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夢の中の老人

第21話「行進という特殊な教育」

「先日、小学校の校門の前を通りかかって驚いた。通学してくる生徒におはようございますと声をかけているのが教師で、それに答えもせず学校に入っていくのが生徒だ。先生はどうして怒らないのか不思議で仕方がない。」そう言いながら老人が夢の中に現れた。最近の学校教育についてとても腹を立てている様子だ。

「教育委員会とかモンスターペアレントなどのいろんな問題もあるのだろうが、情けないことだ。それに比べると、俺が中高一貫の進学校で受けた教育は厳しいものだった。」

老人が合格した時の合格者名簿

老人が合格した時の合格者名簿

「どんな教育を受けてきたのですか?」

「俺が受験したのは進学校でありながらスパルタ教育で有名な中高一貫教育の学校だ。合格発表を見に行くと受験番号と共に名前が張り出されていた。だから誰が落ちたかすぐに分かった。」

「厳しいですね。」

「学校は山の上にあって急な坂を20分ばかり登らなければならない。通学するだけで体力がつく。中間体操というのが毎日あって、授業の3時間目と4時間目の間に全員が上半身裸になってグラウンドを走らされる。雨の日は中止だが、みぞれ交じりの小雨の時は寒い。トイレ掃除は生徒の仕事だ。素手で、上半身裸で便器磨きをさせられた。」

「裸が好きですね。」

「入学して1年生全員で校長の訓話を聞いていた時だ。生徒の私語が多くて話が聞き取りにくい。すると校長が、自分の腕時計を見ながらあと2分で静かにしなければ特訓をすると言い出した。特訓(特別訓育訓練)というのは、授業を中止して罰として長時間にわたって走らせることだ。校長は黙ったまま腕時計を見つめている。その様子を見た前席の生徒たちから次第に情報が後ろの生徒まで伝わり、ようやく2分以内で静かになった。
校長は毎朝、朝礼で話をするのだが、話に興が乗ると30分でも1時間でも話をする。それにつれて授業の開始も遅れていく。校長はとても恐れられ、かつ尊敬されていた。」

「専制君主のいる学校だったのですね。」

体を鍛える

「今の我々からみればそう見えるかもしれないが、校長がすべての権利をもっているのは何も異常なことではない。責任をすべて負っている校長の権限で教育をすればよい。

学校では体を鍛えることを大変重視していて、冬には35キロの競歩大会がある。所々に関所が設けられていて時間以内で走らなければ落伍者としてバスに乗せられる。また夏には海に連れていかれて1キロの遠泳がある。
春休みは信州にスキー合宿にいく。スキー合宿と聞くと優雅に聞こえるが2時間ほどかけてゲレンデを歩いて上がって練習をさせられる。ストックで尻を叩かれながらの練習だ。2年続けていったおかげで2級をもらえた。合宿中、友人がイタズラをした罰として全員裸足で民宿の入り口の雪の上に立たされた。民宿の前の雪は固まっていてカチカチに凍った氷だった。」

「暴力教室じゃないですか。」

「この学校の体育祭の見せ場は総行進で、全生徒が上半身裸で隊列を組んで行進する。一糸乱れぬ行進をするために体育の時間に何度も練習する。上級生は竹の棒を手に持って下級生に指示をだす。下手な奴がいると頭を叩いたものだ。
ある時、全校生徒が集まった総行進の練習中、隊列が揃わないので、リーダーが朝礼台の前に呼び出された。体育の先生がリーダーの頭を朝礼台の上から足蹴にした。先生の靴から土埃が舞い上がった。」

行進の意味するところ

「恐ろしい学校ですね。でもどうして軍隊みたいに行進させるのですか?」

「いい質問だ。どこの国の軍隊でも行進をやらせる。何故だと思う?
それは一人一人に全体の一部となって行動することを覚え込ませるためだ。戦闘が起こり、突撃命令が出ても自分で危険だと判断して突撃を止めれば軍隊として機能しない。上官の命令に従い、自分は全体の一部となって行動をすることを教え込むのが行進の目的だ。」

行進の練習

「なるほど。自分で考える必要はない。全体に合わせて行動することを教える方法なのですね。確かに戦闘シーンを作り出して教育することはできないですからね。」

「自分は自分にとっては一番大切なものだが、集団行動の時は部品として働かねばならない。いくら能力があって、考える力が素晴らしくても上官には絶対服従だということを教えこむ。ただし、この行進という訓練は行進をさせる側が明瞭な意識を持って指導しないと単なるいじめになる。」

「でも何故軍隊みたいな教育が平和な日本で必要なのですか?」

「それについては俺の話を最後まで聞けば自然に分かってくる。
軍隊の訓練には行軍というのもある。任務を果たすためには重い装備を担いで落伍者を出さずに目的地までたどりつかねばならない。戦闘の前に落伍者を出すようでは軍隊として機能しない。行軍は体力をつけさせるのが目的だ。
学校では行軍の代わりに競歩大会があった。誰しも検問所でバスに拾われたくないから必死で走る。そうするうちに自分の体力の限界も分かってくる。
日本ではあまり話題にならないが、欧米人は軍歴にこだわる。そういう教育を受けた人間はつねに現実的で自分の能力やポジションについて明確な意識を持っているからだ。」

「自衛隊以外にそんな教育をしている所はあまりないでしょうね。」

勉強での教育法

「勉強でもこういった軍隊的な制度があった。中学で入学したのは150人ほどだが高校を卒業する時は120人ぐらいになっていた。勉強ができないと、どんどん落第させる。上級生が同級生になることもあるし、落第が嫌で転校する奴も多い。そんなわけで人数が減ってしまう。

試験を返すときには点数順に名前を呼びながら返していく。山田君○○点といった具合だ。名前を呼ばれると教壇まで試験用紙を取りに行く。配り終えると60点以下の者は起立させられて叱られる。体力でも学力でも徹底的に比較され、自分の価値を思い知らされるわけだ。」

「そんな教育したら潰れてしまう生徒も多いのではないですか?」

「確かにそうだ。だが忍耐強く努力する奴も出てくる。俺は学力も体力もたいしたことがなくて苦労した。だが諦めなかった。大学に入ると急に成績がよくなり特待生として卒業した。俺の場合、体力が劣っていたために勉強するだけの体力が残っていなかった。体力がないと言っても競歩でも遠泳でも落伍することはなかった。厳しい教育は楽しい物ではないが、人を強くすることは確かだ。

この学校が特異だったところをもう2-3挙げてみよう。
俺の同級生が夏服の半そでを折り上げて短くして着ていた。朝礼のとき、2代目のドイツ人の校長が、「袖を折り曲げて着ている者がいる。『出てきなさい』と言った。そいつは出て行かなかった。すると校長が全生徒のいる前で、『○○、出てきなさい。お前は袖を折り曲げていたではないか。この卑怯者』と怒鳴りつけた。」

「恐ろしげなところですね。」

「風紀を担当する高校生が、『最近中学全体がたるんでいる。特訓しなければ現状を回復できない。』とアメリカ人の理事長のところに直談判にいった。その理事長はテーブルに両手をついて少し考えてから『君の責任でやりなさい。』といった。そこで、その高校生の責任の下で450人いる中学生全員に特訓が行われた。信賞必罰、責任の所在が明確なのだ。

日本人は世界中からお人好しで、甘い奴らだと思われているように思う。外務省が外国との交渉で成功を収めたという話よりも、してやられたという話が多いし、商社はいつも外国の奴らにババをつかまされるという話をよくきく。それは肉体的苦痛を与えるような訓練を受けていないし、全体の部品として働く訓練を受けていないからだ。子供の頃から教師に挨拶され、成績がよければ褒めそやされて育つ。だからいつでも詰めが甘く、どんな失敗をしても責任を取らされるシステムもない。

最近、有名国立大学が国際的に通用する人材を育てるために英語を中心として講義を行う学部を作るという。また財界が世界に通用する人材を作るための高校を創設した。理念は紳士を育てることだという。だが、そんなところではタフな人間を作ることができない。経験したことのない教育を日本のエリートたちは思いもつかないのだろう。」

救命胴衣をつけているので、太って見える。

救命胴衣をつけているので、太って見える。

老人はポケットの中から一枚の写真を取り出した。「もう40年以上前の写真だ。叔母に誘われて琵琶湖に初めて水上スキーにいったときの写真だ。中高の厳しい教育のおかげで体力がつき、遠泳1キロ、スキーは2級だから初めてでも水上スキーを楽しむことができた。

俺は行進という教育を受けて自分の体力や知力の限界を思い知らされた。だから自分の能力や体力の限界をよく承知しているつもりだ。
だが、それと同時に自分の体力や知力を補う方法を見つけた。自分より強大な敵と戦う時は夜襲をかけたり、ゲリラ戦に持ち込んだり、さらには持久戦をしかけたりすることで自分の不利な要素を取り除いて勝つことができる。自分の体力や知力を厳しく問われる生活を送った者はそうした経験のない者より断然強いのだと思う。」そういうと老人は夢の中に消えていった。

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