。」

人の値段

「俺が人の値段に初めて興味をもったのは、30年前に北京に行った時だ。日本語がとても上手な若い女性の通訳がいた。北京大学を出たその女の子の月給が8千円だった。こんな優秀な女性を日本の賃金で考えたら25人雇うことができる。これはすごいことだと思った。」

「確かにすごいですね。」

「中国人の給与が安すぎるのか、それとも日本人の給与が高すぎるのか分からないが、日本では月給8,000円では暮らせない。しかも日本では月給20万では平凡な人しか雇えない。

俺はこの賃金格差はそのうち解消していくだろうと考えた。どんな形で解消していくのか頭の中でシュミレーションしてみた。例えば縫製工場で、時給千円で働く人が日本にいる。一方中国では百円だ。しばらくすると次第に日本で働く人の給与が下がり始め中国で働く人の給与は上がっていき、そのうち均衡するだろう。しかし、それは大きな間違いだった。」

「分かります。日本人の誠実な仕事は評価されていますから、急速な賃金低下は起こらなかったのでしょ?」

「違う。仕事そのものが中国に行ってしまったのだ。」

「そっかー。厳しいですね。」

「考えてみると当たり前のことだ。日本で給料を減らしていけば物価の関係で暮らしていけない。面倒なことは起こらず仕事そのものがなくなった。日本人はともかく自分たちの勤勉さやこまやかな仕事が、自分の値段と勘違いしているし、そういうものは大した付加価値ではない。」

「確かにそう言われると、お前らなんぼのもんじゃというのは面白く感じます。」

「歴史の変わり目では人の値段の暴落が起こる。
今回、日本人の値段が値崩れし始めた原因は自由貿易協定だ。人や物、金の行き来が自由になれば、よほど人に真似されない技術や才能を持っていなければ、自分の値段が下がっていくと覚悟しなければならない。考えて見ると、人の価値の暴落は歴史の中で様々なところで起こってきた。どんな時に暴落が起こったかを見ていくと面白い。宮本武蔵の話から始めよう。」

「宮本武蔵って、あの剣豪の宮本武蔵ですか。人の価値の暴落とどう関係があるのですか?」

「宮本武蔵は江戸初期、剣豪として著名な人物だった。無論、剣術師範として召抱えたいと申し出る大名も多くいた。しかし彼は多くの申し出を断った。彼の望む石高を提示されなかったからだ。結果として細川家の客分にしかなれなかった。なぜ望んだ石高が得られなかったかというと、戦国時代ではなくなっていたからだ。つまり、すでに武力の時代は終わっていったのだ。残念ながら時代の変化を武蔵は理解できなかった。
技術革新は人を失業させる。鉄砲の出現は刀工や柳生新陰流を失業させ、和文タイプの専門家はパソコンにやられてしまった。」

「時代の変化って恐ろしいですね。でも日本の大企業は優秀ですし、一流の大学を出て大企業に採用された人たちの給与はほとんど落ちていません。日本にも競争力のある人材が多くいます」

「ある経済誌で読んだのだが、韓国や中国のマネージャー、つまり日本人の課長級のクラスの給料は日本円に直しても向こうの方が高いというのだ。何故かというと連中の方が優秀だからだ。

俺の経験談を話そう。
俺は日本語の出来る日本在住の中国人を通じて、中国本土の企業から品物を輸入していた。ある時、中国本土の企業のマネージャーと日本在住のその中国人は中国人同士なのに中国語ではなく、英語で連絡を取りやっていることを知った。何故かというと、初めから国際的な会社をめざしていたから英語を基準としていたのだ。それを知った俺は英語のメールで注文を直接入れることにした。

日本在住のその中国人はある時、中国の大手企業のアメリカ帰りのエリートマネージャーに面会を求めた。直接の仕事の話ではなかったという。マネージャーは面会時間が30分しか取れないので、事前に質問を送ってくれと言った。面会時間はきっちり30分で要領よく説明が行われ、細かいことはこれで確認してくれと分厚い資料をわたされた。もし日本の大手企業の課長に面談を求めたらまずは時候の挨拶から始まり、事前の知識がないので要領のよくない面談になったことは目に見えている。

日本の課長も忙しくは働いているが、世界的に見て日本の労働生産性は極めて低いし、語学ができる人もほとんどいない。日本人の給料が守られているのは、日本の法律が人をやめさせにくいようにしているからだ。そもそも日本のデフレの原因は人の値段が下がり続けているためで、給料が減り続けると消費は落ちてデフレが続くことになる。」

「ではどうすればいいのですか? 弁護士や公認会計士になるのは難しいし、なっても給料はよくないみたいですし。」

「資格者になっても儲からないのは数が増えてきたからだ。スマホが普及したおかげで、知識で飯を食うのが難しい。」

「ですからどうしたらいいのですか?」

「俺が仲良くしている医者が離島にいる。そいつに会ってみろ。」そう老人は言う。

離島の医者

夢の中の老人23話飛行機に乗って離島に出かけた。離島にかかる橋を横切って、離島のそばにある小さな島まで行かねばならない。橋の上から見下ろすとコバルトブルーの海が広がっていた。この橋は、あわただしい世界からのんびりとした世界へつながる橋のような気がした。そう思えるほどゆったりとした時間が流れている。

砂浜の近くの自宅に医者はいた。「あの老人の紹介できたのか。」とつぶやいて話を始めた。

「インターネットとスマホの発達のおかげで、頭が良いとか記憶力がいいといった従来の知識人としての価値はほとんどなくなった。大学に入るために苦労して覚えた歴史、古文などの知識も数学の知識も役に立たない。分からないことはその場ですぐに調べられるし、人に聞くこともできる。

d23-img2いい大学を出れば、今のところいい就職ができるが、将来が明るいとまでは言えない。弁護士になるような優秀な人間は、長時間の知的作業にも耐えられるが、評価されなくなった。
ではどうすればいいのか? 一つの例として俺のところでやっている整体を例にあげよう。
この整体のベースはオステオパシーというアメリカの治療法だが、俺が工夫して様々な症状を治せる方法を開発した。変形性膝関節症、へバーデン結節、モートン病だけではなくて不整脈なども治せる方法だ。これを鍼灸師やマッサージ師に教えている。俺は連中によく言うのだが、この技術をマスターすれば何処ででも食っていける。どこにでも体調の悪い人はいるし、こんな技術を持っているのは我々だけだ。もし難民になって外国で暮らさなければならなくなっても大丈夫、食べていけるはずだとね。」

「なるほど。知識ではなく技なので盗まれることもないというわけですね。」

「そうだ。素晴らしい知識やアイデアはすぐに盗まれる。ネットであっという間に世界中に広がってしまう。我々はそういう時代に生きている。
長い間、記憶のよい人間、理解力のよい人間、長時間の知的作業に耐えられる人間が高く評価されてきた。無論そういう人の評価がゼロになったわけではないが、ネットとスマホのせいで以前より評価されなくなった。
自分の値段を上げる手段として知識ではなく技を身に着けることだ。整体は一人で出来、しかも開業できるという素晴らしい物なのだが、そういうことに気づいている人はほとんどいない。

お前さんが渡ってきた向こうの世界は、人の値段が段々と落ちていく世界だ。働く人間も会社も以前の金を稼ぎたくてしゃにむに働いている世界だ。

俺の世界は知識がまだ輝きを放っていた時代のような、のんびりとした空気が流れているのが分かるだろう。ムチャクチャに儲けなくても暮らしに十分な金があればよい。

ガジュマルイルミネーション今は難しい時代だ。時代の変化に対応して自分の値段を上げる努力をするとともに、その価値が失われにくい仕事を見つけていく必要がある。
まだまだいろいろと自分の価値を上げる方法があるのだが、なにやら盗み見されているような気もするので、この辺で話を終えよう。

そうそう、庭のガジュマルにイルミネーションをしたので、是非泊まって見ていって欲しい。」そう医者は言ったのだった。

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